第354話 レナルド王→勇者→底辺。上巻。


ポコがデルタに向かって数時間後・・・。


ポコ)「持って来たナノ!」


アデール)「ポコ待ってましたよ」


ポコ)「はいナノ」


重力キャンセラーのカートに載せられたバーチャルシステムと大量の機材をポコとマドックが運んでくる。


ウィン)「こ、これは」


アデール)「バーチャルシステムとゲーム機よ」


ポコ)「ネット回線に繋ぐナノ」


マドック)「私がオペレートします」


アデール)「面白そうでしょマドックさん」


マドック)「はいとても」


ウィン)「へっ?」


アデール)「うふふ、公開処刑ですよウィン」


ウィン)「はぁ~、私は良く分かりませんが」


ポコが持ってきたバーチャルシステムにゲーム機を接続、そしてフォーレストのネットサービス、フォーチューブと繋いだ・・。


マッドク)「私に指示して頂ければゲーム設定を色々変えます」


アデール)「わかりました、それでウィン、レナルドの食事はどうやって運ぶの」


ウィン)「警備を付け、魔法防御の魔道具を首から下げた侍女が運びます」


「魔道具を付けないときっと何かやらかすわよ、うふふ」


「アデール様、何か悪戯でもするのですか」


「あら、顔に書いてあるかしら」


「はい」


企み顔のアデールはこの後メイド服に着替え、顔を偽装しレナルドの所に昼食を運ぶ事になった。そして部屋に入ると。


アデール)「食事をお持ちしました」


レナルド)「・・・ふん!(魔道具を忘れたのか、チャンスだ」


「失礼します、こちらに置かせていただきます」


アデールはわざと魔道具を付けずにレナルドの前に立ち挨拶、そして食事を運びテーブルの上に置く。


レナルド)「悪いがこのティーカップを下げてくれないか」


レナルドは手に持ったカップを侍女に差し出す。


アデール)「畏まりました」


ブン!ティーカップを受け取る瞬間、レナルドはアデールの手に触れ支配魔法を発動。


レナルド)「おい、運び終わったら鍵を持って1人でこの部屋に来い」


アデール)「はい」


アデールは奴隷契約を先に交わしているので魔法効力が無力化、反発してバレてしまうのだが、レナルドが魔法発動した瞬間に吸収し支配されているフリをして従う素振りを見せる。


