第107話5-8赤の騎士
「アイミっ!【特殊技巧装着】!!」
姉さんはそう叫ぶとエマ―ジェリアさんたちを守っていたアイミが姉さんの近くに飛んでくる。
かろうじて頭はそちらを向けて僕は何が起こっているかを見る。
アイミは姉さんのすぐ近くに降り立ちそしてなんと背中を開く。
姉さんは躊躇せずそこへと飛び込んだ。
「フェンリル! その力を使ってはだめっ!!」
シェルさんが叫んでるがもう姉さんはアイミの中に入ってしまっている。
そしてアイミの背が閉まると同時にアイミから緑色の光があふれ出した!?
体全体を一瞬結晶の様な鉱石に包んだかと思ったらすぐにそれが消え、首元が開いたかと思うとそこから女性姿の真っ赤な甲冑姿が飛び出してきた!
『なんだ!?』
白虎は用心深く剣を構え直す。
そして真っ赤な甲冑は白虎の前へと降り立った。
腰から剣の柄の様な物を取り出すと一振りして一本の槍へとその姿を伸ばす。
そしてそこから一気に飛び込むけどその速度は目でとらえるのが難しいくらい早い。
『なんと!?』
がっ!
白虎は慌ててその槍の一撃を剣で受け止める。
が、赤い甲冑はそこから横に薙ぎ払い白虎を城壁まで吹き飛ばす。
ブンっ!!
「エマ―ジェリアさん、今のうちにソウマを!!」
この声、間違えなく姉さんだ!
エマ―ジェリアさんは慌てて僕の所まで来て【治癒魔法】をかける。
いつもよりかなり魔力を注ぎ込んでくれているようで治療に時間がかかっている。
「嬢ちゃん、坊主は、ソウマは大丈夫なのか!?」
「今やってますわ! ソウマ君、意識はありますの!?」
「エ、エマ―ジェリアさん、すみませんまたご迷惑をおかけして」
「馬鹿言ってないで! 意識はあるのですわね!? ならばっ!!」
エマ―ジェリアさんは片手で僕を治療していたのがもう片手を光らせて更に僕に手を当てる。
「くぁっ! 魔力が持ってかれる、でもソウマの為ね、仕方ない。エマ、ジャンジャンあたしの魔力を使いなさい!!」
一瞬セキさんが苦しそうに胸を押さえるけど背中の羽根もしまい僕の近くまで来る。
「くぅ、ティアナのやつフェンリルだってのに『赤の騎士』を使うなんて! でも悪魔王クラスじゃあたしでも敵わない。あの人かこの『赤の騎士』しか手が無い」
シェルさんは悔しそうに壁に飛ばされた白虎を見る。
壁に吹き飛ばされていた白虎はもうもうと土煙を立てている中からガラガラと音を立てて立ち上がった。
『まさかこんな隠し玉を持っていたとはな‥‥‥』
だけど見た感じたいしたダメージは無い様だ。
「ソウマは渡さない! 今ここでお前を倒す!」
『面白い! 全力で行くぞ!!』
どんっ!
ばっ!!
姉さんの赤い甲冑と白虎が大地を蹴ってぶつかり合う。
その動きは先ほど以上に早い!?
