30話 体育祭⑧
すみません、予約投稿し忘れてました……。
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騎馬戦が終わった後、出場した人達が席に戻ってきていた。その中には先程倒れていた石田の姿もあった。しかしながら彼は肩に氷を当てており、満身創痍という様子である。その様子を見てクラスメイト達が駆けつける。
「石田君大丈夫?」
「あー平気だべ。ちょっと肩打っただけだから」
「あれ酷くない? 凄い集中狙いされたよね」
「本当それ、絶対仕組んでたよー」
どうやら俺以外のクラスメイト達も異変に気付いていたらしい。
それほどあからさまな行為であったという事か……。
「ごめん勇二、僕たちが君を支えきれなかったから」
「らしくないぜ洋ちゃん、つーかそこまで痛くないから気にするな。それよりリレーでは俺の分まで頑張ってくれよ」
え、走れないほど酷いの? 何甘えてんだよ、最後まで体育祭をやり切れよ。
……。何故か俺の心臓がバクバクしていた。それはとてつもなく嫌な予感がしたからだ。
「え、石田君リレーの選手じゃなかった? 出場しないなら誰が代わりに走るの?」
「それは補欠の人だね。確か僕たちのクラスの補欠は立花君だったよね」
水沢がそう口にしながら俺に視線を送る。同時にクラスメイト達からも注目を浴びる羽目になった。おい待てよ、何なんだよこの展開は……まじで聞いてねぇよ。
「立花君俺の分の敵を取ってくれ! まじ頼むべ!」
「僕からもお願いするよ、勇二の代役は君に任せた」
「……お、おう」
え、待って無理しんどい。嫌だ、走りたくない、目立ちたくない。
クラス対抗リレーとか体育祭の花形じゃん。俺そんなのに出場したら死んじゃうよ。
くっそ、内心でそう思っていても断る勇気がない。
……これが重圧、プレッシャーなのか。
そんな事を俺が思っているのも束の間、既に拒否するタイミングは失われ、俺は何も言えずにその場に立ち尽くしていた。ああ、見ているのか運命の神様……これで満足か?
今からお前のことぶっ殺しに行くから首洗って待ってろ。
そんな居るかも分からない存在に八つ当たりするぐらいしか俺にはできなかった。
何故なら俺には不運だと慰めてくれる友達も、茶化してくる友人も居ないのだから……。
※※※※
えへへ……何で個室ってこんなに落ち着くのでしょうか?
水沢に代役を頼まれた俺は現実逃避半分、胃が痛くなった半分でトイレに籠っていた。
この後はいよいよクラス対抗4×100メートルリレーが待ち構えているのだ。
おいおい、マジでもう無理だって、俺にはもうバックレるしか方法がない……。
お腹が痛くなったと言って、補欠の補欠を召喚した方が良いのではないか?
でも引き受けてしまった以上、口にしずらい。そもそも彼らと会話したくない。
くっそ……こんな所でコミュ障が災いするとは思わなかったぜ。
取り敢えず何をするにしても一旦トイレから脱出するしかないな……。
なんて俺が考えていると、外から声が聞こえてきた。
「つーか城之内君、マジ半端ないわぁ。九組の石田嵌めるとかマジ知将じゃん?」
「はっ、あのぐらい余裕だっつーの。つか見たか? あの無様な姿……まじでスカッとしちまったぜ」
「それなーマジ受けたわー。にしても城之内君、何で石田ボコしたん?」
「あー、あいつ俺と同じ軽音楽部でさー、元々ムカついてたんだけど、俺が付き合ってた女があいつの事好きとか言い出しやがったから腹いせに潰した」
「城之内君それマジやべぇわ。八つ当たりだべ?」
「うるせーよ。ま、スカッとしたし俺が楽しければそれでいいんだよ」
……。会話全部聞こえちゃったんだけど。幾ら何でもクズ過ぎるだろこいつら……。
まぁでも俺には関係ないことだ。リア充共の揉め事に関わるつもりはない。
そんな事を思いながら俺はトイレの個室を出た。
その瞬間、城之内とその取り巻きと一瞬だけ目が合った。だが直ぐに何もなかったように二人は会話に戻っていった。
俺がモブキャラであることが初めて役に立ったかもしれない。
仮に石田のクラスメイトであるとバレたらこの場で口封じという意味を込めてボコられたかもしれない。そんな意味のない事を考えながら俺はその場を後にした。
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