カチャ、ギィ、数分後命令通り部屋の鍵を開ける。


アデール)「失礼します、鍵を持ってまいりました」


レナルド)「おお出れたぞ、おい先に歩いて誰かいたら知らせろこのまま地下室に行け」


「畏まりました」


「よし、このまま行けそうだ」


事前に設定したので城の中は人がまばらだ。


レナルド)「ここまでくればもう大丈夫だ」


そして誰に見つかる事もなく簡単に地下室まで辿り着く。


アデール)「レナルド様、追手は来ていません」


レナルド)「急がないと捕まったら元も子もない」


「はい」


「確かこの辺りだったな」


ピッ、ズズ、レナルドが手をかざすと大きな本棚が動き出し秘密の部屋が現れた。


レナルド)「先ずは金だ!」


レナルドは引き出しから隠してあるスマホを取り出しフォーレストペイを起動、偽名の口座に全額を移そうとしていた。


アデール)「レナルド様、その額ですと必ず税務署が追跡します」


そう、それは不正な方法で稼いだ表に出来ない金だった、それも結構な金額50

億ほど残高が残っていた。


レナード)「どうしたらいい?」


アデール)「デルタペイとクーンペイの上限いっぱい送金します」


「だが、俺には口座がない」


「私のクーン口座をお使い下さい」


「おお、君は持っているのか」


「はい、お使いでよくクーンに行かされるので作りました」


「わかった、借りて構わないか」


「もちろんです、お好きな時に仰って頂ければ私が払います」


「助かるよ」


支配してると勘違いしてるので、簡単に信用してしまうレナルド。


レナルド)「よし、全額を10回に分けて送るぞ」


アデール)「どうぞ、私の口座のコードです」


ピッ、クーンペイ。アデールのクーンペイは女王権限で上限が無いので全て送金した。普通は上限額が設定されていて送れないが、レナルドはその事に気がつかなかった。


アデール)「これで大丈夫です、お好きな時にお使い下さい」


レナルド)「良かった、この口座はバレてなかった」


アデール)「レナルド様、送金したのでもう安心です」


当たり前だがそんな甘い話は無い、その口座はもちろん監視対象だった。


レナルド)「お前はハーフエルフか」


アデール)「はい」


アデールの見た目は小麦色をの肌を持つどちらかと言うとダークエルフって感じの偽装をしていた。


レナルド)「今日から俺が飼い主だ、名前は?」


アデール)「デアールと申します」


レナルド)「よしデアール、俺はここから逃げ出し熱りが覚めるまでの間潜伏し、その後支持者の所に行き表舞台に返り咲く」


デアール)「はい、わかりましたレナルド様」


素直に従うフリをするアデール。<デアール=アデール>


デアール)「・・・・(ウヒャ!来た来た」


レナルド)「よし、デアール逃げるぞ!」


デアール)「はい、どこまでもお供します」


こうしてレナルドとデアールの逃避行が始まった。


レナルド)「この部屋が宝物庫なのか」


デアール)「はい、2人で逃げるには必ず必要になる魔導がある筈です」


デアールの案内で宝物庫に立ち寄る、もちろん本当の部屋なのだが・・。


レナルド)「この魔道具達は使い方が分からないものばかりだな」


デアール)「レナルド様この魔道具と王冠をお使い下さい」


ショーケースからデアールが取り出した細かい細工が施されている王冠と腕輪をレナルドに渡す。


レナルド)「この魔道具は見た事無いなぞ」


デアール)「王冠は魔力増幅、この腕輪型の魔道具はアローなど攻撃魔法の命中率が飛躍的に向上する物です」


「そうかわかった、早速つけてみよう」


「この王冠を被ると一瞬ブラックアウトしますが、慌てず意識を集中してください」


「わかった」


レナルドが王冠を頭に載せた瞬間、ブン!アデールが支配魔法を繰り出すとフッと意識が無くなり棒立ちの状態になった。


アデール)「良いわよ、入ってきて」


ポコ)「運ぶナノ」


マドック)「スタートはこの部屋ですね」


アデール)「そうよ、一瞬意識が飛んで戻って来た体で行きましょう」


「わかりました、この部屋をCGで取り込みますので一旦出てください」


マドックは3D測定器を取り出し部屋を測定し始めた。


アデール)「覚醒したら追手が来て、慌てて逃げ回って森に向かうように設定してね」


マドック)「了解しました!追手は設定がないので適当にナレーションを入れます」


アデール)「うふふ、よろしくネ!」


レナルドをカプセルに入れて運び出し、マドックがゲーム機のプログラムを弄り先ほどの部屋を設定。


マドック)「はい、設定が終わりました。それではアデール様ログインしてください」


ウィン)「な、何が起きているのでしょうか」


アデール)「さぁ、ここからが本番よ!モニターを見てればわかるわ」


ウィン)「は、はい・・」


ウィンはゲームなどに興味が無く、更にフォーチューブの実況動画も見たことがほとんど無くチンプンカンプンの様子だった。


マドック)「それではバーチャル世界を楽しんでください」


ポチ!マドックがスイッチを入れるとアデールは先程の部屋に現れ、その横には棒立ちのレナルドがいた。


アデール)「はいどーもー、クーン精霊女王のアデールです〜。今日は皆さんにレナルドの本心をお見せしたいと思いま〜す」


ポコ)「おお、いきなりアクセス数が増えたナノ」


アデール)「噂ではレナルド王は離れに幽閉されていると皆さん聞いたことがありますよね〜、実際に悪いことして私に怒られ幽閉してましたー、今からそこを抜け出し森に逃げ最後私の元に来る様に設定してありまーす。最後までご覧くださーい」


