第150話7-5東の港町へ


 リュードさんのお陰で旅は何とか続けることが出来、もうじき人の住む町で東にあると言う港町に到着するらしい。



 「やっとこれでいろいろなものが手に入りそうですね?」


 「いや、ソウマ。お前ら手持ちっていくらくらいあるんだよ?」



 馭者の席で馬の手綱を引いていたリュードさんはそう言って振り向く。

 言われて僕は皮袋の財布を見る。


 「‥‥‥銀貨が六枚と銅貨が七枚」


 安い宿でも一日銀貨四枚くらいは使ってしまう。

 食事だって一番安いもので大体銅貨五枚くらい。

 持ち合わせのお金なんてすぐに使い切ってしまいそうだ。



 「どうしたのソウマ君?」


 僕がお財布の中身を見てため息をついているとミーニャが覗き込んできた。

 僕はミーニャを見ながら言う。


 「うん、姉さんがお金の管理していたから僕が持っているお金って最低限の分しか無くて、この先の町で何か買おうにもすぐに無くなっちゃいそうなんだよ‥‥‥」


 「あら? だったらその辺のごろつきをしばいて‥‥‥」


 ミーニャはそう言って周りを見るけど街道には僕ら以外誰もいない。

 たまに道行く旅人と出会うようにはなったけど、それだって稀だ。


 「うーん、誰もいない」


 「何あたりまえのこと言っているのですの? 私もソウマ君と同じようなモノですが、町に着いたら神殿か何かでお仕事をさせていただいてお布施を分けていただけば‥‥‥」



 「なあ、お前らこの先の港町で暮らすつもりか?」



 リュードさんにそう言われ僕たちは唸ってしまう。 

 目的のイージム大陸まではまだまだ遠いし、黒龍のコクさんが居ると言う迷宮にだってまだまだ遠い。


 しかしお金がない状態じゃ旅を続けるのにも限界がある。



 「‥‥‥お前らはまだ未成年だしなぁ。冒険者登録も出来ないからギルドで仕事も出してもらえんしなぁ」


 リュードさんはそう言って道の先を見る。

 そして周りを見渡してしばし考えこむ。


 「狩りか何かしてもたかが知れているしな‥‥‥」


 「でも何とかしないと‥‥‥」


 僕がそう言うとリュードさんは僕をちらりと見ながらぼそっと言う。


 「ソウマさえよければソウマだけは俺が面倒見るんだけどな‥‥‥」



 「ちょっと、おっさん何ソウマ君に色目使っているのよ!」


 「ま、まさかソウマ君の身体をですわ!? だ、だめですわ! ソウマ君が攻めでリュードさんが受けなんてですわっ!!」



 リュードさんの言葉にミーニャとエマ―ジェリアさんが過剰反応する。

 ただ、僕もリュードさんに世話になる訳にも行かないから他の方法を考えなきゃだよね?



 「後は自分の持ち物でも売る?」



 セキさんはそう言って服についていた宝石を一つ取り外しエマ―ジェリアさんに渡す。


 「赤色琥珀よ。火山の中でしか出来な貴重な琥珀。これを売れば当分は困らないはずよ?」


 「でもセキ、それはあなたの持ち物ですわ。そんな大切なものを売ってしまうだなんてですわ‥‥‥」


 しかしセキさんはニカっと笑ってエマ―ジェリアさんに手渡す。


 「町で美味しい物を食べさせてもらえばそれでいいわ。これで旅を続ける道具とかも買い込めるしね」


 「セキ‥‥‥ ありがとうですわ」


 そう言ってエマ―ジェリアさんは大切にその赤色琥珀をしまう。



 「うーん、あたしはどうするかな? あ、そうだリリス、ソーシャ。あんたら町に着いたら路地裏に立って稼いできなさい!」


 『え~、補給はしたいですけど相手選ばせてもらえないんですか?』


 『私はどちらかと言うと女性の方が好みなんですが‥‥‥』


 なんかミーニャがまた無茶な事を言いだしているみたいだ。

 リリスさんたちに何かさせるつもりみたいだけど、路地裏になんかに立ってどうする気だろう?

 

 エマ―ジェリアさんはどう言う事か分かっているみたいで顔を真っ赤にしてキャーキャー騒いでいる。

 もしかしてさっきミーニャが言っていた通りごろつきをしばいて‥‥‥



 「ミーニャ、これ以上皆さんにご迷惑かけちゃだめじゃないか? 僕と一緒にお金稼ぐ方法を考えようよ?」



 「ソウマ君、あたしと一緒って事はあたしを選んだって事ね! もう、一生離れないんだからぁ!!」


 そう言って抱き着いてくるミーニャ。


 「ちょっ! 何しているのですのぉっ!!」


 ミーニャを押し退けエマ―ジェリアさんも僕の手を取り抱き着く。



 「ソウマ君は私が面倒見ますわ! あなたは引っ込んでいなさいですわ!!」


 「なにをぉっ!」



 「あー、お前さんがた馬車が壊れると修理する金もないんだから喧嘩するなら他でやってくれよな?」



 今にも喧嘩が始まりそうなミーニャとエマ―ジェリアさんをリュードさんはそう言って納める。

 セキさんはカラカラ笑っているけど二人に抱き着かれたままの僕は道の先を見ながら考える。


 とにかく町に着いたら日雇いの仕事でも探そうと。



 * * * * *



 「おい、ありゃなんだ?」


 リュードさんがいきなりそう言ってきた。

 言われた方を見ると遠くに何やら大きなものがうごめいている。


 そしてこちらに走って来る人もいた。



 「ちっ! おい、みんな厄介ごとみたいだ!」





 リュードさんにそう言われ僕たちはそちらを凝視するのだった。

 

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