もう、夜も遅いので……(3)
(いーやいやいや
いやいやいや!!!!
これはまずいって……)
「そ、雪さん?
さすがに、
年頃のお姉さんと
男子中学生が一緒に寝るのは、
風紀上
あんまりよくないんじゃ……」
「あら、雪生くんが
提案したのではありませんか」
雪はかなりけろっとしていた。
何を戸惑うことがあるのですか、
とでも言わんばかりに
堂々とした態度である。
「それは
そうなんですけどぉ……」
(年上のお姉さんと同じ布団で寝て、
理性を保てるわけ
ないじゃないですかぁ)
そんな健全な
男子中学生らしい
心の声が聞こえたのか、
彼女は雪生の顔を
じっと見つめたかと思うと
女神のような微笑みで、
「それに……
わたしのようなおばさんと
ピチピチな中学生の
雪生くんがどうこうなんて、
あるはずないですものね」
と雪生の淡い期待も下心も
一刀両断にしてくれた。
「ソ、ソウデスヨネー」
(そんなはっきり対象外だって
釘を刺さなくても……)
しかし、
雪生への予防線とも取れる
その台詞は、
彼女自身の自虐も孕んでいた。
結局、ちらほら
眠気がやってきたこともあって、
今夜は雪生のベッドで
二人一緒に眠ることになった。
とは言え、
雪生のベッドは
一般的なシングルベッド。
体格的にはほぼ大人と相違ない
中学三年生の男児と中背の成人女性が
一緒に寝るにはかなり手狭で。
「そ、雪さん。
その、ちょっと当たってます……」
座っているときは
気付かなかったが、
どうやら雪は
雪生と背丈が似ているらしい。
同じ高さに枕を置いて
横になっているのに、
時折当たる足の裏と裏が
重なり合うのだ。
「すみません、
どうしてもこれよりは寄れなくて
……やっぱりわたしが
床で寝るべきで――」
身体の一部(主に胸など)が
接触して、
距離を取ろうとすれば
雪が床に寝ようとする。
「いやいやそれはダメですって!
あぁもう、
気にしないようにしますから
床で寝ようとするのは
やめてくださぃぃぃ……」
(お、女の人のいい匂いが
……ダメダメ。
む、胸が……
やわほにゅで…………って、
反応するな
僕の身体ぁぁぁ!!!)
雪生の頭には、
「自分の理性<お姉さんが
床で寝ないこと」の数式が浮かび、
必死の思いで荒ぶる鼓動を
抑え込もうとしていた。
「あら、そうですか?
では、向きを
変えさせていただきまして
…………えへへ。
こうしてると、
誰かと一緒に寝てるって
感じがしていいですね。
雪生くんの体温を感じます」
耳元にかかる吐息と
背中から足にかけて
感じる他人の熱に、
雪生はこれから始まる
生殺し地獄への
カウントダウンを開始した……。
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