第352話 オーランドに釘を刺したら、痛かったみたい。

アデール)「アーレイちゃま、見えました」


フローレンス)「ウッソ、私全然見えないわ」


まだ1キロ以上離れた段階でアデールは車列を確認する。


アーレイ)「そろそろ配置につきますか」


フローレンス)「はーい」


アデール)「ふふ、行きますね!」


インターを降りた車列がループを回り、直線部分に差しかかろうとした瞬間、死角から飛び出したアデールは道路の真ん中に仁王立ちを決めている。


アデール)「さあ、いらっしゃい!」


プップー!激しくクラクションを鳴らすシャトルはアデールを跳ね飛ばしそうな勢いだった。


アデール)「行くわよ!」


ブン!アデールは魔法を発動、すると周りは白い世界に包まれシャトルはそのまま動かなくなった。


オーランド)「何事だ」


SP)「女が道路を塞いでいます」


「だが、景色が消えたぞ」


「降りて確認します」


ガチャ、ガチャガチャ、マシンレーザーガンを持ち、護衛のSPが勢いよくシャトルから飛び出す。


SP)「なんなんだここは、真っ白じゃないか」


フローレンス)「ども!」


SP)「えっ?フローレンス王女?」


いきなり現れたフローレンスを見て一瞬躊躇したSP。


シュバババ、バシン!うわぁ!飛び出た数名のSP達は簡単にバインドの餌食になり身動きが取れなくなる。


アーレイ)「さて、ご挨拶と行きますか」


そして絶妙なタイミングでアーレイが現れる。


オーランド)「アレは、アーレイじゃないか!」


コンコン!アーレイは3台目のシャトルに近づき、窓をノックする。


アーレイ)「お話をしたいだけなのですがオーランド陛下」


オーランド)「絶対窓を開けるなよ」


運転手)「は、はい陛下、ですがシャトルが全く進みません」


グィ、グィ!運転手は懸命にスロットルを開けるがシャトルは微動だにしない。


オーランド)「なんなんだ、一体ここはどこなのだ」


アーレイ)「コンコン、開けないと窓を壊しますよ〜」


SP)「壊される前に開けますか」


オーランド)「駄目だ駄目だ、開けたら殺される!ヒィ〜」


オーランドは頭を抱え座席で小さくなっていた。


アデール)「アーレイひゃんお任せを」


アーレイ)「頼んだ!」


「頼まれました!」


ブン!無常にも運転手に精神魔法を施すアデール。


アデール)「ねぇ、窓を開けてくださらない?」


運転手)「はい」


ポチ、シューン、運転手は素直に窓を開けてしまう。


オーランド)「何故だ、何故開ける、うひゃ〜、殺される〜」


窓が開きアーレイと目が合うとパニックに陥るオーランド。


アーレイ)「酷いな〜、オーランド陛下殺しませんよ、ちょっとお話ししたいだけです」


オーランド)「本当に、殺さないの?」


情けない声になるオーランド。


アーレイ)「ええ、殺すならとっくに殺してますって」


オーランド)「護衛は何をしてるんだ!」


他の護衛車のSPは全員支配魔法で支配されじっとしている体だった・・。


アーレイ)「SPさん、降りてもらっていいかな」


SP)「はい」


アーレイがSPに声を掛けるとスライドドアが開き護衛2人が素直に降りていく。


オーランド)「ま、ま、待たんか!なぜアーレイの命令に従う」


アーレイ)「無駄ですよ陛下、魔法ですよ」


「魔法だと」


「ええ、そうなのですが念の為・・」


チャ!小さな拳銃がオーランドに向けられていた。


オーランド)「わ、わかった」


