第351話 統一に向けての根回し。

アーレイが次に向かったのは、なんとカルネ国だった・・。


ジャクリーヌ)「アーレイ様、お急ぎの用件とは・・」


アーレイ)「ディスティアを攻略する」


「いまなんと、ディスティア攻略ですか!」


「ああそうだ、だから急いでバルターに会いにきた、作戦は既に発動してる、時間がない」


「えっ・・もう、現在バルターは首都を離れ、地方遊説中です」


その言葉を聞きジャクリーヌは驚愕の表情だ。


アーレイ)「今日、会えるか?緊急の用件だ」


ジャクリーヌ)「分かりました一緒に行きましょう」


「悪いね、君の艦隊が運命を握るかもしれない」


「はい・・」


フルフルとジャクリーヌの手が少し震えていた・・・。


ジャクリーヌ)「少しお待ち下さい」


アーレイ)「わかった」


ジャクリーヌは慌てて島の中の通信施設に行くと、いきなり作戦を発動。


ジャクリーヌ)「私よ、全艦隊出撃準備!コード・アルファ・ディデイ」


士官)「わ、わかりました!」


”コード、アルファ・ディデイ”は来るべき決戦に備えた作戦名だ、ジャンプが出来るあの戦艦を中心にした特別艦隊編成し、密かに数隻ずつ出港する秘密の作戦名だ。


士官)「極秘作戦発令だ!関係者全員に打電しろ!」


部下)「了解しました」


ピッ!戦艦に関わる全ての隊員に緊急命令が送られた。


<アルファ・ディデイ発動>


隊員)「うむ、その時が来たか」


発令され、それを受け取った隊員は静かに動きはじめ、そしてジャクリーヌとアーレイはバルターに元に向かった。


ジャクリーヌ)「ポコ、目的地はあの島よ」


ポコ)「ナノ!」


アーレイとジャクリーヌが目指すのは北極点近くの大きな島だった。


ジャクリーヌ)「翼の結氷に注意して」


ポコ)「了解ナノ!」


ゴーと4発エンジン音を響かせ空港に着陸する為、高度を下げ始めたベクスター。


管制官)<アイランドコントロール、視界ゼロの為着陸不可能、繰り返す着陸不可能>


ポコ)「こちらDMB230ベクスター、これより着陸する」


管制官)<滑走路は吹雪で視界ゼロだ、直ちに中止せよ>


ジャクリーヌ)「こちらジャクリーヌ、緊急の要件よ今から着陸します」


管制官)「わ、わかりました!」


ジャクリーヌが名前を出すと一発で着陸許可が下りた。


ポコ)「ルンルン、ベクちゃんなら大丈夫ナノー!」


ギューン、ガタガタガタ、大きく揺れながらポコが操縦するベクスターは誘導路を低空飛行しスポットに難なく着陸した。


アーレイ)「お疲れポコ」


ポコ)「ナノ!簡単だったナノ!


吹雪が凄く計器飛行と特殊カメラによる着陸を当たり前に決めたポコ、流石デルタトップガン!


