第18話1-18堕天使対フェンリル
「ガレント流剣技五の型、雷光!!」
姉さんが必殺技を放ち僕の上に襲いかかる黒い影に飛び込む。
がきぃぃぃいいいぃぃんっ!
「あらぁ、危ないわねぇ、私の奇麗なお肌に傷がついちゃうじゃなぁ~いぃ!」
「くっ! 私の雷光が!?」
驚き見れば僕の前にいつの間にか姉さんが立ち塞がっていた。
そしてその向こう側にはまさしくバケモノと称して良いモノがいた!
うわぁ、何あれぇっ!
筋肉ムキムキの青髭なのに金髪の髪の毛を振りまき濃ゆいメークで女性の薄手の服を着た背中に蝙蝠の羽根が有って頭には悪魔の角が生えているバケモノは一体何!?
「あらぁん、やっぱりよく見れば可愛らしい男の子ぉ~。もう、食べちゃいたいわぁ~」
「あんた何者よ!? 私の可愛いソウマに何手を出しているのよ!?」
「うふぅん、私にはかなわないけどなかなか奇麗な子ね? 私は堕天使、美の悪魔よん♪ あなたたちを支配下に置くように『魔王』様に召喚された悪魔よん! さあ、私の美に屈しなさぁぃ!」
そう言ってそのバケモノは姉さんに両手の爪を伸ばして襲ってくる。
「ソウマは下がって! こいつ強い!」
姉さんはその攻撃をなぎなたソードで弾くけど姉さんが苦戦するなんて初めて見た!
僕はすぐに姉さんの邪魔にならない様に大きく飛び退きショートソードを構える。
「このぉ、ガレント流剣技三の型、雪崩!!」
姉さんは一旦下がって地面に剣を突き立て力を溜めてから一気にそれを化け物に向けて地面の石礫ごと放つ。
まるで小石の嵐のように一気に沢山の石礫が化け物に飛来するけどなんとそいつはそれらを器用にその爪ですべて弾き飛ばす。
「はぁっ! はいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいぃいぃぃぃっ!!」
両腕に力を込めて筋肉を盛り上げ目にも止まらない速さで全ての石礫を弾くその様はまるで千手観音!
姉さんの技をこの化け物は全てはじき返した。
「ガレント流剣技二の型、二重の刃!!」
石礫の嵐が終わると同時に姉さんはガレント流剣技二の型、二重の刃を繰り出す。
その瞬速の技はまるで姉さんの剣が二本に分かれたかのように同じ場所に一度に二撃の刃を叩き込む技でその斬撃が二発も入れば大抵のモノは切れる。
しかし!
「ごぅぉるぅぁあああっ! まだまだぁっ! オネェを舐めるなぁっ!」
分厚い筋肉の胸板はなんとその斬撃を受け止めた!
姉さんはその瞬間剣を手放し大きく下がる。
そして次の瞬間に姉さんのいた場所に空間から何本もの触手が飛び出し姉さんを捕らえようとした。
しかし剣を放し大きく飛び退いたおかげで姉さんは触手に絡み取られることは無かった。
「勘のいい子ねぇ~。ますます壊したくなってきたわぁ。そしてその後ろにいる僕ちゃんをもっとおいしく頂きたくなっちゃうわぁ~」
「くっ! なんて奴よ! でもソウマだけは渡さない! ソウマは私のモノよ!」
姉さんは僕をかばうかのように空手で構える。
確かにあんなバケモノなら僕なんて簡単に殺されて食べられちゃうだろうな。
僕はまだ死にたくないけど姉さんにとっては武器が無いのは痛手だ。
「うふぅん、邪魔されるともっとその子が欲しくなるわねぇ~、もう突いて突いてよがり狂うまで愛しちゃいたいわぁ~」
「ぐっ、バケモノめ! ソウマの初めては私のモノよ!!」
うわぁ、突き殺されちゃうの僕?
きっとあの爪でいびり殺されるように突かれて殺すつもりなんだ。
でも姉さんの僕の初めてって何?
まさか姉さんも僕を突きまくって遊びたいの!?
「姉さん! これっ!」
しかしそんな事よりも僕は姉さんに僕の持つショートソードを渡そうとする。
それなのに姉さんはすぐに僕を抱えて横に飛び退く。
ずにゅるん!
どッ、どどどどっ!!
僕たちが飛び退いていなくなった所に何処から生えて来た触手が殺到する。
「あらぁん、本当に勘の良い子ねぇ~ぇ。もう、くやしいぃ!」
スカートの端を口まで持って来て噛んで悔しがっているけど、ムキムキの太ももから盛り上がった真ん中が姉さんが穿いているような下着にきつそうだ。
そしてなぜか僕は気持ち悪くなった。
「うわっ! なんてもの見せるのよ!! ソウマ、大丈夫!?」
「ううっ、気持ち悪くなってきた‥‥‥」
姉さんは僕を後ろにかくまいながらあの堕天使と対峙する。
僕はもう一度姉さんにこのショートソードを手渡そうとした。
「させないわよぉん! ほ~らぁ!!」
一瞬だった。
そのバケモノは姉さんの懐に入って爪を刺し向ける。
しかし姉さんは上手く爪の腹を叩きその攻撃をよける。
「頑張るわね? でもこれで終わりよぉん!」
と、いつの間にか僕の足に触手が絡み付く!?
それは思いのほか力強く僕はそれに思いきり引っ張られてしまう。
「うわぁっ!」
「ソウマっ!」
「よそ見をしている余裕があるのかしらん?」
引っ張られた拍子に僕は地面に転げて引きずられるのを姉さんが助け起こそうとした時だった。
しゅるるるるるっ!
にゅるんっ!!