アーレイ)「アデールいいよ、解除して」


アデール)「はい」


シュン!真っ白い世界からいきなり現実世界に戻る。


アーレイ)「さて皆さん、シャトルを草原の方に移動してくれませんか」


運転手)「はい」


SP)「了解、少し揺れますよ陛下」


アデール)「ぷっぷ!」


アーレイ)「おい、あのSP支配魔法かけてないだろ(小声」


アデール)「ええ、だから笑ってしまいました(小声」


フローレンス)「バインド解きますね」


アーレイ)「乗り込んだらお願いね」


フローレンス)「はい」


アーレイとアデールはオーランドのシャトルに乗り込み、車列を人目に付かない場所に移動させたが、オーランドは終始黙り込み目線を合わせてなかった。


アーレイ)「さて陛下、初めましてですね」


オーランド)「ああ、実際に会うのは初めてだな」


シャトルから降りたアーレイ達はSP達に話が聞こえないところまで離れる。


アデール)「こんにちはオーランド、私もお初ですね」


オーランド)「君は誰だ?」


シュン!偽装を解き素顔を晒すアデール。


オーランド)「え゛・・ま、まさか」


アデール)「はい、アデールですよ」


オーランド)「何故、女王がここに」


アデール)「いや〜ん、旦那様ですよアーレイちゃまは」


フローレンス)「もう、私”も”忘れてませんか!」


隣に立っていたフローレンスが文句をつける。


オーランド)「フローレンス王女ですよね」


フローレンス)「ええ元王女ですよ、ねっダーリン!」


アーレイ)「お前らどう言う自己紹介だ!」


じっと聞いていたアーレイは思わず返してしまう。


オーランド)「それで話とはなんだ(呆れ」


アーレイ)「すみませんね〜、うちの嫁達が〜」


「・・・(呆れ」


「話を進めますね」


「ああ」


オーランドはこの間の抜けたやり取りを見て呆れていた・・。


アーレイ)「オーランド陛下、ディスティアが陥落したらどうなさいますか?」


オーランド)「なんだ、その突飛な話は」


「私は本気ですよ、・・オーランド」


「・・・」


眼光鋭い真剣なアーレイの目を見た瞬間、黙り込むオーランド


アーレイ)「為政者なら当然考えますよね最悪の場合の対応策を、それが現実的では無くとも」


オーランド)「そ、それは、その時になって考える」


アーレイはオーランドに危機管理能力がない事はわかっているので脅しをかけていく。


アーレイ)「私としてはもう少し実りのある話が出来ると思ってましたがとても残念です」


オーランド)「残念だと、なんとでも言え!」


憤慨してるオーランドはアーレイを睨みつけた。


アーレイ)「分かりました、このままでは埒が明かないので、私の考えをお教えしますね」


オーランド)「ふん、一応聞いてやる」


「是非とも今後の対応の参考にしてくださいね」


「ふん!余計なお世話だ!」


「ディスティア陥落後、アーヴィン王族は全てデルタ王族に入れ替えます」


「なんだと」


驚愕の表情に変わるオーランドはアーレイの言葉を信じられないようだ。


アーレイ)「また、王族に縁のある貴族は取り潰しの上、監禁、処刑だ」


オーランド)「横暴だ!由緒あるアーヴィン王国を潰す気か」


「ええ、火種を抱えたままでは星団統一後、また戦火を交えることになりますので」


「それは、その考えは本気なのか」


「それは陛下次第と申したらどうなさいますか?私も有望な若い王子2人を処分するのは忍びないのですが」