管制官)「あのふざけた機体マジで着陸しやがった」


レーダー手)「凄腕パイロットですね」


「ああ強風の中、全くブレずに移動して着陸できるんだ?」


驚く管制官達は管制塔から、悪戯描きされたベクスターを見下ろしていた。。


ジャクリーヌ)「お急ぎ下さい」


アーレイ達は出迎えのシャトルに乗り、バルターの宿舎に向かった。


バルター)「久しぶりだなアーレイ、急用と聞いたのだが」


アーレイ)「ども、悪いね押し掛けて、始まったよアノ戦艦を借りるぞ」


「なんと、本当なのか?」


「デルタは既に作戦発動してる」


「わ、わかった、ジャクリーヌを使いたまえ」


ジャクリーヌ)「バルター様、最後の決断はお願いします」


バルター)「・・うむ」


頼りない返事のバルター。


ジャクリーヌ)「艦隊は既に準備に入りました」


バルター)「も、もうか、早く無いか」


「今から数隻ずつ出撃しませんとバレてしまいます」


「うむ、任せる」


じっと聞いていたアーレイが口火を切る。


アーレイ)「バルター、最後は貴方が宣言しないと星団はカルネを認め無いからな」


バルター)「わかってる」


ジャクリーヌ)「頼みますね」


バルター)「ああ・・」


アーレイ)「私は急いでるので、ではまた」


バルター)「・・・」


バルターの顔色は急速に悪くなっていた。最後の決断を迫られたのが原因だ。


アーレイ)「ジャクリーヌ、アレは判断を間違えるぞ」


ジャクリーヌ)「はい承知してます、艦隊出撃後は常に近くに待機しています」


「そうかそれが最善策だ、俺かクリスが連絡して来たら迷うな」


「はい、わかりました」


「それと今からアーヴィンに入る、認識コードをくれないか」


「はい、仰せのままに」


そして次にアーレイはアデールと一緒にアーヴィンに入るので、フローレンスに連絡を取り連れてくるように頼んでいた。


アーレイ)「フローレンス!急いでる、アデールをカルネに連れて来てくれないか」


フローレンス)「はい、アーレイ様、わかりました!すぐ向かいます」


「島で待ってる」


「はい」


ーー


フローレンス)「アーレイ様、何があったの・・」


アーレイの口調から異変を感じるフローレンスだった。


ーー


アーレイ)「ポコ、島に戻るぞ」


ポコ)「わかったナノ」


島に戻ったアーレイは次にジャスティンと連絡を取っていた。


ジャスティン)「お久しぶりですアーレイ准将!」


アーレイ)「久しぶりだね、いきなりで悪いがディスティアが動いた」


「来るべき時が来たのですか」


「そうだ、デルタは作戦を発動した」


「わかりました、まだセオドール閣下から連絡が入っていませんが準備を進めます」


「あと数時間後、アーヴィンに入るつもりだ」


「えっ、本当ですか」


驚くジャスティンの口調から困惑が読み取れる・・。


アーレイ)「オーランド陛下が公務に復帰して1年程か」


ジャスティン)「はい、実務はロミオと私が行っていますので問題は無いのですが」


「あれだろ、相変わらず風見鶏で困っているんだろ」


「相変わらず直球ですね」


「今回、君と直接会うことはないが、陛下に伝えてほしい事があるんだ」


「はい、何でしょう」


「アーレイが直接乗り込んで陛下を亡きものにすると」


「ま、まさか・・」


「はは、勘違いしないで隠れ家に向かわせてくれないか?少しお話ししたいだけだ」


「わかりました、またとんでもない事考えますね」


「ここで直接釘をさせば、王位を君に譲る気持ちが強くなるはずだ」


「・・・」


黙り込むジャスティン、覚悟はできているようだがやはり不安なのだろう・・。


アーレイ)「到着したら連絡を入れる」


ジャスティン)「わかりました」


ーー


ヘルムート、エスモンド、スタンレー、ローデリヒ、ディスティア軍の中枢を担う4人は総統府に呼ばれていた。


セオドール)「諸君を呼んだのは、デルタ壊滅作戦を今から発動するためだ」


ヘルムート)「私が作戦内容を説明しよう」


エスモンド)「うむ」


「捕獲したデルタの戦艦を使い、船の墓場で射撃訓練を行うと情報を流した」


