第一短編集
Kei
空から何かが……
久しぶりに休みが取れたので、たまには愛車を駆ろうとドライブに出かけた。
本当は一日中家でゴロゴロしながら、無駄な一日を過ごしたかったのだが、あまりにも天気が良すぎたのだ。
北国の田舎町のこと、数十分もすると民家もなくなり道沿いには簡便な柵で囲まれた牧草地に、建物といえば廃墟とも見えるボロボロのサイロや農機具を保管する掘っ立て小屋ばかりとなった。
フロントガラス越しに見える続く一本道の先は、そのまま空に続いている。
緩いカーブを曲がると、目の前の青空に大きな入道雲が沸き上がっていた。
あの雲の下まで行けば、大冒険が始まりそうな気がして、心がざわついた。
瞬間、空から黒い小さな影が地上に向けて落ちていくのが見えた気がして、ドキリとする。
知らずにアクセルを踏む右足に力がこもる。
どれくらいそうしていただろう。一向に近づかない入道雲を見つめているうちに、ドキドキしていた胸の鼓動も収まっていった。
「あれは幻だったのだ」
そう言い聞かせて、アクセルを踏む右足の力を抜いた。
ウィンドウをおろすと、まだ冷たい早春の風が車内に吹き込んできて火照った頬をくすぐった。
冒険を終え、僕は帰路に就くためにハンドルを大きく切った。
第一短編集 Kei @gaoqiaojicheng27
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