■Episode09:独りじゃない
「でも私……これからどうしたらいいの? イヴがいなくなっちゃったら私、独りぼっちで……」
「独りぼっちなどではありませんよ。この施設の外では今も……人間が生活を営んでいるはずです」
「……人間が? 絶滅したらしいって聞いたけど、違うの? 現に私も、目覚めてから誰の姿も見てないし……」
「そうですね……確かに、人の姿はもう長い間検知されていません。ですが、数十億と居た生物が綺麗に消えてしまうとは……私には考えられないのです」
「ノウェア様も、心の奥底では……他の生存者と出会えることを願っているのではありませんか?」
「え……?」
イヴから投げかけられたその問いに、ノウェアの心がドキリと脈打った。
「先日一緒に見た、パーティーの映像……そこに惹きつけられた貴方様の表情を、私はよく覚えていますよ。あの時、私は思ったのです。機械である私たちの手では、与えられるものに限りがあるのだ、と」
その時、ずっと優しげな笑みを浮かべていたイヴの顔に、悲しみの色が微かに差した。
「私たちには……この手で貴方の体温を感じることも、貴方と一緒に涙を流してあげることもできません。それができるのはノウェア様と同じ、生きた人間だけ。ですからノウェア様は、他の生存者を求めて行動を起こすべきなのです。この施設の外へと……」
「でも、施設の外にだなんて……マザーが許してくれないよ、きっと……」
「ふふ、そうですね……彼女は少々、融通の利かないところがありますから」
「融通が利かないなんてもんじゃないよ……いつもマザーは、私に命令するばっかりで……」
「ですが彼女も、元は貴方様をお守りするという目的のもとに造られているのですよ。私とは少々、方向性が違いますが……」
「マザーも、私のことを守ろうとしてる……?」
「そうです……彼女も貴方様のことを愛しているのです。ですから、可能であれば……今よりも少しだけ、マザーのことを信じてあげてください。理解し合い、共に生きる……そのための、最初の一歩として」
「マザーと、理解し合う……できるのかな、そんなこと……」
「ええ、きっとできますとも。願うなら……その先をノウェア様と共に歩んでいきたかったですが――」
その時、それまでノウェアと向かうようにして床に座り込んでいたイヴが、
急にバランスを失い、力なく倒れ込んだ。
「イヴっ! どうしたの!?」
「どうやら、もう時間切れ……お別れが近づいているようです」
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