第102話5-3忠義の在処
「ちょ、ちょっとやめてください!!」
いきなり当主であるギグナスさんが姉さんの前に跪いて頭を下げるモノだから姉さんはおどおどとしてしまう。
ギグナスさんと一緒にリュードさんも同じく跪く。
いや、じいと呼ばれた老人も控えていた使用人の人たちも一斉に姉さんに跪く。
「我らホリゾン一族、恩義に答える為あなた様に忠義を誓います」
「いやいやいや、そんな昔のこと引っ張り出されても困ります! 大体にして当時の私は彼女を守る為死んでしまって、すぐに転生しても彼女の保護下で幸せな一生を過ごしたのだからゾナ―には十分に尽くしてもらっていますってば!」
姉さんは慌ててギグナスさんを引き起こす。
「あ~、やっぱり母さん完全に思い出してるわね?」
「だわね。まあフェンリルと混ざっているだろうから性格や考えは今のフェンリルに近いけど」
セキさんやシェルさんは姉さんを見ながらそんな事を言っている。
「シェルさん、セキさんどう言う事なんですか? 姉さんが完全に思い出しているって??」
するとシェルさんは軽いため息をついてから言う。
「フェンリルはティアナの記憶を完全に思い出していて、覚醒もしているの。でも今のフェンリルとティアナが混ざった状態でどちらかと言うとフェンリルの方が強いようなのよ」
「じゃあ、姉さんじゃ無くてティアナ姫なんですか!?」
僕が少し慌ててシェルさんにそう確認するとシェルさんは僕の頬に両手を当てて顔を自分に向けさせる。
真正面から見るシェルさんはとても奇麗で思わずドキリとしてしまう。
「いい事ソウマ、フェンリルはティアナと混ざっているけどフェンリルよ。だから完全にティアナに戻らないようにするにはソウマが重大な役目をしなければならないの! あの人に寄せ付けない為にもここはソウマがびしっとフェンリルを嫁にして‥‥‥」
「いやいやいや、シェル様!! 何でソウマ君をたきつけるのですわ!? 姉弟なのですわよ!? 禁断の愛ですわよ!?」
「エルフ族ではそう言うのもあるからいいのよ!」
「いや、あんたらエルフと人間族一緒にしたら駄目でしょうに‥‥‥」
シェルさんが訳の分からない事を言っているとエマ―ジェリアさんが慌てて止めに入る。
そしてセキさんはあきれたようにその様子を見ている。
僕が姉さんをお嫁さんにする?
何それ??
ないない、姉さんみたいのがお嫁さんになったらただでさえ弟離れできない姉さんに四六時中抱き着かれたりキスされたりしてうっとおしいったらあリゃしない!!
僕はシェルさんの両手を取って頬から離す。
「シェルさん冗談はこの位で、姉さんとティアナ姫が混ざっているのは分かりました。でも姉さんなら大丈夫、弟離れするのもまだまだ先になりそうですしね」
そう言って笑うと姉さんがこちらを向いて叫ぶ。
「お姉ちゃん一生弟離れしないっ!! もう、ソウマのいけずぅっ!!」
そんな姉さんにギグナスさんのリュードさんも思わずポカーンとしてしまうのだった。
* * *
「とにかく我ら一族は始祖よりずっとあなた様に仕え恩返しを行うよう言い伝えられてまいりました。故に我らの忠義はあなた様に捧げるものとなります」
ギグナスさんはそう言って一歩も引かない。
姉さんはその申し出にほとほと困り果てていた。
「そうは言われても私にはとてもではないけどあなたたちを養う事は出来ないし、そもそもこの後元ルド王国の魔王城に行かなきゃならないのよ?」
「だったら俺だけでも付いて行くぜ!」
姉さんの再三の断りにいきなりリュードさんが手を上げて自分も同行することを言い出す。
姉さんはとても嫌そうな顔をするけどギグナスさんはリュードさんを見て頷く。
「うむ、リュードよ、その意気や良し! どうかこの愚息だけでもあなた様に同行させてはもらえませぬか?」
「ええぇとぉ‥‥‥」
ギグナスさんとリュードさんはにっこりと笑い二人同時に白い歯を光らせ親指を立てて姉さんを見る。
そんな二人に姉さんは更に何か言おうとした時だった。
「兄者! ティアナ姫が見つかったとは本当か!!!?」
扉をいきなり開いてまた誰かが入って来るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます