第19話1-19一回戻りましょ♪
あれ?
僕は何をしていたんだっけ??
「ソウマっ! よかった、気が付いたのね!!」
見れば僕を覗き込む姉さんがいた。
その顔は涙がにじんでいた。
「えっと、僕はどうしたんだっけ?」
どうやら姉さんに膝枕されている様だった。
姉さんは上から僕を覗き込み大きな安堵の息を吐く。
「だから大丈夫だって言ってるでしょうに? 単なる魔力切れよ、体の擦り傷だってエマが【回復魔法】をかけてあるから問題無いでしょう?」
横からシェルさんの声が聞こえる。そちらを見ると姉さんの横で僕を見つめているシェルさんがいた。
シェルさんはそっと僕の額に手を当て優しく言う。
「頑張ったわね、あそこで『操魔剣』を使って極限までの魔力強化をしたわね? なかなかの攻撃だったわよ?」
「え、えーとぉ‥‥‥」
僕は思わずそのシェルさんの微笑みにドキリとして目が離せなくなった。
褒められた。
ものすごくうれしい。
そんな感情が懐かしさと共に湧き上がる‥‥‥
「ちょっと、シェルさん! ソウマに手を出さないでください!! ソウマは私のです!!」
「むぎゅっ!」
姉さんは僕の頭を膝枕した上から覆いかぶさるように抱きかかえる。
ちょ、ちょっと姉さん!
この体勢本気で窒息するぅっ!
太ももと姉さんの大きな胸に上下から挟まれて完全に身動き一つ出来ない。
「むぐぅぐぅううううぅっ!!」
「何故だかわかりませんがちょっとうらやましいですわね? 私もシェル様にされてみたいですわ!!」
「こうやって膝枕してあげているんだから良いでしょう?」
横からエマ―ジェリアさんとシェルさんの会話が聞こえるけど今はそれどころじゃない。
僕はいよいよ危なくなってきて手足をバタバタしてその危険性を伝える。
「むーっ! むぐぅううううううぅ!!」
「フェンリル、そろそろ放してやらないとソウマが本当に窒息死するわよ?」
どうやらセキさんの声みたいだけど誰でもいいから助けてぇっ!
「えっ!? うわぁぁあああぁぁあぁっ、ごめんソウマっ! 大丈夫っ!?」
ちーん。
せっかく僕の意識が戻ったのにまた気が遠くなる。
「ああああぁぁっ! ソウマが白目向いてるぅ!! こ、これは人工呼吸が必要ね!? ソウマぁ、今お姉ちゃんが人工呼吸してあげるからね!!」
「ぶはっ! はぁーはぁーっ、危なかった、姉さん何度も言ってるけど窒息するから胸押し付けないでよ!!」
って、姉さん何しようとしているの!?
思わず迫りくる目をつぶった姉さんの顔を手で押し退ける。
全く姉さんったらしょっちゅうキスしてこようとするんだから!
「うー、ソウマのいけずぅぅ~」
「どうやらソウマも大丈夫みたいね? よかった。さてと、シェルここも片付いたから戻ろうよ。エマもいつまでもシェルに引っ付いていないで」
セキさんがそう言って肩をこきこき鳴らしている。
僕は姉さんの膝枕から起き上がり周りを見る。
遠巻きにこちらの様子を見ていたのはミューさんたちと軍隊の人たちかな?
唖然としているけど僕が起き上がるといきなり大声の歓声が沸き上がる。
うぉぉおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!
「やったぞぉ! 魔王軍を倒したぁっ!!!!」
「流石『爆竜のセキ』様、『聖女』様、『女神様の伴侶』様だぁっ!」
「あの赤髪の娘もすごかったぞ!!」
「あの少年は誰だ?」
いっせいにみんながこちらにやって来る。
僕はこんなにも大勢の人たちに取り囲まれるのは初めてなので大いに驚く。
「ソ、ソウマぁ、どうしようこんなに大勢の人!?」
姉さんも同じようだ。
おどおどして僕に抱き着いてくる。
「シェル様、本当に助かりました。これでブルーゲイルは救われました」
ミューさんがシェルさんの前に跪き頭を下げている。
「当然ですわ! シェル様が来られればあんなのおちゃのこさいさいですわ!!」
「エマ、あんたアークデーモンがいっぱいで最初は尻込みしてあでしょうに‥‥‥」
シェルさんが何か言う前にエマ―ジェリアさんが胸を張って偉そうに言うのをセキさんが突っ込みを入れる。
「うっ、そ、それは‥‥‥ でも頑張ったからシェル様がご褒美くれたのですから問題ありませんわ!!」
そう言ってまたシェルさんに抱き着く。
シェルさんは抱き着くエマ―ジェリアさんをそのままにミューさんに話し始める。
「とりあえずは魔王軍を退けたけど、もうここまで侵攻しているとはね。これは早い所フェンリルたちとボヘーミャに行ってあの子の封印を解いてノージム大陸に乗り込まなきゃね?」
「はい、我々も引き続き本部と連絡を取り更なる増援を要請致します。シェル様たちもお気をつけて」
ミューさんがそう言うと周りの兵隊さんたちもまたまた歓声を上げる。
そして口々にシェルさんやセキさん、エマ―ジェリアさんを称えそして僕と姉さんもそこへ加えられる。
「シェル様たちが立ち上がってくださった!」
「もう怖いモノなぞ無いぞ! 我らには女神様の加護がある!!」
「魔王など蹴散らしてやってください!!」
「君たちも魔王討伐に協力するんだね!?」
取り囲まれ口々にそう言われる。
僕と姉さんはあまりの事にきょとんとして呆然としてしまう。
「面白そうね、シェル、あたしたちも行くわよ?」
「シェル様と一緒にいられるならどこへでも行きますわ!!」
「全くあなたたちときたら‥‥‥でもまあいいわ、早い所かたずけちゃいましょう! とりあえず戻って今度こそボヘーミャに行きましょう!」
シェルさんはそう言って僕とフェンリル姉さんに手を差し伸べる。
「さあ、行きましょう」
僕と姉さんはシェルさんの差し出す手を取るのだった。
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