第355話 レナルド王→勇者→底辺。下巻。
20分後・・。
デアール)「お早うございますレナルド様」
レナルド)「おお、おはよう」
2人は勿論洞窟の中で一晩過ごした設定になっていた・・・。
デアール)「朝食用の木の実を獲ってきました」
レナルド)「あ、ありがとう」
レナルドは命令していないのに木の実を持ってきたデアールに少し感動していた。
レナルド)「君は何故、木の実を獲って来たんだ」
デアール)「そ、それは、レナルド様の為に獲って来たら喜ぶかと思い・・」
レナルドは自発的に動くデアールに疑問が湧く。
レナルド)「君は支配されてないのか」
デアール)「はい、私は防御系に特化してまして、支配魔法は無効化出来ます」
「えっ、今まで自分の意思で動いてたのか」
「はい・・」
恥ずかしそうに下を向き返事をするデアール。
レナルド)「・・・(俺に好意を持っているのか・・」
デアール)「食事を済ませたら急ぎましょう、もっと森深くに行かないと」
「わかった」
出発した2人に追手は絶える事なく現れ、逃げ込んだ迷宮で魔道具をゲット、どこかで見たようなRPGゲームの様な設定になっていた・・。
レナルド)「凄いな森深くには迷宮がまだこんなに残っていたなんて」
デアール)「ええ、レアアイテムも結構ありましたね」
「だがこれを使うのに詠唱をしないと発動しないのが頂けない」
「それは仕方ありません、私が代わりに出来れば良いのですが」
「仕方ないハーフエルフには使えない」
「くれぐれも無理をなさらないで下さい、レナルド様」
祈るような格好をし、本気で心配そうなデアール。
レナルド)「大丈夫だ、俺はやられない君を守る」
デアール)「本当ですか、貴方についていきます」
「ああ、任せろ(良い盾が出来たな・・」
それから数日、追手に追われながら最後は逃げ切り、気がついたらあの墓のある場所に来ていた。
レナルド)「ハァハァ、やっと現れなくなったな」
デアール)「はい、レナルド様あれは墓ですか?」
「そうだ歴代の王家の墓だ」
「あそこに隠れましょう」
「そうだな」
ゴゴゴ、重い扉が開き中に入る2人、すると扉が勝手に閉まる。
レナルド)「んっ?以前訪れた時と比べて中の雰囲気が違うぞ」
中に入ると以前訪れた時と全く違い、墓石は無くその代わりまるで円形闘技場のような作りになっていた。そしてライトがパッパと点灯し明るくなると祭壇の1番奥からアデールが現れた。
アデール)「レナルド待っていたわよ!」
レナルド)「クッソ、アデール待ち伏せていたのか」
「そうよ貴方をここに追い込んだのは私よ」
「ふざけた真似を、ゲームのつもりか」
「ふふ、私を倒してみたらポンコツレナルド」
「言いたい放題言いやがって今の俺は強いぞ、ナメてかかると痛い目にあうぞ!」
デアール)「戦う準備をしましょう」
レナルド)「嗚呼、そうだな」
デアールは道中手に入れた魔道具(レアアイテム)を亜空間宝物庫から取り出し、レナルドはそれを全身に身に装着!まるで機械化人間のようだ。
アデール)「戦いの準備は済みましたか?」
何故か攻撃もせず装着が終わるまで待ってるアデール。
レナルド)「ああ、待たせたな」
変身の最中は待つのがテンプレと言わんばかりのレナルド。
アデール)「さぁ、来なさい!」
レナルド)「ヘル・アロー!我に力を与え給え」
