第44話3-3出発前のおかたずけ
セキさんは悪魔の軍団に飛び込んで行き悪魔たちを吹き飛ばす。
『なんだとっ!?』
ヤギ頭の悪魔はそれを見て驚く。
そして慌ててセキさんに対処しようとするけどこっちもセキさんに続けと攻撃を仕掛ける。
「風の王よ!」
「ソウマ下がって! はぁっ、ガレント流剣技三の型、雪崩っ!!」
「もう、毎回毎回セキったら考え無しなのですわ! ソウマ君ガードをお願いですわ! 【聖なる光】ホーリーライト!!」
シェルさんが風の王を呼びその風の刃で飛び立つ悪魔たちを刻む。
姉さんが剣を地面に突き立て石礫を悪魔たちに雪崩の如く浴びせる。
そしてエマ―ジェリアさんが僕にガードをさせながら【聖なる光】を悪魔たちに浴びせて浄化をする。
レッサーデーモンで精神体だった者はこれだけで奇麗に浄化され光の粒子となって消え去る。
『貴様ら一体何者だ!?』
「名乗るほどの者じゃ無いわよ。ただ、あなたたちが世にはびこるとあの人が作り上げた秩序が乱れ迷惑なのよ!」
ヤギ頭の問いにシェルさんはさらりと答え続けて大地の精霊魔法を使う。
僕もエマ―ジェリアさんを守りながら襲い来る悪魔たちに何とか対応出来ているのは姉さんやシェルさん、セキさんのお陰だ。
『あの人の秩序だと? エルフの女‥‥‥ 貴様、【女神の伴侶】かっ!? イザンカ王国のブルーゲイルで我が軍を壊滅させた【女神の伴侶】か!!!!』
ヤギ頭の悪魔はそう言うと頭上に手をかざし空間に発生させた雲の様な物の中から三又の矛を引っ張り出した。
『おのれ、女神の手下め!! ブエル殿の恨み、晴らしてくれるわぁ!!』
そう言ってシェルさんに切り込むけどシェルさんは慌てずにヤギ頭の悪魔に手を向けて精霊魔法を放つ。
「ごめんね、付き合っている時間が無いの。光の精霊よ!」
かざした手から小さな光の弾がいくつも集まってヤギ頭に向かって飛んで行く。
あんな小さな光の玉で大丈夫なのかと思っていたらまるで石礫の様に飛んで行きヤギ頭の悪魔に突き刺さり刺さった場所が破裂するかのように大きな穴をあける。
『ぐはっッ!? なんだこれは!?』
「なんてことないわ、光の精霊たちよ。悪魔のあなたには浄化作用が有るからきついでしょうけどね」
そう言ってもう一度光の玉を手に集めそれを撃ち出しあっさりとヤギ頭を消し去る。
『ぐわぁぁあああぁぁぁぁぁ!!』
僕は思わずそれを見ながら声を漏らしてしまった。
「凄い‥‥‥」
「それはそうですわ! あの光の精霊たちは女神様の力を宿した上位の光の精霊たちですわ! 不浄なモノなど一瞬で消し去りますわ!!」
ふんすとエマ―ジェリアさんは鼻息荒くまるで自分の事の様に胸を張る。
僕は襲い来るレッサーデーモンの攻撃を捌きながら感心する。
「よっと、流石はシェルさんって事ですね? 【女神の伴侶】と言われるだけの事はありますね!」
僕の持つセブンソードと言う伝説のショートソードは何でも切れると言うので僕でもレッサーデーモンを切り倒すことが出来た。
エマ―ジェリアさんに襲い来るレッサーデーモンを切り倒しながら感想を言うとますますエマージェリアさんは嬉しそうに胸を張る。
「どうやらソウマ君もシェル様の偉大さが分かって来たようですわね! シェル様こそ至高! もう全部あげてもいいくらいですわぁっ!!」
さらにふふんと胸を張り鼻息荒くのけぞるエマ―ジェリアさん。
腰に手を当て上体をのけぞるのだけど‥‥‥
「エマ―ジェリアさん危ない!!」
抜け出したレッサーデーモンがエマ―ジェリアさんを襲う。
シェルさんの事で胸を張っていて防壁魔法が切れていたのに気付いていない?
僕は慌ててエマ―ジェリアさんのフォローに入る。
「ガレント流剣技一の型、牙突!!」
肉体を一瞬だけ強化して脚部に魔力を流し込む「操魔剣」をも駆使してエマ―ジェリアさんを襲うレッサーデーモンに切りこむ。
「へっ、ですわ?」
やっと防壁魔法が切れているのに気付いたエマージェリアさんは間の空いた声を出すけど既に目前にまでレッサーデーモンが迫っていた。
「きゃぁーですわぁっ!!」
レッサーデーモンがその爪をエマージェリアさんに振り下ろそうとする瞬間僕がそのレッサーデーモンを突き破る。
どすっ!!
ばんっ!!
僕の牙突で何とかレッサーデーモンの上半身半分を吹き飛ばす。
「間に合った! って、うわぁぁぁっ!!」
「あっですわ!!」
突き破ったはいいけどその先にエマ―ジェリアさんがいた。
慌ててセブンソードの短剣を放り投げるけど勢いが殺せないでそのままエマ―ジェリアさんに突っこんでしまった。
どさっ!
「うー、はっ!? エマ―ジェリアさん大丈夫ですぅ‥‥‥かぁ‥‥‥」
押し倒してしまった僕は頭に布がかかっている事に気付く。
そして目の前に真っ白な三角の布が有る?
あれ?
これって姉さんの穿いている下着と同じような‥‥‥
「いたたたぁですわ‥‥‥ ってっ! ソウマ君なんて所に頭を突っ込んでいるのですのぉっ!?」
「ぶっ!」
「駄目ですわっ! 私にはシェル様と言う心に決めた人がいるのですわぁっ!!」
僕は見事にエマ―ジェリアさんの太ももに頭をはさまれもがく。
更にポカポカと頭を殴られる。
「駄目ですわぁっ! 嫌ぁーですわぁー!!」
「ソウマっ!! 何やっているのよ!? やるならお姉ちゃんにやってよ!!」
キャーキャー言いながらぽかぽか僕を殴っているエマ―ジェリアさんのスカートから僕を引き抜く姉さん。
そいてそのままぎゅ~っと抱きしめる。
「ぶっ ね、姉さんっ!! 苦しいっ!!」
「もうソウマのいけずぅっ! お姉ちゃんにもアレやってよぉっ!!」
何とかもがきながら姉さんの胸から脱出すると既に悪魔の軍団は殲滅済み。
セキさんはこきこきと首を鳴らしながら戻って来ていた。
「フェンリル、ソウマにエマも遊んでないで片付いたからそろそろ出発するわよ?」
シェルさんは既にオオトカゲの上に乗りながら僕たちにそう話して来る。
僕はまだ姉さんに抱き着かれたまままだエマージェリアさんに頭をぽかぽか殴られている。
はぁ、こんなので本当に「ハーピーの雫」なんてレアアイテム探し出せるのだろうか?
「ふむ、ソウマもまだまだね、道中もっと鍛えてあげるわね!」
戻ってきたセキさんにそう言われながら僕は思う。
この先もいろいろと大変になりそうだと。
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