ぶつかり合う瞬間だけ姿がうっすらとしか見えない程。
「くわぁっ流石に母さんの【赤の騎士】ね! あたしでも付いて行けるかどうか!」
セキさんがぐっとこぶしを握ってその戦いを見ている。
リュードさんもシェルさんも今は黙ってその戦いを見守る。
「ソウマ君、どうですの? まだどこか痛みますの?」
「ありがとうございます、エマ―ジェリアさん。お陰様で何とか動けそうです」
僕はエマ―ジェリアさんの助けを受けながら起き上がる。
と、今度はエマ―ジェリアさんが膝から崩れそうになる。
「あっ、ですわ‥‥‥」
「おっと、大丈夫ですかエマ―ジェリアさん?」
僕は何とかエマージェリアさんを抱きかかえる。
するとエマ―ジェリアさんは顔を赤くしながらも僕の腕から体勢を立て直そうとする。
「だ、大丈夫ですわ。ソウマ君だってまだ完全に治った訳では無いのですわよ‥‥‥」
「でも、エマ―ジェリアさんくらいなら受け止められますよ、だって軽いんですもん」
するとますますエマージェリアさんは顔を赤くしながらプイっと向こうを向く。
「す、少しはたくましくなったようですわね‥‥‥」
言いながら自分で立ち上がる。
そして姉さんと白虎の戦いを見る。
「あれがフェンリルさんの奥の手ですわね? 伝説に聞く『赤の騎士』。しかしそれは命を削るものと聞きますわ‥‥‥」
「えっ!? エマ―ジェリアさん、それって本当ですか!?」
「ソウマよく聞いて、エマの言った事は本当よ。あの力は四大精霊王による奇跡の力。その力は異界の悪魔の王にも引けを取らない。事実初代ティアナはその力であの人を守り抜いたの、自分の命と引き換えに‥‥‥」
エマ―ジェリアさんが僕の質問に答える前にシェルさんがそう言う。
僕は慌てて姉さんたちの戦いを見る。
「じゃ、じゃあ姉さんは今も命を削っているってん言うんですか!?」
「落ち着いて、今回フェンリルは初めてあの力を使ったわ。一度や二度ですぐには影響は出ないけど何度もその力を使うとやがて体に影響が出てきて最後には力を使い果たしその体を光に変えて消えてしまうわ。だからソウマ、あなたがもうこれ以上フェンリルにあの力を使わせないようにさせるのよ!」
どがっ!
ずざざざざぁぁあぁっ!
どうやら姉さんの一撃を喰らった白虎は何とか防御は出来たものの大きくまた門の前にまで弾かれ地面に大きく足をずった跡を残し立ち止まる。
『ぐっ! ここまでとは! 仕方ない、この街が消えるやもしれんが我が最大の力【魔咆哮】を喰らうがいい!!』
すぅうううぅ~
ぐろろろろろぉ‥‥‥
「くっ! なんて魔力の高まり!? あんなの喰らったらこの街もただでは済まない!」
姉さんは白虎に対峙してそう言いながら槍を地面に突き刺し胸の装甲に手を当てる。
一体何をするつもりなんだ!?
『消し飛ぶがいい! 【魔咆哮】!!』
かっ!
ごがぁぁあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!
白虎は口を大きく開き光と共に大きな咆哮を吐き出す。
それは地面をえぐり全てを粉々に粉砕しながら姉さんの赤い甲冑に迫る。
しかし姉さんは胸の装甲を拭き剥がし開くとそこには四っつの色の輝く魔石が埋め込まれている!?
「【最大旋風魔光破】マキシムトルネード!!」
ビカッ!
どがあががががががぁあぁあぁぁん!!
四つの魔石が光ったと思ったら、まるで竜巻の様な魔力の渦がプラズマをバチバチと光らせながら白虎の【魔咆哮】にぶち当たる。
ぼどがぁあああぁあぁ!
『なにっ!?』
姉さんの放ったそれは白虎の【魔咆哮】を飲み込みながら勢いを落とさず白虎を捕らえる。
『ぐぉおおおおおぉぉぉぉっ! まさか、この俺がぁッっ!!!!』
姉さんのその技に飲み込まれ白虎は最後にそう言いながら吹き飛ばされていく。
どぉがぁぁああああぁぁぁぁんッっ!!!!
目の前の物を全て飲み込み白虎の後ろの門さえも奇麗に粉々に吹き飛ばし、草一つ残さずきれいさっぱりと消し去ってしまった。
姉さんの赤い甲冑は胸の装甲を閉じ僕に振り向く。
そして青い光る粒子にその装甲を分化していきいつもの姉さんの姿に戻る。
「ソウマ!」
姉さんはそう叫んですぐに僕に抱き着いてくる。
「ぶっ! ちょっと、姉さん」
「うわぁーん! ソウマ大丈夫なの!? 何処か痛い所無いの!? お姉ちゃんは、お姉ちゃんはぁーーーーッ!!」
そう言いながら抱き着いていたのを一旦離れ頭の先からつま先まで隈なく見て回ってからもう一度抱き着く。
「よかったーーっ! ありがとうエマージェリアさん!!」
「むぐぐぐぅ、姉さん苦しい‥‥‥」
流石に今回は邪険にも出来ないで僕はしばらく窒息しないように姉さんに抱き着かれるのだった。
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