第151話7-6毛むくじゃらの巨体


 「た、助けてくれぇっ!!」



 こちらに走ってきた人は切迫した雰囲気だった。

 リュードさんがすでに警戒を発していたので何かが起こっているのは分かるけど、向こうに見えるうごめくモノはどうやら生物らしい。


 よくよく見ると人の恰好をしている様だけどその大きさが違う。

 

 多分「鋼鉄の鎧騎士」くらいの大きさ、五、六メートルくらいの巨体だ。

 そしてその全身に毛の様な物が生えている。



 「何あれ?」

 

 ミーニャは馬車から乗り出してそちらを見ながらそう言う。

 しかしリュードさんはそいつの正体を知っているかのようで、剣を抜きながら馬車を止め走り出す。


 「ありゃビックフットだ! 大型の猿みたいなやつだが狂暴で人を喰う! 襲われているのは商隊の様だ!!」


 「ビッグフットぉ~? ああ、あいつか。仕方ない、助けてやるか」


 セキさんもそう言って馬車から降りて走り出す。

 勿論僕もエマ―ジェリアさんも。

 そしてアイミも飛びながらそちらに向かう。



 「ソウマ君! もう、仕方ないなぁ、リリス、ソーシャは生き残った連中をあのエマ―何とかって女と救護! ちょっと暴れて来るわ!!」



 言いながらミーニャも僕たちにくっついて走って来た。




 「おらぁっ! 助けに来たぞ!! せいっ!!」



 リュードさんは走りながら魔力を刀身に溜めて気合と共に衝撃波を放つ。

 それは見事にビックフットに当たり馬車をひっくり返そうとしている右肩に衝撃を与える。



 ばんっ!



 しかしまだ距離が有るせいか、その衝撃波はビックフットにさしたるダメージを与えていなかった。


 「ちっ、距離があり過ぎて威力が落ちた!」


 「なら近づいてこの一撃を入れるまで! 喰らえ、ドラゴン百裂掌!!」


 リュードさんを抜いてセキさんがビックフットに怒涛のドラゴン百裂掌を放つ。



 どがががががががっ!


 ぶしゅっ!



 流石にセキさん、その技はビックフットの分厚い毛皮を裂きダメージを与える。



 「う”ぎぃいぃぃぃぃっ!!」



 流石に痛みを感じてビックフットは大きく飛び退く。

 しかしその手には商隊の人が掴まれている。



 「た、助けてぇっ!!」



 「まだ生きている! 助けなきゃ!!」


 僕もエマ―ジェリアさんもアイミも到達するけど商隊の人が捕まっている。

 背中を向けていた時とは違いビックフットは捕まえた商隊の人をこちらに向けてじりじりと下がる。


 「あれでは攻撃が出来ませんわ! セキっ!」


 「分かってる! エマはケガ人を見てやって!」


 「ちっ、こういう所は頭がまわりやがる」


 エマ―ジェリアさんはセキさんに言われ急いで残りの商隊の人たちの様子を見る。

 何人かは地面に転がってケガをしている様だ。


 リュードさんとセキさんは注意深くビックフットと対峙する。

 するとビックフットは捕えた商隊の人の腕に噛みつき喰いちぎる。



 「うぎぃいいいぃっ! がぶっ! ぶちっ!!」



 「ぐわぁぁああああぁぁぁぁっ!!」



 腕を喰いちぎられ商隊の人は鮮血をまき散らす。


 「くそっ! この野郎!!」


 「リュードあたしが囮になる! 注意を引き付けるからあの人を助け出して!」


 言いながらセキさんは背中に羽を生やし上空へ飛び上がる。

 それにビックフットは反応してそちらに注意がそがれる。


 その瞬間リュードさんは動いた!



 「おらぁ! 喰らえ、旋風切り!!」



 リュードさんは飛び込みながら回転してその遠心力と剣の刃に魔力を載せ威力を増した一撃をビックフットの腕に打ち込もうとする。

 しかしビックフットはリュードさんも警戒していた様でその斬撃が届く前にその場を飛び退いた!



 「赤光爪!!」


 セキさんは爪を伸ばし真っ赤に光らせながら上空からビックフットに斬り込むもやはりこちらも注意していた様で斬り込んくるセキさんに人質の商隊の人を差し向ける。


 流石にセキさんもそれに躊躇して爪を引っ込めてしまうとこれ幸いとビックフットはくるりと振り返り一目散に逃げだす。 


 

 「あっ! このぉっ!」



 セキさんが慌てて空中で態勢を整えて追おうとするけど巨体の割には結構早い。

 アイミがすでに飛んで行って腰に飛びつきとめようとするけど、何とアイミを引きずったまま更に逃げて行く。



 「なんて奴だ! このままじゃあ商隊の人が!!」


 僕は思わずそう叫ぶと後ろからミーニャが面倒そうに言う。


 「まったく、獣如きに手間がかかる!」


 そう言いながら手をかざすとビックフットの両足がいきなり切断されその場で転ぶ。




 「うぎぃいいいぃっ!」




 「空間をずらしたわ。それっ!」



 ぼとっ!



 今度は商隊の人を掴んだ腕が切り落とされる。


 「アイミ、今のうちにその人助けてやって。セキちゃん後お願いね」


 ミーニャはそう言って僕の前に来る。


 「ね、ね、ソウマ君これで良いよね? あたし頑張ったもんね、だからご褒美! ん~っ!!」


 そう言いながら僕にキスしてこようとする。



 「何やっているのですの!! まだ終わっていませんわっ!」


 アイミがビックフットに捕らわれた商隊の人を助け出し、エマ―ジェリアさんが【治癒魔法】をかける。


 「とにかく傷口を塞がないとですわ!!」


 言いながら手を光らせ魔力を注ぐのだけど、その光が大きくなりなんと商隊の人の手が再生された。


 「へっ、ですわ!?」


 「ふん、お姉さまのお陰って有るけどずいぶんと魔力が発生できるのね、その新しい心臓は」


 ミーニャは面白く無さそうにつぶやくけど、セキさんからの魔力供給も無しに腕を再生できるほどの力が発生できるなんて!



 『えーと、ミーニャ様。まだ終わってませんが~』


 『言われた通り人間たちは救い出しこの娘に治癒させてますけど、あれどうしましょう?』



 リリスさんとソーシャさんがそう言って指さす先にはミーニャが倒したビックフットがいてその周りに‥‥‥




 「ソウマ、エマ、ミーニャ! まだ終わってない!! 商隊の人間を守りなさい!!」




 更に向こうからやって来た数体のビックフットにセキさんとリュードさんは突っ込んで行くのだった。

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