ブン!腕に装着してるナックルガードが光始める。一々言わないと発動しないようだ(笑
アデール)「それ、その詠唱って面白すぎ!」
レナルド)「喰らえ!全てを焼き尽くす地獄の業火、ヘル・フレア・アロー!」
アデール)「ブッ!」
アレな詠唱に思わず笑うアデール。
レナルド)「わ、笑うな!」
アデール)「だって・・」
シュバーン、放たれた赤く燃え盛るアローがアデール目掛けて飛んで行くが・・。
アデール)「遅いわねこのアロー」
スッ、アデールは瞬間移動で簡単にアローを避ける。
レナルド)「しゅ、瞬間移動だと」
アデール)「ふははは、私には効かないわよレナルド!」
腰に手を当て、高笑いし悪女を演じるアデール。
レナルド)「これならどうだ!」
アデール)「次に出す技はなんでしょうか?」
「絶対零度、全てを凍らす氷結の青の風、パーフェクト・フリーズ・ブルー・ブレス!」
「キャハハ、腹筋が!腹筋が!」
アレな詠唱を聞き、お腹を抱え笑うアデール。
レナルド)「わ、笑うな!」
設定してあるので魔法はちゃんと発動、ゴーと大きな音を立て絶対零度の風がアデールを包み込み、パキン!と一瞬でアデールが氷漬けの姿に変わり果てた。
レナルド)「ふふふ、俺の勝ちだなザマァみろ俺の実力を思い知ったか!」
透明な氷で覆われたアデールを見てドヤ顔のレナルドは、恥ずかしいセリフを言い放っていた。
レナルド)「コイツさえ死ねば俺の天下だ!ぎゃはは」
アデール)「ジロッ」
「なっ!」
高笑いをしてたレナルドは、氷漬けで動くことが出来ないアデールの目がいきなり開き驚く。
アデール)「うふふ、次は私のターンですネ!」
パーンと軽い金属音と共に氷が粉々に割れ、不敵な笑いをしたアデールは反撃を開始する。
アデール)「スタン!」
デアール)「キャー、バタン」
アデールのスタンを喰らい、全身が痺れ倒れたデアール。
レナルド)「デアール!」
慌ててデアールの元に駆け寄るレナルド。
デアール)「わ、私は大丈夫・・アイツを倒して・・」
レナルド)「わかった任せろ!俺が絶対終わらせる」
既に魔王を倒す勇者?の様な台詞を吐くレナルド・・。
レナルド)「卑怯だぞアデール」
アデール)「サポート役を潰すのは戦いの常套手段!」
「ふん、小賢しい」
スッ、またアデールの姿が消えた・・。
レナルド)「どこに消えた!」
スッ、パーン、アデールはレナルドの背後に現れ、巨大なハリセンを頭に喰らわす。
レナルド)「グホォ!」
デアール)「レナルド様!」
アデール)「お仕置きの定番と言えばハリセンでしょ!」
「瞬間移動で攻撃など卑怯だぞ!」
そう、レナルドはデアールを抱えたままだった。
アデール)「だって隙だらけなんだもん、だからわざわざハリセンにしたのに〜、2人まとめてポイした方が良かったかしら?」
レナルド)「ふ、ふざけたマネを・・デアール、君はここで大人しく待ってろ、絶対俺があいつを倒す」
デアール)「レナルド様・・」
「こんな馬鹿げた戦いは終わらせよう、そして一緒にフォーレストを支配しよう」
「わかりました」
思いっきり死亡フラグを立てるレナルド!
アデール)「準備はいいかしら」
レナルド)「ああ、待たせたね」
レナルドはデアールを優しく床に置くと腰の鞘から剣を抜く
レナルド)「俺の剣技を受けてみろ!」
勇者レナルド?は上段構えから腰を低く下段構になり気合を溜め始めた!
アデール)「無駄よ、貴方死になさい」
パッパパパパ、アデールは瞬間移動で距離を取り攻撃魔法を発動、大量のアローがレナルドに降り注ぐ。
レナルド)「ふん!俺には効かない」
カキンカキン!アローを切り裂き、したり顔で立つレナルド。
アデール)「あれ、いつの間に剣士になったのよ」
レナルド)「次は俺の番だ!全てを焼き尽くす焦熱地獄!焦獄剣、ヘルファイア・スラッシング」
アデール)「ギャハハ、なにそれ、キャハハ、崩壊、ほうかい、腹筋がー」
ボワァ、ダッ!大笑いするアデールの前に、炎を纏う剣を振りかぶりながら勢いよく飛び出す。
フローレンス)「やらせません!」
カン、カン、キン!レナルドの渾身の一撃を受けるフローレンス。
レナルド)「ゲッ!お前は」
フローレンス)「あらあら、この程度なのレナルド」
突然、アデールの前に飛び出たのはフローレンスだった、片手剣でレナルドの剣を否す。
レナルド)「クソ、俺の奥義を片手で受け流しやがって、いつから脳筋剣士になった!」
フローレンス)「脳筋とは失礼な!美少女剣士と言いなさい!」
「結婚して少女は無いだろ無理がある・・だが美人は認める」
微妙なこだわりを見せるレナルド。
フローレンス)「えー、わたし数年寝てたから、まだギリ10代よ!」
レナルド)「ああ、五月蝿い脳筋剣士!」
「ふん、私の剣技を受けてみなさい、フラッシュ!」
パパパパ、怒涛の5連突きを放つフローレンスの剣を受け流すレナルドは、グサ、グサと2箇所ほど刺された。
レナルド)「クッ!脳筋で高速剣だと」
あまりの高速剣をかわしきれず肩と足に突きを喰らいレナルドは思わず膝をついてしまう。
フローレンス)「脳筋言うな〜!けど口ほどにも無いわね(ドヤ」
レナルド)「クッソ、なんて強さだ」
「これで終わりよレナルド」
ズバッ!フローレンスは低い姿勢の下段構えから突進攻撃を繰り出す。
レナルド)「うっわ!いきなりは・・」
バッ!レナルドに剣が届きそうな瞬間、フローレンスの間に黒い影が飛び出してきた。
デアール)「グサッ、ウッ!」
レナルド)「デアール!」
痺れて動けない筈のデアールがレナルドを庇い、その突きを受けてしまう。
フローレンス)「あらやだ、飛び込んできちゃって」
レナルド)「お前は絶対ゆるさん!」
レナルドはデアールを受け止めたまま、フローレンスに突きを放つ。
カン!当たり前だが力の入ってないレナルドの剣は軽く否されてしまう。
アデール)「フローレンス、引きなさい」
フローレンス)「はい」
ツカツカ、ヒールの音を靡かせアデールがレナルドに近づく。
レナルド)「許さない、絶対許さない」
アデールを睨むレナルド。
アデール)「私が治療しましょう」
レナルド)「罪滅ぼしのつもりか」
デアールを床に置くと、しゅわ〜ん!アデールが治癒魔法を発動させる。
デアール)「嗚呼・・」
そしてアデールの治癒魔法でデアールは一命を取り留めることが出来た・・。
レナルド)「ふん、隙だらけだぜ」
レナルドはアデールに渾身の突きを放つ。
アデール)「グサッ!ギャ!」
レナルド)「ふはは、やったぞ遂にやったぞ!」
アデール)「ひ、卑怯よ」
「そんなの知るか勝てば良い」
アデールの胸に突き刺さった剣は血が滴り、そのまま倒れる。
レナルド)「死ね死ね!お前なんか死ね!」
デアール)「レナルド様ダメです」
さらに攻撃を仕掛けようとするレナルドを止めるデアール。
レナルド)「ふん、アデールさえ死ねば、俺がトップとして君臨すれば良いんだ」
デアール)「駄目です、アデール様は我らの支配者です」
「五月蝿い!」
「ドン!」
レナルドはデアールを突き放つ。
レナルド)「ククク、俺が今から支配者だ!」
アデール)「アリャ、ホント駄目男ね、これやっぱ想像通りバッドエンドじゃないの」
瀕死のはずのアデールが普通に立ち上がりデアールに手を差し伸べ起き上がらせた。
フローレンス)「そうですね〜、欲望丸出しで卑怯な手でアデールを突き刺したもんね〜」
レナルド)「何故だアデールは死んだ筈だ、デアール予備の剣をくれ」
呼ばれたデアールは電池切れしたロボットの様にピクリとも動かない。
アデール)「ふふふ、ゲームオーバーね!」
レナルド)「何がゲームオーバーだ」
「デアールは命令に忠実で自己判断できるNPCよ」
「えっ?NPCだと」
「そう、彼女はプログラムよ」
「お前が死なないのもそうなのか?」
フローレンス)「お先にログアウトします」
ユラッ・・フローレンスが歪みながら消え去る。
レナルド)「何なんだ、ここはゲームの世界なのか」
アデール)「貴方、今頃気が付いたの?」
「い、いつからだ」
「貴方が王冠を被ってからよ」
「嘘だ嘘だ!」
「デアール此方に来て頂戴」
デアール)「はい」
今まで動かなかったデアールが立ち上がりアデールの脇に立った。
レナルド)「デアール!」
デアール)「はい、何でしょう」
「今までのは演技だったのか」
「はい、私はNPCですのでプログラミングを実行するだけです」
アデール)「ふふ私が設定したのよ、貴方に好意を寄せあなたの為に懸命に努力する可愛いハーフエルフ」
レナルド)「ふざけるな、俺の意識を元に戻せ」
「あら、宜しいのですか、この逃走劇はゲーム実況としてフォーチューブでライブ配信されてますのよ」
「何だと、最初からなのか」
「はい、脱獄や逃走劇、私を殺した後のセリフも全て」
「ま、まさか・・」
「これで貴方の信頼は地に落ちたわ」
「お、俺は終わりだ・・・嗚呼なんて事をしてくれたんだ」
崩れる様に膝を着き頭を抱えるレナルド。
アデール)「自業自得よ、もう表舞台には出れないわね」
レナルド)「嗚呼・・終わりだ」
アデール)「うふふ、お別れねレナルド、さあログアウトしましょう」
>
ポコ)「ログアウトするナノ」
「ポチ」
>
ユラッ・・歪みながらレナルドの前から消えるアデール。
レナルド)「待て、どこに行く、俺も出たい」
「おーい、出してくれー」
「頼むー」
「おーい」
ーー
アデール)「ああ、面白かったわ」
フローレンス)「それではリンクを切りますね」
「ありがとうレン」
「いえ、結構面白かったです、それでは」
アデールはヘルメット型のバーチャルシステムを脱ぎ、フローレンスはベクスターのフルダイブ機能を使いこのゲームに途中から参戦していたのだった・・。
ウィン)「レナルドはゲームの中の世界で生きているのでしょうか」
アデール)「そうね、あのカプセルに入って眠っている間はゲームの中が現実世界よ」
「このまま放置しても良いのでしょうか」
「ええ、設定はフォーチューブの投票で変えてあげれば?」
「ふふ、それ面白いですね」
「レナルドには本当に落胆したわ、けど面白かったわね」
「はぁ〜、私は機械やゲームが苦手でして、やっと理解しました」
レナルドをわざと脱獄させ途中バーチャルシステムにログイン、マドックが設定をいじったゲームの世界に引き込み最強の勇者に仕立て上げ、最後に獣人の頂点に立つアデールに挑み自分の考えを全て吐露させたのだった。
アデール)「それじゃ、クーンに帰るね」
そしてアデールはタイラーを連れてデルタに戻って行った・・。
アデール)「これでタイラーの王位継承はスムースに行えそうね・・」
今回のお仕置きはレナルドの地位を完膚なきまで底辺まで落とし、タイラーの王位継承をスムースに行うためだった。
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