第13話 黒幕
レモンたち三人は、ゴブリンの元へ急いだ。逃げられる前に、なんとしても黒幕を捕まえなければならない。
ドンドン!
ドンドンドン!!
ゴブリンの部屋の扉を力強く叩く。
「ゴブリン! 起きろ!! 大事な用がある!」
重い扉がゆっくりと開く。
「なんだべ? こんな夜中に……」
目を擦りながら扉から顔を出すゴブリン。
「こんな時間にすまん。アリスはいるか?」
「アリスちゃんなら、わしの隣で寝とりますよ。ちょっと待って下さい」
扉から中の様子を伺う三人。
「アリスちゃん? あれ、アリスちゃんどこさ行っただ?」
三人が顔を見合わす。
「ゴブリン、悪いが邪魔するぞ」
「えっ? 殿方の部屋に勝手に入るのは……」
「緊急事態だ! 状況を読め!!」
躊躇うアスパラに、レモンは大きな声で言い放つ。ゴブリンの部屋の中に入ると、ベッド周りを中心に三人はゴソゴソとアリスを探し始めた。
「ちっ、逃げられたか」
「いいえ、レモンお姉さま。この部屋の中におります」
「みかん、わかるのか?」
「はい、微かですが震えるエネルギーを感じます」
そう言うとみかんは、胸元に下がる『ドリームクリスタル』を掴んだ。
「うん? それは、この間の授業で作っていたやつか?」
「はい。ようやく納得のいく物ができました」
学園では、パワーストーンを使って自分に合ったアイテムを作る授業がある。みかんは、数あるパワーストンの中から『ハーキマーダイヤモンド』を選び、ワイヤーでネックレスを作っていた。ハーキマーダイヤモンドは、別名ドリームクリスタルともいい、予知夢を見ることができるようになるとも才能を開花させるとも言われている。
「なぁ、おらのアリスちゃんに何があっただ? アリスちゃんを探して、一体どうするだ?」
ゴブリンが三人の並々ならぬ様子に不安を感じている。アスパラがなだめるように優しく語り掛けた。この学園で起こっていることを丁寧に説明しながら……。
「ふっ、さすが『癒しの魔女』だな」
その様子をみて、レモンは感心していた。と、みかんが急にゴブリンの元に歩み寄り、パジャマのポケットに手を入れた。
「はい、みっけ!」
「アリスちゃん、いつの間におらのポケットに?」
「みかん、そいつのこの箱に入れてくれ!」
透明な箱に入れられたガマガエルに、レモンが強い口調で問いただす。
「おい、お前は何者だ?」
「ガラバン星の王子、フィ」
「なに!」
「正確に言えば、地球のガマガエルにウォークインしたガラバン星人の王子、フィだ」
「どういうことだ?」
「私の乗った宇宙船が、地球に墜落した。燃え盛る炎で私の肉体は滅びたが、ぎりぎりの所で魂だけを飛ばすことができた。地球で一番初めに出会った生物が……」
「ガマガエルだったのか」
「あぁ」
本当なら、もっとカッコいい生物か可愛い生物に出会えば良かったのにと、三人はフィのことを気の毒に思った。しかし、自分に似た種族にウォークインするのは、もはや運命なのかもしれない。
「他の仲間はどうした?」
「私だけだ。私は、ガラバン星最後の生き残りだ」
「大方、あちこちの星を侵略しすぎて銀河連盟にやられてしまったんだろ」
「まぁ、そんなところだ」
「あのぅ、質問していいですか? フィさんは、地球を征服するために来たのですか?」
みかんがストレートに質問する。
「いいや、たまたま堕ちただけだ。そして運よくウォークインできた」
「ほぉ。それで、この地球で上手いこと仲間を増やし乗っ取ろうという魂胆か」
「違う! 乗っ取ろうと思ってはいない。ただ、仲間は増やしたかった。種の存続のために。だが私は、暴力が苦手だ。だから、夢を操作することにしたんだ」
「はぁ? 暴力が苦手? 私の兄を食い殺し、星を侵略したのはお前らガラバン星人だろうが!! ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」
怒りに任せて、レモンがクリスタルソードを振り上げる。
「待って!」
みかんが、箱に覆いかぶさりフィを庇った。
「レモンお姉さま、話を聞いてあげて」
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