第12話 夢から醒めて
夢の中に残されていたみかんは、ようやく自分が立っている世界の異様さに気づく。
「私、こんな世界で恋をしていたんですね」
『人間の恋なんて、こんなもんだろう。醒めてしまえば、みんな色褪せる。恋した相手も、簡単に憎めてしまうしな』
「あなた方の恋は、人間とは違うのですか?」
ふっ
ガマ人間が鼻で笑う。
『恋とか愛とか、そんな感情はない。我々にあるのは、種の存続という本能だけだ』
そういうガマ人間の顔が、どこか寂し気に映る。きっと、人間と疑似恋愛をする中で不思議な感情が芽生えたのかもしれないと、みかんは思った。
<魂の進化・霊性の向上>
それは人間だけでなく、命ある物全てが体験するのかもしれない。
「みかん! 起きろ!! みかん!」
レモンの声が聞こえる。意識が引っ張られ、みかんは目覚めた。
「大丈夫ですか? みかん様」
アスパラとレモンが心配そうに、みかんの顔を覗き込む。
「あいつに何かされなかったか?」
二人の慌てた様子が、みかんには新鮮だった。
「大丈夫ですよ。たけるさんと少しお話しました」
「たけるさんって。 お前、まだ……?」
「大丈夫ですよ。もう、好きとかそういう感情はありません!」
「本当だな? まだ結婚したいとか」
「思ってません!!」
「なら、よし」
「ところでレモン様。他の方々の夢はどうなったのでしょう?」
「そうだ。とりあえず、校内放送で大きな音を出してみんなを起こそう」
三人は、放送室へ飛び込んだ。
アスパラが、音楽をかける。最高のボリュームで。
じゃじゃじゃじゃーん♪
じゃじゃじゃじゃーーん♪
「……ベートーベンの運命?」
レモンが驚いた顔でアスパラを見る。
「はい♡ 私の好きな曲にしてみました」
「そう、そうなのか。お前の好み、よくわからん」
「この曲なら、みなさん一発で飛び起きそうですね」
無邪気にアスパラの音楽センスを褒めるみかん。レモンだけが、複雑な心境だった。
「よっ、よし。これでみんな起きたはずだ。アスパラ、クリスタルボウルで学園内の様子を見てくれ」
「はい。あぁ、みなさん結婚式の途中で目覚めたので、不機嫌な顔をしております。でも、チャクラレベルは上昇してきています」
「そうか、では我々は倉庫へ向かおう」
「どうして、倉庫へ?」
みかんには、レモンが倉庫に向かう意味がわからない。
「えっ? まさか黒幕って――」
アスパラが驚いた顔で、レモンを見つめる。
「多分、あいつだ。それしか考えられねぇ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます