ディスティア攻略編。

第350話 ディスティア攻略開始!

アーレイがフローレンスと結婚して2年の月日が流れ、デルタに呼ばれ9年経ったある日の作戦司令部。


クリス)「アーレイ、やっと戦艦と空母が揃ったな」


アーレイ)「インターセプターの調整と生産、空母の調整に時間を取られ過ぎた。けど業火級、暴虐の船体を全て更新できたのはよかった」


「少し形が変わっただろ」


「勿論実戦で集めたデータを参考に少し作り変えた。前方最先端部分の強度を更に上げて、機甲歩兵は生存率向上の為、侵入通路を手前にしたよ」


「パネル砲は無くなったのか?」


「船体に一体化したよ、成形技術が飛躍的に向上したから形ごと変えた」


暴虐、業火級は実戦で得たデータを元に外装を作り直し、主砲周りも大幅改良を加えほぼ新造艦と言っても差し支えないほど改修を行った。


クリス)「ますます、何処から撃ってくるかわからないな、第9艦隊はこれで全て揃ったんだろ?」


アーレイ)「ああ揃ったよ。追加配備したインターセプターの配備がもう少しで終わる所だ」


「あれは凄いな5000トン級以下5人乗りの突撃艦だろ」


「突撃言うな、戦闘艦と言ってくれ」


「ポコの乗り方見ていると突撃している様にしか見えんぞ」


「あれはあれでちゃんと弾をさけているんだよ。獣人達の反射神経は凄いから」


「隊長はポコなのか?」


「ポコは立ち上げ要員だ。あいつは暴虐の専属パイロットだ」


「そうか、さすがに忠犬は保護するよな」


「ポコが暴虐を動かせるのに最適なだけだよ。みんな暴虐に乗りたがらないんだ、デカくて素早いから怖いってさ」


アーレイは獣人の特性を生かした迎撃用の小型特殊攻撃船インターセプターの性能を上げ、動体視力、反射神経の良さ、耐G特性が高い身体。人間では敵わない部分を更に特化して作り上げた。


当初は空母の護衛専用と考えていたのだが実戦テストすると、強靭な外装、素早い動き、強力な主砲を備えていて、数で飽和攻撃すると駆逐艦などでは全く歯が立たなかった。インターセプター10隻と20万トン級戦艦1隻の割合で十分戦えるのだった。


1万トン級以下の船に関して星団法では数量規制されていなかったので、アーレイは量産に適したこの船体外殻部分だけ500隻分、その中からエンジンなどの主要装備品を取り付けた200隻を建造していた。


クリス)「第9艦隊には何隻配備するんだ?」


アーレイ)「取り敢えず200隻、戦艦認証は既にとってあるが実戦で使用したらすぐに星団法で規制しろと騒ぐと思うよ。だから船体だけ500隻作らせた」


「パイロットは全員獣人か?」


「ほとんどそうだよ、追加募集したらパイロット希望が500人も集まって苦労してんだよ。適性検査厳しくして400人まで減らしたけどね。これで第9艦隊のパイロットは700人を超えたよ」


「それは凄い数だな」


「ああ、だが他の艦隊に配属できるのは1割もいない。俺の艦隊じゃないと命令聞かないから」


「猛獣使いか・・・」


「ふん!」


ーー


次の日。


クリス)「アーレイ、ディスティアの作戦の一部が判明したぞ」


アーレイ)「おはようクリス、それで?」


「いいニュースとかなり悪いニュースが入ってきた、どっちを先に聞きたい」


「何だその、かなり悪いって、良い方からお願い」


「わかった」


ポチ!アーレイとキースのタブレットに情報を送ったクリス。


アーレイ)「ふむ、これか」


クリス)「君が上げた情報を精査し哨戒艦で探査したら、クロウ星団とトレミー星団の間の端にあるアステロイドベルト地帯があるだろ」


「船の墓場か?」


「そうだ、そこの隕石群に推進器を取り付けている」


キース)「隕石群を使った作戦なのかな?」


クリス)「アーレイなんで判明したんだ?」


アーレイ)「ジャクリーヌからの情報だよ。組み立て作業に従事してた獣人達が戻って来た。彼らは推進器の取り付け作業をしていたんだよ」


クリス)「だから隕石群の探索を依頼していたのか、徹底しているな」


アーレイ)「流石に場所の特定は作業員の聞き取りじゃわからんからな。情報漏洩に神経を尖らせていて移動中の船の窓を塞いでいたって。もちろんモジュールとかスマホは持ち込み禁止だってよ、けど、間抜けだよね隕石群って分かれば後は探せばいいだけだから」