アデールのふざけた紹介で始まったゲーム実況、アデールからお知らせがあると告知していたのでアクセス数は鰻登りだった・・。


マドック)「それではレナルド王をつなぎます」


アデール)「良いわよ〜」


シュン、またアデールはデアールに偽装を行う。


レナルド)「おお、力が湧いてくる感じがするぞ」


デアール)「お似合いですレナルド様」


一瞬意識が飛んだと思っているレナルドは自分がすでにバーチャル世界に入っているとは全く思ってなかった。


兵士)「レナルドは何処だ!手当たり次第探せ!(棒」


遠くでレナルドを探すナレーションが聞こえる。


レナルド)「追手か?・・」


兵士)「こんな所に入り口があったぞ!(棒」


<棒読み=マドック>


レナルドを追って数名の兵士が部屋を見て周り宝物庫に向かって来ていた。


デアール)「レナルド様、追手がきます!」


レナルド)「窓から逃げるぞ、行くぞ」


パリーン、飛べ!窓ガラスを破り外に飛び出す2人。


兵士)「おい、あそこにいたぞ(棒」


レナルド)「俺に任せろ」


シュン、シュン、バシ!うげぇ!レナルドのアローを受けて倒れる兵士・・。


デアール)「正面に1人」


レナルド)「任せろ!」


シュン、バシ、途中レナルドは追い掛けて来る追手にアロー繰り出し次々に倒していく。


レナルド)「おお、俺のアローの威力が上がっているぞ!」


デアール)「レナルド様危ない!バシ!キャ」


立ち止まり悦に入ってたレナルド、アデールは身を挺してアローを受け倒れた。


レナルド)「大丈夫かデアール」


デアール)「はい防御魔法で無力化しました」


「ありがとう、命令してないのに」


「咄嗟にお守りしただけです」


「そうか、さあ行こう」


「はい!」


森に向かって走る2人の後には数名の追手が迫っていた。


レナルド)「森に入れば擬装魔法でやり過ごせる」


デアール)「わかりました」


数分後・・。


レナルド)「ここで良いだろう」


シュンと軽めの音と共に偽装魔法を展開し隠れる2人。


デアール)「こ、怖い(小声」


直ぐ後ろには追手が迫っていた。


レナルド)「我慢するんだ!(小声」


兵士)「くっそ何処だ、探せ!(棒」


森に入り2人は大木に密着し偽装魔法を掛け追手をやり過ごすと、2人に気がつく事なく兵士が目の前を通り過ぎた・・。


レナルド)「よし反対側に逃げるぞ」


デアール)「はい」


追手をやり過ごし、2人は協力しながら奥深い森の中に入っていった。少したつと森の中が急には暗くなり始め夜を迎えようとしていた・・・。


デアール)「今日はこの洞窟に隠れましょう」


レナルド)「わかった」


洞窟に入り2人は束の間の休息をとる。


アデール)「ポコちゃんどう?実況動画は盛り上がっている?」


2人は洞窟で一晩過ごす設定で就寝した段階でアデールはログアウトしバーチャル用のヘルメットを脱ぐ。


ポコ)「はいナノ、現在500万アクセス超えたナノ!」


アデール)「20分後に朝の設定で再開するとテロップ流して」


「わかったナノ」


ウィン)「ア、アデール様」


アデール)「面白いでしょこれ、実況動画の主人公がレナルドだもの」


「ええ、まぁ(困」


「休憩が終わったら20分後に再開よ」


マドック)「は、はい」


ポコ)「はいナノ」


アデール)「デアールはレナルドに好意をあからさまに持った設定に変更しましょう」


マドック)「了解しました」


カチャカチャとキーボードを叩き設定を変えるマドック。


ウィン)「アデール様・・」


アデール)「だって盛り上がるでしょ!」


ウィン)「・・・」


こうして始まったゲームとバーチャル、実況動画を利用した逃走劇は終盤を迎えるのだった・・。

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