第101話5-2首都エリモア
首都エリモアは古くからある街でその昔ホリゾン建国時には城塞都市だったそうだ。
「一番古い城壁は中央のあの辺だな。今はだいぶ街も大きくなっちまってあそこまでだいぶ距離が出来ちまった」
リュードさんに引き連れられて街への門もすんなり入れてその古い街並みを見ながら説明を受けていた。
ここにも魔王軍はいる。
でも特に僕たちが街に入るのに咎められる事は無かった。
中央に一番最初に出来たお城と城壁がある。
ここからだと結構な距離がありそうでお城の上の方が少しかすんで見える。
「またここって街が大きくなっていない?」
「冬に生き残るには街の方が良いからな。自然と人が集まって来る」
姉さんはお城を見ながらつぶやくとリュードさんはそう説明をしてくれる。
そして僕たちをお城の方へと連れて行く。
「どこに行くのですの?」
「俺の実家さ。ホリゾン家は城の近くに居を構えている。俺の一族はそこに住んでいてこの国を支える者と俺の様にティアナ姫を探す者とに分かれているんだ」
エマ―ジェリアさんは街をきょろきょろ見ながらリュードさんに聞く。
リュードさんは答えながらお城の近くの屋敷を指さす。
「見えて来た、あそこが俺の実家だ」
「うわっ、大きな屋敷ですね!?」
そこはこの街中だと言うのに広い庭がついていて周りが塀で囲まれた場所だった。
リュードさんは門まで行くと大声で人を呼ぶ。
「俺だ! リュードだ!! 役目を果たし帰って来た!」
開けっ放しの門から使用人だろうか?
数名の人がやって来てリュードさんを見て驚く。
「お帰りなさいませ坊ちゃま」
「おう、じいか。元気そうだな? それより親父殿と叔父殿はいるか?」
じいと呼ばれた老人はリュードさんの引き連れていた馬をすぐに若い使用人に連れて行かせる。
馬車から降りた僕たちも客人と言う事で屋敷に案内してくれた。
* * *
「今旦那様をお呼びします。少々こちらでお待ちください」
そう言ってじいと呼ばれた老人は一礼して部屋を出て行った。
応接間の様な此処で僕たちはお茶を出され待つことになった。
「まさかここがゾナーの一族の屋敷だったとはね。シーナ商会のエリモア支店のすぐ近くじゃない?」
「シーナ商会? なんでシェルがそんなもん知ってるんだ?」
お茶を飲みながらため息をついているシェルさんに首をかしげながらリュードさんは聞いている。
シェルさんはジト目でリュードさんを見ながら言う。
「五年前ベイベイの何処であたしに負けたか忘れたの?」
「うるせぇ、あんときゃちょっと女だからって気を抜いたんだよ! って、ベイベイ? 確かあの時は‥‥‥」
リュードさんはそこまで言ってぎょっとしながらシェルさんを見る。
「シーナ商会本店!? って事はシェル、お前シーナ商会の用心棒だったのか!?」
「何を言っているのですの!? シェル様はシーナ商会のオーナですわ!!」
思わず突っ込みを入れるエマ―ジェリアさん。
何故か偉そうに腕組みして「ふんすっ!」と鼻息も荒い。
リュードさんはそんなエマージェリアさんとシェルさんを見比べ頭の後ろを掻きながら言う。
「まさかシーナ商会ってのがシェルの店だったとはな‥‥‥ 主要都市には確実にある謎の大企業。どう言ったルートかは知らないがその品揃え、販路確保、僻地の村にまで品物を届ける機動力。どれひとつとっても普通の商会が太刀打ちできねえ化け物企業。お前がそのオーナーだったのか!?」
「まあ、オーナーと言うか、私たちの家と言うか。あの子たちの面倒を見ていたらいつの間にやらね。それに長い歴史のあるシーナ商会は色々と役に立ってくれているからね」
言いながらお茶をすするシェルさん。
「だとしてもだなぁ‥‥‥」
コンコン。
リュードさんが何か言おうとしたら部屋の扉がノックされた。
そして初老の男性が先ほどのじいと呼ばれた老人と一緒に入って来た。
「リュード、役目を果たしたと言っているそうだが、本当か?」
「けっ、せっかく戻って来たのに開口一番それかよ? ああ、とうとう見つけたぜティアナ姫を!」
リュードさんはそう言いながらソファーに座る僕たちにその初老の人物を紹介する。
「俺の父親で現ホリゾン家当主のギグナス=ホリゾンだ」
「お初にお目にかかる。私が当主のギグナスです」
そう言ってギグナスさんは胸に手を当てお辞儀をして挨拶をしてくる。
「『女神の伴侶シェル』よ。こっちは『爆竜のセキ』、そっちの女の子は『聖女エマ―ジェリア』そしてそこの赤髪がフェンリルとその弟ソウマね」
シェルさんが立ち上がり同じように胸に手を置きお辞儀をしてから僕たちを紹介する。
「『女神の伴侶シェル』殿ですか‥‥‥ 『爆竜のセキ』殿に聖女様まで。神話級の人物ばかりですな? して、リュードこちらの赤髪のお嬢さんが‥‥‥」
「ああ、とうとう見つけたぜ、ティアナ姫の転生者だ!」
リュードさんは姉さんをギグナスさんの前に引っ張り出す。
ギグナスさんは姉さんをじっと見ながら話しかける。
「失礼、あなたはティナ姫の転生者だと言われますが幾つか質問をよろしいでしょうかな?」
「私はフェンリルです。確かにティナ姫の転生者ですがフェンリルです!」
姉さんはそこだけは譲れないと言う風にきっぱりと言い放つ。
ギグナスさんは苦笑をしてから、それでも幾つか質問を始める。
「ではフェンリル殿、我が始祖ゾナーと勝負で使ったものは何でしょう?」
「ゾナーと勝負って、ああ、ティーカップの事?」
それを聞いたギグナスさんは目を大きく見開く。
そして続けざまに聞く。
「では勝負後我が始祖ゾナーに何をさせたか覚えておられますかな?」
「勝負後って‥‥‥ ああ、約束通り靴を舐めさせたって事?」
姉さんの回答にまたまたギグナスさんは目を見開く。
って、姉さんその昔この人たちのご先祖様に何させてんだよ!?
「まさしくティアナ姫ですな‥‥‥ 我ら一族に伝わる始祖の恥ずかしき記憶をこうも的確に言い当てるとは。この話は今では門外不出の秘話になっております」
「まあ、あの時は私も大人気無かったけど約束は約束だったからね‥‥‥」
「あー、母さん、じゃなくてフェンリル」
「だいぶ的確に思い出しているわね」
セキさんもシェルさんもやれやれと言う感じでため息をついている。
そんな中、ギグナスさんは姉さんの前に跪き頭を下げる。
「ティナ姫、よくぞお戻りになられました。我らホリゾン一族心より帰還をお慶び申し上げます!!」
「え? ええぇっ!?」
姉さんは驚きの声を上げるのだった。
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