クリス)「どうやって使うんだろ?」


キース)「1箇所に追い込むためじゃないの?」


アーレイ)「ご丁寧にその隕石にジャンプ阻害装置もセットしたんだってさ、けどインターセプター使えば問題ないけどね」


クリス)「スキップジャンプ使わせたくないのね、確か船の墓場って侵入経路が限られていたよな」


キース)「星雲とか超質量恒星とかの影響で二方向位しかない筈だ、昔の戦艦とか凄い数が放置されているぞ」


クリス)「だから船の墓場なんだけどね、数は3000隻弱じゃなかったけ?軍艦以外は確実に遭難するよ」


アーレイ)「なんでそんなに放置してんのよ」


クリス)「昔の戦艦は放射能汚染が進むと解体に手間がかかるからだよ」


アーレイ)「除染しないの?」


クリス)「逆、除染するのが大変なの。業火級は恒星近くで作るから放射能汚染するだろ、だが内部構造物が少ないから簡単に除染できる、けど大型戦艦の内部をチマチマ除染してたら作業員は何人いても終わらない」


キース)「恒星に落とせば?」


クリス)「大型の核融合反応炉やなんやらバンバン恒星に落としてみろ、大変な事になるんだぞ


アーレイ)「なるほどね〜、恒星が爆発したらとんでも無いことになるな」


処分の為に恒星に落下す事は星団法で禁止となっていた。熾烈の場合は戦闘中なので除外されている・・。


クリス)「当時は、だから墓場まで持っていって、コア抜いて放置した方が楽だよね解体作業も必要ないし」


アーレイ)「最近は放置してないよな」


「そう、今は機密保持のため各国自前で解体するのが主流だけどね」


「で、わかってるのは誘い込んで隕石使って退路を塞ぐのかな」


「まあそうだろうね、放置している船を背中にすれば後ろを取られることも無いし」


「なるほどね〜、あっ!」


「どうしたアーレイ、何か思いついたのか」


いきなり作戦を思いつくアーレイ・・。


アーレイ)「そうなんだけど無理かな・・・ちょっと技研に行ってくる」


クリス)「おい、悪いニュースは聞かないのか」


技研に向かって歩き出していたアーレイが振り返る。


アーレイ)「あっ、そうだった、わかったよそれで」


クリス)「ジョナス准将が乗っていた船が見つかった」


「何だと!どこだ、どこで見つかった」


いきなり表情が変わるアーレイ。


クリス)「落ち着けアーレイ」


アーレイ)「すぐに助けに行かないと」


「こら、冷静な君らしくないぞ」


「ああ、悪かった」


アーレイはルアナの悲しむ顔が浮かび思わず取り乱してしまった。


クリス)「それがな、そのアステロイドベルト地帯で公開演習の的にするそうだ」


アーレイ)「何でだ、そもそも見つかって調べが終わった船は、所属国に連絡するのが決まりだろ」


「あいつら船名を消し去って、更にレコーダーの類も破壊して不明艦として処理したんだよ」


「何故わかった」


「君が戦闘用に開発したカプセルだよ」


「・・・・」


ムスッと不機嫌になるアーレイ・・・。


クリス)「いや、逆にそれが元で判明したんだ」


アーレイ)「あれか、パーツか」


「そうだ、生命維持装置があるだろ、あの部品はかなり特殊で汎用品のパーツが使えない」


「それは知っている。数年前ディの情報で追いかけたが見失った、前回は完全にまかれたぞ」


「多分、耐用年数が過ぎまた注文したんだ。今回は特殊な発信機を取り付けたのさ、箱を開けると作動するタイプ、それと売人に直接追跡マーカー」


「なるほど、前回の教訓を生かしたのか、だが阻害されなかったのか」


「今回は特殊な追跡装置だ、常時発信タイプじゃない。行動履歴を数日前から追っていて、大まかな場所を先に調べ上げていた」


「それで地域を絞って微弱な電波を拾ったのか。わかった、それでその船はいつ演習に使われる」


「そんな所だ、演習は3週間後だ」


「今から艦隊を編成してギリギリじゃ無いか」


「ああ、相手もそれを狙って情報を流してきた。慌てて編成した軍隊は弱いからな」


「クッソ、クッソ」


ガンガンガン、アーレイが珍しく怒りを露わにして机を殴る。


クリス)「アーレイ、君の気持ちはわかる。だが急いで準備すると失敗する可能性がある」


アーレイ)「わかっている、わかっているよ!」


「アーレイ!」


「あああクッソ、ディスティアの連中め!」


「それでだ、君の判断を仰ぎたい!」


「決まっているだろ、準備できない部隊は置いていく。デルタの守備でもやらせるよ」


「わかった、だが準備ができなかったら作戦は中止だからな」


「クリス!お前に言われなくてもそれくらいの判断は冷静にするつもりだ!」


「アーレイ。。」


怒ってはいるが冷静なアーレイを見て心配するクリス。


アーレイ)「ちょっと、フォーレストに行ってくる」


クリス)「ん、何しにいくんだ」


「今はまだ言えない!」


「・・・」


覚悟を決め厳しい表情のアーレイを見て一瞬クリスが固まる。


アーレイ)「作戦は俺の頭の中だけだ」


クリス)「わかったよアーレイ、既に考えていたんだろ」


「ふふ、あとの準備は任した、桜花の整備を進めてくれないか」


「ああ、分かった行ってこい」


そしてベクスターを飛ばしフォーレストに向かったアーレイ。


侍女)「ア、アーレイ様お待ちください、女王はまだ」


アーレイ)「うるさい!早く会わせろ時間がない!」


完全アポ無しでいきなり城の駐機場に降りたアーレイはイラついていた。


侍女)「そう言われましても」


ブン!いきなり威圧を掛けるアーレイ。


侍女)「ギャ!」


アーレイ)「おいお前、いつから俺に反抗できるようになった」


侍女)「す、すみません。すぐにお取次ぎいたします」


珍しく激おこアーレイだった・・そして自室でのんびり食事中のウィン。そこにタタタと慌てて走り込んでくる侍女。


侍女)「ウィン女王様」


ウィン)「何よ、朝食の最中でしょ」


侍女)「アーレイ様が緊急の要件で取次げと、物凄くお怒りになっています」


ウィン)「えっ、本当に」


「はい、今まで見たことのない怒りようです」


「わ、わかりました。すぐに通して頂戴」


「は、はい」


謁見の間に入ってくるアーレイの表情は怒りで満ち溢れていた。


ウィン)「・・・(ありゃ~激おこだわ」


アーレイ)「悪いねウィン、大至急エナジーボール1000個用意してくれないか」


ウィン)「ええ、今からですか」


「ああ、そうだ」


「流石に1ヶ月は必要で・・」


初めてみるアーレイの激おこ顔に、伏せ目がちに答えるウィン。


アーレイ)「来週末に受け取りに来るから」


ウィン)「待ってください、そんな無茶な」


「どうすれば準備できる」


「少しお待ちください」


製造責任者のエメリナに慌てて連絡を取るウィン。


ウィン)「エメリナ、エナジーボールの在庫は今何個」


エメリナ)「はい、500個程です」


「来週半ばまでにあと500個大至急作ってくれない」


「えー、無理です。エネルギーが足りません」


「どうしたら出来るの」


「生命の木に直接生体エネルギーを注げば可能です」


「わかった、また後で連絡するから急いで作ってちょうだい」


「わかりました」


ウィン)「アーレイ様」


アーレイ)「聞いていた、エネルギー必要なんだな、俺の生体エネルギーを使う」


「はい、えっ、そんな」


ブラッド)「アーレイ、俺のエネルギーを使え」


アーレイ)「ブラッド!」


アーレイが自分のエネルギーを使えと行った瞬間、ポワンと間抜けな音を立てブラッドが実体化し立っていた。


ブラッド)「気にするでない、俺は使い果たしても死ぬことはない」


アーレイ)「いいのか」


「お前が使い切り、倒れれば誰が指揮を取るんだ」


「そんなにエネルギーを使うのか」


「ああボール500個か、数ヶ月は実体化は無理だな」


「そんなに使うのか」


「ああ、もしかすると1年は必要かもな」


「・・・(ジト」


微妙に顔がにやけているブラッドに対し疑いの目を向けるアーレイ。


ブラッド)「なんだ、変な顔してるのか」


アーレイ)「ふーん、カルネで静養か?」


「何故わかる!」


「顔に描いてあるぞ、俗にいう鼻の下が伸びている」


「ふん!」


「実際どの程度で復活するんだ?」


「フォーレストだったら2ヶ月位かな・・」


「ジト」


さらにジト目で睨むアーレイ。


ブラッド)「なんだその目は」


アーレイ)「心配して損した」


「友よ、ごめん」


「ああいいよ、さっさと終わらせよう」


「そうだな」


ブラッドの生体エネルギーを生命の木に注ぎ、急遽帰国したアーレイは第9艦隊詰所に向かった。


隊員A)「何が始まるんだ」


隊員B)「見てみろ技術屋とパイロットだぞ、絶対何か作戦の話だ」


何も知らされず急遽、集められた数百名の隊員は技術士官とインターセプターのパイロットだった。


士官)「アーレイ司令官、入りまーす」


ザッ一!集まった隊員達は、一糸乱れぬ敬礼をしアーレイを出迎える。


アーレイ)「楽にして」


「はい!」


「今からとても重要な作戦を言い渡すふ」


「はい」


「来週、10日程補給無しの特殊作戦を発動する。作戦終了まで助けを一切呼べない」


「はい」


「辞退したい奴はいるか、今回は・・・命令ではない志願兵を募る」


「・・・」


皆黙ってアーレイの次の言葉を待っていた。


アーレイ)「死ぬ可能性が極めて高い」


全員)「・・・」


アーレイ)「だが、作戦が成功すれば」


隊員B)「まさか」


「そう、星団統一の道筋が開かれる」


「わかりました(力!」


力強い返事をした部下達の目に力が入るのが手に取るようにわかった。


アーレイ)「それで志願してくれるか」


部隊長1)「インターセプター第1大隊参加します!」


部隊長2)「同じく第2大隊も参加します」


技術士官)「技官全て参加します!」


全ての隊員ががアーレイを凝視していた。


「ありがとう」そう言ってアーレイは頭を深く下げた。

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