「アレか、ジョナス准将の船か」


「そうだ、公には壊れた戦艦を処分するとしか発表してないが、詳細は裏の情報屋に流した」


「その場所にデルタの艦隊を誘い込むと」


「我々は廃船を背中にデルタを迎え打つ、ジャンプは阻害するのであの忌まわしいスキップジャンプは使えない」


「そう上手く行くのか?」


「その為に長い間仕込んで来たのだ、廃船を背にすれば後を取られないし全面に可変シールドを張れば絶対負けない!」


拳を握りしめ力説するヘルマン。


エスモンド)「待ち受け艦隊は誰だ?」


ヘルムート)「現在、戦力はほぼ元に戻った、デルタにカウンターの艦隊は出せないが総力戦になる」


「まさか、本星防衛を無くすのか」


「いや、防衛は君に任せる、予備隊とアーヴィンの艦隊を使いたまえ。スタンレーの艦隊がデルタの船を曳航する」


「それで君は待ち構えると」


「そうだ4艦隊が待ち構え、後方からローデリヒの艦隊が挟撃だ」


「君が待ち構えの総司令官だから他の士官を呼ばなかったのか」


「それもあるし、情報漏洩を警戒した」


「ふむ、俺はなあのデルタの空母が気になる」


「君は見たんだろ何か不安か?」


「ああ、とてもシンプルな船だったよ、黒くシンプル過ぎて何か隠してる気がする」


「今回の作戦には出て来ないだろうよ」


「そうだと良いが、あれは相手にしたくないな」


「珍しいな君がビビるなんて、ふん、歳とって弱気になったか」


「それは無い!長年の感だよ、あの黒い船を間近で見れば誰もそう思う」


こめかみの血管が破裂しそうな勢いで拒否るエスモンド。


ヘルマン)「それでは只今より作戦発動、決戦は再来週だ」


エスモンド)「何故、そんなに間が開くのだ?」


「隕石に取り付けた装置の燃料の追加だ、作業の予定と連動して作戦を遂行する」


「わかった」


今回の作戦の要となる隕石群に取り付けられた装置類は、ヘルマンが考えていた決戦の時期が想定より遅くなり燃料の補給が必要になった為だった・・。


ーー


アーレイ)「ジャクリーヌ悪いね、ブラッドはフォーレストで力を使い果たし出てこれない」


ジャクリーヌ)「流石に作戦発動中は控えますわよ」


「ハハハ(汗」


キーン、テラスでお茶を飲んでいると上空をローレンスが通過した。


ポコ)「到着ナノ」


アーレイ)「迎えに行ってくるよ」


「ポコが行くナノ!」


「任せるよ」


「はいナノ」


ポコが2人を迎えに行き少し経つと普段着姿のアデールと女子大生風の格好をしたフローレンスが現れる。


ジャクリーヌ)「か、可愛すぎる・・フローレンス様」


アーレイ)「うむ、なぜこの格好かわからん!」


少し短めの黒いフリルスカートに可愛らしい白のブラウスを羽織っていた・・。


フローレンス)「アーヴィンに入るのですよね!私も同行します」


アーレイ)「ええマジですか、貴女、感が良すぎ!アデールと2人で入ろうかと思っていたのだが」


「アデールと共に戦います」


「いや、戦いじゃ無くてお話しするだけなんだが」


「もう決めました!プンプン!」


「なぜそこで怒る?」


「だって行った事ないし・・離れたくないし・・」


「わかりました・・」


「よろしい!」


一度決めたら中々譲らないフローレンスを説得するより経験を積む意味で連れていく選択をしたアーレイ。


ーー


管制官)「認識コードKMV255ベクスターそのまま通過してください」


アーヴィンの防空システムが変わり、大気圏突入前に認識コード読み取ると、事前に入国者登録が完了してる場合そのまま好きなところに飛んでいける。


ポコ)「アーヴィンコントロール了解!」


アーレイ)「カルネの登録だとこんなに簡単に入れるんだな」


フローレンス)「ジャクリーヌ様の仰った通りでしたね」


アーレイ)「さて、ジャスティンに連絡して、オーランドを追いかけるか」


アデール)「ふふ、正面から参りますか」


アーレイ)「やる気な姫にお任せで」


フローレンス)「大量のアロー攻撃で足止め、SPが出て来たところ”で”バインドでよろしいでしょうか」


アーレイ)「”で”の使い方が相変わらずおかしいぞ」