少し声のトーンを低くし、本格的に脅す雰囲気を作り出すアーレイ。


オーランド)「嗚呼、ジャスティンとロミオが・・」


アーレイ)「ええ、国民感情もありますので貴方は死刑にはしません、ですが2人を残すと直系の血筋が残ってしまいますので」


「そ、それは避けられないのか?」


「はい当たり前です、もちろんエリサ元王女も含まれています」


「エリサ・・・エリサが何をしたって言うんだ、何故だ、王籍から抜けたんだぞ」


「王族直系、元王女のエリサは不安材料でしかないからです」


「そんな、一般人落ちしたエリサも対象になるのか」


「直系の王族は全て処分しないと、反旗を翻した場合”神輿”に担ぎ上げられますので」


「しょ、処分・・・全て処分だと」


「はい、処分と遠回しに言っていますが、普通銃殺刑ですかね」


「・・・(黙」


わざと死刑の言葉を使わず、亡き者にする意味を強調し焦土感を煽るアーレイ。


アーレイ)「元に、アーブラハム王族は生きながらえてますよね、ラインスラストの庇護の中」


オーランド)「わ、私に何を望むのだ、王子が殺されないように何をすれば良いのだ」


「ご自分でお考えください、貴方はアーヴィン最後の王族、それも最悪な愚王として歴史に残ります」


「ヒギャー、勘弁してくれ、無理だ無理だ俺にはそんな重圧耐えきれない」


地面に膝を付き落胆するオーランド。


アーレイ)「はは、その情けない姿は最高ですね、アーヴィン最後の愚王として生きながらえてください」


オーランド)「貴様!」


「お話は以上です」


「お前は俺を脅しに来たのか!」


「まさか、最悪の結果にならないよう未来予測を申し上げただけです」


「ふざけるな、調子に乗りおって!ギャ!く、苦しい・・」


ブン!アーレイの嫌味に反応し高圧的な態度になったオーランドを威圧で黙らせるアーレイ。


アーレイ)「アンタ勘違いしてない?触らなくても殺せるんだよ、わからないかな?」


オーランド)「く、苦しい」


オーランドは絞められてる感覚に襲われているのだろう、首を押さえ屈んでいた。


アーレイ)「そうだレン、このまま陛下と王子を殺して帰ろうか?」


フローレンス)「キャ!アローで狙撃しますね、魔法はシールド抜けるので」


オーランド)「ガハァ、・・・ま、魔法だと」


アーレイ)「ワリィ、このままだと死ぬよね」


シュン!死ぬと困るので威圧を解くアーレイ。


オーランド)「ハァハァ、何だこの力は」


アーレイ)「人外な力だろ、けどなこの力を使い支配すると必ず反発する、だからわざわざ話をしに来たんだ」


「き、君の言いたい事は理解した、王子は殺さないでくれ」


シュン!いきなりフローレンスのアローが出現!


オーランド)「ギャー、痛い痛い」


フローレンスが繰り出したアローがオーランドの手の甲に突き刺さる。


フローレンス)「甘いね王様、そんな頼み方じゃ無理だね」


オーランド)「俺が、俺が何をしたって言うんだ・・」


腕を組み悪女を演じるフローレンスは意外に似合っていた・・。


オーランド)「嗚呼・・・痛みが引く・・・」


しょわ〜ん!治癒魔法で傷の治療と痛みを取り除くアデール。


アデール)「もう、レン痛くしちゃダメでし」


オーランド)「アデール、貴方は傷の手当てをしてくれるのか」


「ふふふ、アーレイ様はまだ貴方を殺せとは命令していませんので」


冷たく言い放ち、流し目でオーランドを脅すアデール。中々皆さんいい演技っぷりだ!


