■Episode07:最期の時


「間一髪のところでしたね……」

イヴは床を這いながら移動してきて、ノウェアの頭を優しく撫でる。


「お怪我はありませんでしたか……ノウェア様?」

「うん、大丈夫みたい……助けてくれてありがとう。イヴが居なかったら、私……あれ?」

そこまで言いかけてノウェアは、一つの疑問に行き着いた。


「この部屋まで来たってことは、イヴ……立って歩くこと、できたんだ……?」

「ええ、ひきずりながらであれば、何とか。隠すつもりはなかったのですが……遠からず故障することが目に見えていましたから、可能な限り消耗しないよう心がけていたのです。お陰で先程も……ノウェア様を助けることができました。ただ……」


僅かな沈黙を挟んで、イヴは口を開いた。


「ただ……どうやら私の方は、ここで役目を終えることになるようです」

「役目を終える? それ、どういうこと……?」


「別れの時が近づいています」

こんな時になってもイヴは、その顔に浮かべた優しい笑みを崩すことはなかった。


「先程の衝撃により、稼働を維持するために必要な機能が複数損傷しました。もう間もなく……あと五分程で、私の機能は停止するでしょう」

「機能の、停止……?」

ノウェアは震えた声で問い返す。


「人間でいう『絶命』に相当すると受け取っていただいて構いません。この時、この場所が……私の最期。そういうことです」

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