アデール)「アローの使い方もおかしいですね、勿体ない」


フローレンス)「ババっとやりましょうよ!」


アーレイ)「攻撃的になったな・・」


「そりゃミーシャとジャガーに剣技を教えてもらって、アーリー様に攻撃魔法の使い方を伝授してもらいましたので」


「なぜサフロンに教わらない!」


「だって・・アーリー様のやる気を見たら」


「あー、暇なんだ、だから夕食の後ゴソゴソ何かしてたんだ」


「ええ、ほぼ毎日色々教えて頂きました」


アーレイ)「ポコ、君も何か教えてもらっているだろ」


ポコ)「。。。」


黙って操縦桿を握り降下の準備を始める。


アーレイ)「最近ポコの様子も変んなのだが」


ポコ)「着陸するナノ(赤」


恥ずかしいのかポコの顔が真っ赤だったのでこれ以上突っ込むのをやめるアーレイ。


アーレイ)「ジャスティン聞こえるか?」


ジャスティン)「はい、聞こえます」


「ナー、に連絡を取って隠れ家の場所は聞いている」


「山の中腹では無く、旧司令本部跡地に向かうはずです」


「了解した、あとは頼むな」


「はい」


ジャスティンはアーレイの連絡を受けオーランドの元に出向く。諜報部には既に話してあるので、情報共有は問題なかった。


ジャスティン)「陛下、アーレイが入国した模様です」


オーランド)「なんだと、本人なのか」


「はい、諜報部から連絡が入りました、早急に逃げてください」


「危ないのか?」


「はい、諜報部の追跡を逃れ潜伏中の事」


「大丈夫だろ、奴1人だけだ」


諜報部員)「お話中失礼しますジャスティン王子、追加報告です」


ジャスティン)「なんだ、そのまま述べてみよ」


もちろんこの報告はジャスティンが考えたシナリオに従い行っている。


諜報部員)「はい、デルタのアーレイは観光目的として偽装して入国、地下組織と頻繁に連絡を取り武器を入手した模様」


ジャスティン)「なんだと、武器入手だと」


「はい、滞在したホテルには王宮の見取り図と狙撃ポイントが明記された地図が残されてました」


オーランド)「そ、そんなわかりやすい事をするのか?」


諜報部員)「特殊部隊がホテルに踏み込む直前に慌てて逃走したようです、私物も残ってました」


ジャスティン)「陛下安全確保の為、隠れ家にに向かって下さい」


オーランド)「わかった、俺は今から旧司令本部に向かう」


「わかりました、あとはお任せください」


「ああ、頼むなジャスティン」


オーランドは逃げ去る様に王宮を後にした。


ジャスティン)「それじゃあとは頼んだよ」


諜報部員)「わかりました」


ジャスティンは護衛を含め軍、警察全てを掌握していたのだった。キーン、見通しの良い草原に降り立つベクスター。


ポコ)「この辺りでいいナノ」


アーレイ)「ああ、下ろしたら上空で待機してくれ、車列が来たら電波阻害も頼む」


「わかったナノ」


3人はタラップを降り、少し離れた幹線道路に向かって歩き始める。


ジャスティン)「10分前に王宮を出発しました」


アーレイ)「ありがとう、終わったら連絡する」


「わかりました、終わりましたらアヴィットホテルに来ていただけますか」


「了解した、それではまた」


アーレイ)「ジャスティンから連絡が入った、そうだなあと20分ほどでこの道を通る筈だ」


フローレンス)「わかりました」


アデール)「足止めは私が、バインドはフローレンス」


フローレンス)「わかりました」


アデールの作戦は単純だ護衛車が通過する際、空間魔法で車列を異空間に飛ばすだけだ。後はフローレンスがバインドで護衛の身動きを止めればいい。


アーレイ)「さて、その作戦ならこの脇道が丁度いいだろう」


アデール)「はい、このカーブは減速しますので怪我人は出ないかと」


その場所は幹線道路と一般道が交わる合流点だ、インターの形状をしてるので必ず合流部分で減速する、そこを狙うのだった。


アーレイ)「そろそろかな」


双眼鏡を覗くアーレイは数台固まって走る黒いシャトルを確認した・・・。

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