オーランド)「ヒッ・・殺さないでくれ」


アデール)「それはあなた次第でしょ」


オーランド)「わかった、王子は殺さないでくれないか」


アーレイ)「よく、自分の頭で考え行動するんだな」


「わかった・・」


落胆し座り込んだオーランドは憔悴しきっていた、これ以上脅すのは意味がないのでポコを呼ぶ。


アーレイ)「ポコ、引き上げる時間だ」


ポコ)「ナノ!」


キーン、甲高い音と共に青い空のに白い点が浮かび上がり、急激に大きくなる。


ゴワァ!ビュー、一気に垂直に降りてきたベクスターはいきなり反転しシャトルの脇に止まると反動で強風が吹く。


アーレイ)「それではオーランド、よく考えて行動することを勧めるよ」


オーランド)「・・・」


アデール)「忠告として申し上げますが、ディスティアに今回の事を報告するとディーデリヒ准将と同じ道を辿りますよ」


「ヒッ!」


ディの話はオーランドの元にも伝わったのだろう、完全にビビっていた。


フローレンス)「ふふ、次は頭を撃ち抜きますからね」


オーランド「や、やめて」


3人はタラップを上りベクスターに乗り込む。


アーレイ)「では、また」


シューン、ベクスターのハッチが閉じながらアーレイはオーランドに最後の言葉を言い放つ。


オーランド)「嗚呼、俺はどうすれば良いのだ・・」


情けない顔をし途方に暮れるオーランド、この一件が原因でジャスティンに王権を譲る決断が加速する様になる。


SP)「陛下、王宮に戻りませんか」


オーランド)「ああ・・」


ゴワァ!ズドド、ベクスターは急加速し青い空に溶け込んで消えて行くと、ドーンと音速を超えた証が終わりを告げるかのように鳴り響く。


ーー


アデール)「レンの演技は真に迫る悪女でしたね〜」


アヴィットホテルに移動した4名は個室でのんびりお茶をしていた。


フローレンス)「うふふ、私が痛みを与えアデールが優しく接する振りをしてオーランドを突き落とす」


アデール)「ふふ、2人の連携でどん底に落とせました!」


ポコ)「わわわ(ガクブル」


フローレンス)「悪女って、一度演じてみたかったですよ〜」


アーレイと連携してアデールとレンはオーランドを精神的に追い詰め他のだった・・。


アーレイ)「2人とも夜は悪女だろ!」


フローレンス)「もう、嫌ですわアーレイ様!」


バシッ!フローレンスに肩を叩かれたアーレイ。


アーレイ)「こら!」


ポコ)「惚気・・ダノー!」


ロミオ)「コンコン、ロミオです」


アデール)「どうぞ〜」


アーレイ)「おお、背が伸びたな」


ロミオ)「お久しぶりですアーレイ様」


まだ成長途中なのだろう、顔は凛々しくなり身長も随分伸びたロミオ。


アーレイ)「久しぶりだねロミオ」


ロミオ)「はい、お会いしたかったです」


フローレンス)「初めましてロミオ王子」


綺麗なカーテシーを決めるフローレンス。


ロミオ)「・・・・・(呆」


フローレンスを凝視して固まるロミオ、相変わらず美人には滅法弱いらしい・・。


アーレイ)「こらロミオ、俺の妻に手を出すなよ」


ロミオ)「はっ!すみません!」


フローレンス)「うふふ、可愛いね!」


ロミオ)「。。。。。(赤面」


真っ赤になるロミオ、まだ女は出来てないのか?


ロミオ)「ジャスティンは政務で抜けれないので代わりに私が来ました」


アーレイ)「陛下には悪いがキッチリ釘を刺したから」


「はい、ジャスティンから聞いています」


「確か君はアーヴィン軍を手中に収めてるよね」


「はい、デルタとはできる限り交戦しないように指示を出しています」


「これを君に渡す」


アーレイは識別チップをロミオに渡す。


ロミオ)「これは識別用チップですよね」


アーレイ)「そうだ、これをコピーして艦隊全ての船に装着すればミサイルは当たらないし、砲撃のロックオンの際に警告が出るようになる」


「えっ、本当にもらっても良いのですか?」


「その識別信号を出した状態で、アーヴィン軍が撃ってもデルタの船には当たらないし、デルタも当たらない」


「それだと使うタイミングが重要ですね」


「そうだ、最初から使うとディスティアにバレる」


「わかりました、その時が訪れたら使わせて頂きます」


「再来週、ディスティアが動き出す、このタイミングで攻略するつもりだ」


「ほ、本当ですか・・」


その話は聞いてなかったのか驚くロミオ。


アーレイ)「ああ、間も無くディスティアから連絡が来る筈だ」


ロミオ)「応援要請が来るのでしょうか」


「俺の考えだと君らはディスティア防衛隊として組み込まれるだろうな」


「だから連絡が遅いのですね」


「情報漏洩を一応は気にしているだからじゃ無いのか」


「一応ですか?」


「公表された内容と、裏組織に流れた内容に乖離がありすぎる、わざと漏らしたんだと俺は考える」


「罠に飛び込むつもりですか?」


「そうだね、危険な罠を張ってるね」


軽く余裕を見せ話すアーレイ。


ロミオ)「楽観的ですね、大丈夫なのでしょうか」


アーレイ)「あいつらの考えを読んで対応するだけだよ」


「さすがです」


「ロミオ頼んだよ、ジャスティンにもよろしく言ってくれ、動く時は一気に進むからな」


「はい、星団統一を目指しましょう」


ギュッっとロミオと固い握手をするアーレイ。


アーレイ)「それじゃ俺は行くよ」


ロミオ)「はい!」


ロミオの目はやる気に満ちていた、その目を見てこのまま任せても大丈夫だろうとアーレイは思った。

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