第16話 アスパラの小さな秘密

 翌朝、レモンとアスパラがみかんを迎えに行くと、みかんが扉の前に立っていた。

「おはようございます! レモンお姉さま。アスパラ様」

「あっ、ああ。……おはよ」

「——おはようございます」

 面食らう二人。

「今日の授業は、『呪術の解き方』ですよね。私、ちょっと怖くて早く目が覚めちゃいました」

「そうか。——で、マントの下の服はなんだ?」

「むふ♡ 鬼殺隊・胡蝶しのぶさんですぅ」

「……」

 もう何も言うまい。

 何も見なかったことにしよう。

 そう思う二人。

 みかんのコスプレに飽きれたレモンだったが、ふと疑問が沸いた。

「なぁ、みかん。なぜ、甘露寺密璃の衣装じゃないんだ? お前の好みだろ」

「うっ。そ、それは……」

 ニヤリと笑うレモン。

 その瞳に宿る意地悪な光。

「あれだな。だからだろう!! そうか、そうか。さすがに胸を強調するセクシーな衣装は無理かぁ。ガハハハッ」

「レモン様、でも先日は、ラムちゃんの衣装を着てましたよ」

「あぁ、ビキニは意外と貧乳を誤魔化せる。まぁ、私のようにせめてDカップあれば、どんな衣装も着こなせるんだがな」

 セクシーなチャイナドレスを身に纏うレモンは、腰に手を当て胸を突き出した。

 まっ、眩しい!

 思わずよろけるみかん。

「そういえば、アスパラ。その修道服の下に隠されているお前の胸は何カップだ?」

 胸の大きさを聞かれ、俯くアスパラ。

「女同士なんだ、恥ずかしがることもないだろ?」

「……エ」

 蚊の鳴くような小さな声。


「え……って, Aカップか?」

「……いいえ」

 もじもじするアスパラ。

「まさか……Fカップ⁈」

「——はい」

「嘘だ! 嘘だろ? だって、そんなに膨らんでないじゃないか!!」

「自分の胸が嫌いで、さらしで巻いてます」

 よろめくレモン。

「お前なぁ、せっかくのお宝をさらし巻いて隠してんじゃねぇ。みかん、甘露寺の衣装を出せ! こいつに着せてやるぞ!!」

 嫌がるアスパラを抑え、無理やり服を脱がそうとしている。

「あっ、あの……。レモンお姉さま、よだれが出てます」

 はっと我に返ったレモンは、何事もなかったように呟いた。

「授業に遅れるぞ」

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