26話 体育祭④
廊下を歩いて、二階の一番奥にある所まで藤原先輩と来た。
どうやらここが目的地の場所らしい。
「さぁ早く入って、立花君」
「ここは、生徒会室っすか」
部屋の外にある文字にはそう書いてあった。そして、強引に藤原先輩が俺の背中を押してきたので、ひとまず生徒会室の扉を開けて中に入る事にした。
すると、内部の個室にはホワイトボードや大きな長机にそれを囲うように椅子が設置されていた。それだけに飽き足らず、何故かソファーやテレビまで置いてある。
なにこれ……実は生徒会室って遊び場なの?
「結構広いでしょ? ソファーとテレビは前生徒会長が独断で置いたものなんだー」
「そうなんすか、てか俺達以外誰も居ないんすね」
「そうだよ、この部屋は私たち二人の貸し切りだから」
藤原先輩はそう言いながら生徒会室の鍵を閉めた。いやなんで閉めたし!
密室で美少女と二人きりとかちょっとあれなんですけど……。いやよく考えたら家と変わらねぇか。
「いつもの友達はどうしたんすか?」
「奈央は体育祭実行委員だから今日は一緒にお昼を食べられないの。何か集計係らしくて絶賛お仕事中なんだよね」
「成程……それで俺を誘ったというわけですね」
「うん、そういう事。というか立っているのも何だしこっちに座ったら?」
「じゃあお言葉に甘えて……」
藤原先輩に言われるがままに、俺は生徒会室の椅子に座る。普段誰が使っているから分からないけど、汚さなければ問題ないだろう。
ひとまず俺は限定コロッケチーズパンを食べることにした。すると彼女が普段使っているであろう自分の椅子に腰を下ろしながらこんな事を口にした。
「それにしてもさっきは驚いちゃった。立花君があんな事言うなんて……少し見直したよ」
「は? 何の事っすか」
振り返ってみても、藤原先輩との会話で俺の評価を上げるようなことを口にした覚えはない。なら一体何の事だろうか?
「おい、そこまでにしておけよ」
突然、藤原先輩が誰かを演じるように声を変えながらそう言った。最初はピンと来なかったが、途端に気づいた瞬間、どうしようもない羞恥が襲ってきた。
どうやら彼女は、俺が七宮を助けた一連の行為を見ていたらしい。
「卑怯っすよ千春さん、覗き見していたなんて……」
「えーしょうがないじゃん。面白そうだったからつい見ちゃった。でも立花君カッコよかったよ。お姉ちゃん見直しちゃった」
「くっ、最悪だなマジで……」
「もう照れちゃって可愛いなー」
ニヤニヤと藤原先輩が俺に対して笑みを浮かべてくる。
ほんとにこの人、俺をからかう時だけ滅茶苦茶楽しそうな顔するよな。
マジで勘弁してほしいぜ……。
そんな事を思いながら俺は彼女とお昼ご飯を食べた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます