まさに、泣きっ面に蜂だった
「……………………僕が、
悪かったんでしょうか」
誰に答えを求めるでもない
問い掛けから、
物語りは始まった。
雪生の手元にある
自家製白桃ジュースは
淡い桃の花のように、
涙をかいていた。
――事の始まりはきっと……、
僕が彼女を好きに
なったことだと思います。
あれは二年前の
僕が中一のときのことでした。
僕には好きな女の子がいました。
名前は、
雛鶴えりなといいます。
彼女は明るくて誰とでも話せる
気さくな子で、
クラスでも
人気のある女の子でした。
これが、その写真です。
結構可愛い子ですよね。
……まぁこれでも僕も、
その頃は結構友達もたくさんいて、
人気者と呼ばれる
ほどではなくても、
人好きのする方だったんですよ。
友人からの信頼もあって、
何不自由なく学校生活を
送っていたと記憶しています。
その夏頃、グループで
校外学習の発表をやる
という授業がありました。
彼女、雛鶴さんとは
同じグループに
振り分けられていたので、
自然と話す機会も多くなって、
友達になって。
僕は彼女の気さくで
話しやすいところに惹かれていき、
好きになるのも時間の問題でした。
彼女を好きだと自覚した僕は、
どうしたら好きになって
貰えるかなと思って、
彼女の好みを研究したり、
雑誌を読み漁ったりして
女心を追究していたんです……
今にして思えば、
僕は盲目に
なってたんだと思います。
それが初めての恋で、
他人を好きになるってこと、
そして想いを伝えるってことの
奥深さを僕は知らなかった。
周りが、いや――きっと、
雛鶴さんのことすら
ちゃんと見れてなかったんです。
彼女の些細な変化に、
僕は気付けませんでしたから。
その年の十二月。
二学期も終わって、
一年が終わる……。
暫くは、
彼女に会えないんだと思うと、
妙にセンチメンタルな
気持ちになってしまって、
終業式の日がクリスマス
当日だったこともあって、
相当浮かれていたんでしょうね。
とうとう僕は、
思いを募らせるだけの日々に
我慢できなくなって、
彼女に思いの丈を…………
打ち明けてしまったんです。
「あのさ、えりなちゃん」
「なぁに?」
「ぼ、僕、実は前から
えりなちゃんのことが……
大好きでした!
付き合って、ほしいです」
「……あたしのこと、
好きなんだ?」
「う、うん!
そうだよ、だからえりなちゃんも
僕のことが好きだったら
嬉しいな、って」
「ふぅん。ばっかみたい。
簡単に好きとか
言っちゃって、気色悪い。
ほんと、キモい」
「え、それって
どういうこ、と??」
「最後まで言わなきゃ
分からないの?
はぁー、
これだから男ってキモイ。
好きとか
言われたらキモいし、
ましてやそういう風に
見られてるのも
気色悪くて仕方ないから。
キモいキモい
キモイっ…………!!」
…………もう僕は
何がなんだか
分からなくなりました。
確実に言えることは、
僕が知る雛鶴さんは
そんな汚い暴言を
吐き捨てるような
女の子ではなかった
ということくらいです。
それで、僕は……
彼女に話し掛けるのをやめました。
気色悪いとまで罵られて
彼女を好きでいる
気力は残っていなくて、
きっぱり諦めたんです。
でも…………。
中二の今頃のことです。
クラスで物がなくなる
という事件が起こりました。
被害者は雛鶴さんで、
盗まれたものは
〝下着〟でした。
物が物だけに、
学校側も動かざるを
得なくなったんでしょう。
何より、彼女が
「盗まれたんだ」って言って
聞かなかったですから。
それから緊急の
荷物検査が執り行われました。
そして……、
彼女の盗まれたという下着は
僕の鞄の中から出てきて、
僕はあっと言う間に
下着泥棒の犯人にされて
しまったというわけです。
もちろん、
僕はもう彼女に
未練は残ってなかったですし、
下着を盗むなんて、
以ての外でしたが……
現物が出てきた以上、
そういうわけにもいかず、
僕は二週間の停学処分と
行き過ぎたストーカーという
汚名を負うことになりました。
それから三ヶ月ほどして、
僕は不登校になった、
というわけです。
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