「くっ! しまった!!」
姉さんの手首を脚をその触手が捕らえる。
そして一気に空中に持ち上げる。
「おーっほっほっほっほっ! だめねぇ~、私相手によそ見しちゃぁ。さあ、この可愛い触手でたぁっぷりと貫いてあげようかしら?」
「ひぃぃいいいいぃぃっ!」
姉さんのお腹に向かって触手が伸びる。
やばい、いくら姉さんでもあれじゃ防御のしようがない!!
僕は無我夢中で足に絡む触手をショートソードで切り落とし全ての力を込めて唯一僕に出来る技を放つ。
「姉さん!! ガレント流剣技一の型、牙突ぅっ!!!!」
全ての魔力と僕に出来る全ての力を脚と剣に込めて姉さんを狙うその触手に飛び込む。
ばっ!
どがぁぁあああぁぁあんっ!
とにかく姉さんを助けたい一心だった。
僕は全ての魔力を剣に乗せ渾身の一撃を放つ。
でも‥‥‥
「ソウマぁっ!!」
「あら凄い! 何この子? こんなに力を持っていたのぉ!? 私の可愛い触手ちゃんが粉々になっちゃったぁ!!」
どうやら姉さんにとどめを刺そうとしたそれは破壊できたようだけど、僕は全ての魔力を使い切り体の力が入らない。
突き抜けたその後空中で体が動かなくなりそのまま地面に落下を始める。
「嫌ぁっ! ソウマぁっ!!」
姉さんの声が聞こえるけど体が動かない。
「よくやったわね、偉いわよソウマ」
ふわっ!
地面にたたきつけられる寸前に風のクッションが僕を持ち上げ地面に激突するのを防ぐ。
「セキ、剣をフェンリルさんに!!」
「はいよ! ほらフェンリル!!」
ちらっと見えるそこにはエマ―ジェリアさんが防御の魔法を使いながら触手からみんなを守りシェルさんの精霊魔法が触手を切り刻んでいる。
閃光のように走り抜く赤いそれはセキさん?
そこから姉さんに向かってなぎなたソードが投げられる。
姉さんはそれを口で受け取り一瞬で手足を縛りつける触手を切り裂く。
ずばずばずばっ!
とん。
姉さんは地面に降り立ちゆっくりと口にくわえたなぎなたソードを手に取る。
「よくも私の可愛いソウマを‥‥‥ そして危うくソウマに貫いてもらうモノを奪いそうにしてくれたわね‥‥‥ 許さない!!」
ぼぉんっ!!
途端に姉さんを煉獄の炎の柱が覆った。
それは姉さん最大の攻撃魔法、【紅蓮業火】だ!
「ちょっ、何この魔力は!? 本当にあなた人間なのぉ!?」
だんっ!
姉さんは怒り心頭の様子で一歩足を踏み出す。
「もう暑苦しいわねぇ! お前たち、この娘をやっちゃいなさいぃ!! ‥‥‥って、あらぁ?」
「アークデーモンは全部かたずけましたわ!」
「まあいい運動にはなったわね? もうちょっと暴れたかったけど」
「と言う事で、フェンリル後はその変態だけよ? やっちゃっていいわよ?」
エマ―ジェリアさんが最後のアークデーモンも消し去り返り血で手を真っ赤に染めていたセキさんも手を振ってその汚れを払っている。
そしてシェルさんは僕をやさしく抱きしめ介抱してくれている。
「す‥‥‥みま‥‥‥せん、シェ‥‥‥ルさん‥‥‥」
流石に魔力切れで意識が飛びそうになるけど僕は姉さんのその姿から目が離せない。
「あんただけは許せない!」
そう言って姉さんは更に炎を激しく燃え上がらせる。
「ふ、ふんっ! それでもあんたは私にかなわないわよぉ! その刃は私のこの美しい筋肉を貫けないわぁ!!」
「うるさいぃっ! 喰らえガレント流剣技九の型、九頭閃光ぉっ!!!!」
カッ!
ガレント流剣技最後の型で八方向と突きの全ての斬撃を一度に発するこの技は最大最強の威力を持つ。
あの「魔人」でさえ姉さんのこの技にはかなわない。
「ふんっ! 私の筋肉美は最強なのよぉおおぉんッ! 全て弾き返してやるわぁん!!」
ドガガガガガガガガっ!!
姉さんの放つ九つの光が一気にこの化け物を襲う。
しかし筋肉を倍近い大きさに膨れあげこの化け物は姉さんの八つの光を受け止める!
「無駄よぉおおおおぉぉん!! 私の筋肉は世界一ぃなのよぉおおぉん!!」
「ガレント流剣技五の型、雷光ぅっ!!」
そして最後の突きの一撃を入れる瞬間姉さんはガレント流剣技五の型、雷光を放ちその姿を一瞬であの化け物の後ろに回り込み返す突きをその背中に挿し込む!
ずぶっ!
「はぁぅぁあああぁぁぁぁぁんッっ♡!!」
あれ?
なんか刺さった位置がだいぶ低い?
「あぁぁぁぁぁんっ! そこはだめなのよぉおおぉぉぉんっ!」
ぱぁぁあああぁぁぁんッっ!!
最後にこの化け物はそう言って一気に破裂するかのように飛散して消え去った。
姉さんはその場で突き刺した剣を振って地面に突き立て炎を消し去りすぐに僕の所へと走って来た。
「ソウマぁっ!!」
「ねえ……さ‥‥‥ん‥‥‥ よかった‥‥‥」
シェルさんに抱きかかえられる僕を奪い返すかのように姉さんは抱きしめてくれる。
姉さんのあの大きな胸に抱きしめられながら僕は安心して気を失うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます