第14話 カルマ
「みかん、そこをどけ! 私の星をめちゃくちゃにした奴らだ。こいつの魂が二度と輪廻転生しないようにブラックホールへと送ってやる!!」
レモンのクリスタルソードが、怒りに燃える赤い閃光を放つ。その閃光からフィを守るように、みかんの胸元でドリームクリスタルが光り輝く。
潜在意識に沈んでいた何かが目覚めたのか、
「彼の生まれた星、ガラバンの民は確かに好戦的な種族です。それは、幼い頃から競い合い・戦い合い・勝者が敗者を支配するように教えられたからです。戦い抜く力と知恵のない子は、父親に容赦なく処分されました。それがガラバンの神の教えだったのです」
「ガラバンの神っていうのは、悪魔か? あいつら、悪魔崇拝者だったんだな」
レモンのクリスタルソードの赤い閃光がうねりを上げた。
「あなたにとっては、『悪魔』と呼ぶものかもしれません。でも、彼らにとっては『富を運ぶ神』だったのです。彼らの種族では、男性しか産まれませんでした。種の保存のために、他の星の女性に子を産ませる必要があります。ただ、醜い容姿ゆえに他の星の女性から好かれることはありませんでした。だから、絶望と恐怖と暴力で女性を支配し、種を存続させてきたのです。心を失った母親は、子を産むことができても育てることをしません。彼らの種族には、母親の愛情が欠如していました。それが、何世代も続いたのです」
「当たり前だ! 身も心もボロボロにされて、勝手に孕まされた子に愛情なんか持てるか」
「あなたの言う通りです。でも、フィの母は違いました。フィを大切に育てたのです。兄妹の中で一番できの悪い子どもだったフィは、父親に何度も殺されそうになりました。その度にフィを庇い、フィを慰め優しく愛情をもって育てたのです。フィは、地球を侵略しようと思っていません。ただ、仲間が欲しかっただけです。やり方は、良くないですけれど……」
「どうして…… あなたが、それを知っているのですか?」
驚いたフィが、みかんを見つめる。
「みかん、フィをリーディングしたのか? そこまで詳細にリーディングできるとは――」
レモンが振り上げていたクリスタルソードを下ろす。赤い閃光が、静かに消えていく。
「フィ、あなたを育ててくれた優しいお母様の魂は生まれ変わり、今、あなたの側にいますよ」
「まさか! アスパラが!!」
レモンに名指しされたアスパラは驚き、クラッと眩暈を起こす。
「いいえ、ゴブリンさんです。時を超え時空を超えて、また会えて良かったですね」
「ゴ、ゴブリンが!!!」
「ゴブリンさんが!!」
レモンとアスパラが、同時に叫ぶ。
「おっ、おらの子ども? 初めて会ったとき可愛くて可愛くて仕方なかったのは、そのせいだったのかぁ。なんだか、嬉しいような、こそばゆいような……」
ゴブリンは『でへへへ』と鼻の頭をかいた。
「みかん、フィが地球に危害を加えないことは承知した。しかし、私は……」
レモンは、またクリスタルソードを握りしめた。どうしても、過去の憎しみを消すことができない。真っ赤に燃えるクリスタルソードの光を消すように、みかんのドリームクリスタルが、七色の光を放った。
「古き魂が出会うとき、かつてのカルマが蘇る。カルマの連鎖に堕ちるのも、カルマの鎖を解き放つのも、今を生きるレモン、あなたが決めることですよ。憎しみの連鎖を断ち切るのは、『赦し』それだけなのです」
力強くも柔らかいみかんの声が響く。
「まるで、神託みたいだな。……わかったよ。過去の憎しみに囚われるのはやめよう。」
レモンは、そう答えた。
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