活動開始。
第6話 いざデルタへ。
出発を迎えた日、春休みの息子達は2人共出てくると思われたが、春の陽気に誘われ新太は起きること無く、洋介と翔子に見送られることになってしまう。
<<古木の自宅前>>
翔子「いってらっしゃい」
洋介「じゃね」
新太「zzz」
そしてモジュールに転送10秒前だと知らせが入り、家族に軽い感じで見送られ古木は光の粒子になり転送されていくのだった。
<<探査船フォウルスター・艦長室>>
「おはよう翔太君」
「おはようございます、クリス艦長」
今回は転送室ではなく艦長室に直接送り込まれた。用途に応じて使い分けができるらしい。そして挨拶を交わすと早速デルタに向かうと告げられ、テーブルの上に置いてあった士官服を手渡される。
「とりあえず軍服を支給します。正式にはジェフ国王の認証を得てから階級が決まる」
階級証が付いていない真っ白な士官服と帽子を渡された。という事は最低でも少尉ということなので古木がそれを尋ねるとクリスは少し苦笑いをする。
「低すぎると事が進みませんから」
「少尉という事は士官学校卒ですか、階級か懐かしいな・・」
「えっ?君は経験者なの?」
古木の過去を全て洗い出していたわけではなかった。驚くクリスは意外な顔をするので、これまでの戦歴を話すとますます頼りになると褒められてしまい、彼は戦場に連れて行きたくなったのだろう。最後はニコニコと笑っていたよ。
「君が使う部屋と強襲学習について説明をしよう」
脱線した話を戻し古木が使う部屋に案内される。と言うか艦長室の隣の隣だった。次にブリッジに向かうことになり見学コースとは違う経路で向かう。
「流石は10万トンクラスだな」
「生命維持装置や観測装置を積むと狭く感じるだろ」
探査船の中はそこそこ広いが働いている軍人が多く狭く感じてしまう。意外だったのは士官とすれ違う際は職務を優先するで、歩きながらの敬礼だと言われる。便利だったのはモジュールの中空モニターに名前と階級が出るから一々名前を覚えなくても良いのは助かった。
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フェアリー「おはようございます」
翔太「何故いま?」
「お邪魔と思いまして」
「スゲェ、空気読んでるよ大したヤツだな」
「だろ!」
「電源落とそうかな」
「ぎゃー、やめて〜」
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話を聞けばモジュールを既に使いこなし呼ばれることがなく、忘れ去られてしまったと勝手に考え出てきたらしい。古木としては出てこなくても良かったが面白いAiだと笑うと、妖精は嬉しくなったのかグルグルと飛び回りマジで煩いと思った事は筒抜けでした。
<<フォウルスター・艦橋>>
ブリッジに上がると紹介のために呼ばれたのか予備席にキースとグランが座っていた。古木は所属を見て直感で奪還作戦に参加していた兵士だと思い挨拶をすることに。
「この前は助けてもらってありがとう」
「いえ任務ですので、それにしてもフラッシュバンを投げた時によく防御できましたね」
「そりゃあの状況なら何かしら撹乱するでしょうから、思いつくのはアレくらいです」
部隊長のキースというヤツは金髪の短髪がよく似合う強面のThe兵士という面構え、身体もガッチリとよく鍛えられていた。古木は久しぶりに戦場に出ていた頃を思い出し、こういう男は正義感に溢れ真面目で優秀だと相場が決まっている。なのであのときの余裕の態度を褒めると、表情は変わらないが嬉しいのか眉がピクリと動いていた。
「あはは、今回は勘が良い異星人だなキース少尉だよろしく」
「翔太です、よろしく」
「こいつは俺の腹心の部下だ頼りになる良いやつだぞ」
右手を差し出して来たのでそのままガッチリ握手をすると力強く返して来る。クリスが言う通りキースは悪いやつじゃなさそうだ。とは言え彼は現場が主な仕事だろうから、今後再会できるかは未知数だ。その後は一通り艦橋内の説明を受け「あの船がまだいるから見るか」と言われ面白いから見に行くことになる。
<<月の裏側>>
「ミサイルは流石に除去してるな(笑」
地球で何らニュースが流れていないことからヒャンドの探査艦は月の裏側に張り付き発見されていないらしい。突き刺さっていたミサイルは撤去され応急修理を終えたのか艦橋に光が戻っていた。
「クリス艦長、これがスキャンデータです」
無防備のまま精密スキャンを行うと船の詳細が丸わかりになるそうだ。予想だが腕が良い技術者が不在でコアの出力が上がらず、長距離亜空間無線も壊れたまま”救難信号”を打てないらしい。
「本国と相談したら代わりに救難要請をすることになった。仕方ない連絡するか」
マジで嫌っているのかクリスは嫌々連絡を取ると、ニーダと名乗るチビハゲデブの三拍子揃った熱っ苦しいおっさんが画面に映し出され、挨拶もそこそこにフォウルスターに乗り移り本国に帰りたいと喚き始める。
「こちらは任務遂行中で残念だがそれは出来ない。救難信号を送れと言われている」
「そうか了解した。救難信号お願いしたい」
一応、ニーダは軍人なので任務遂行中だと言われると引き下がり、クリスはさっさと通信を切れと言わんばかりに見えないところでハンドサインを送っていた。
「ふん、俺が報告しなきゃずっとあのままだったのにな。一応、同盟国だしょうがない」
「辛辣ですね」
「嫌われる理由があるからな、さあデルタに急ごう」
探査艦フォウルスターは惑星デルタに向け準備に入り、ジャンプコアが臨海を迎えるとギューンと唸るようなエンジン音が響かせ、星空が流れる亜空間へと消えていく。
ーー
<<デルタ宇宙港・医務室>
何度かジャンプを繰り返した3日後、古木はデルタに到着するものの、航海中の強制学習酔を起こし最悪な気分に浸っていた。
「う゛ー気分悪いわ〜」
強制学習の内容は歴史に始まり民族の特徴、社会背景などの基本情報、科学の基礎知識、戦闘機を含む武器の使用方法など多岐にわたる。事前に話していたデルタ語に関しては意識せず喋っている自分が気持ち悪い。
「気分は良くなったか、次はデルタ王国のメディカルセンターに入って精密検査だぞ」
「もう大丈夫だ、知識がすっごく入ったのはわかったよ」
メディカルセンターに出向いた理由は古木の中に潜む水虫や風土病などのウィルスを完全除去し全て健康状態に戻し、この世界で活躍するためのコピー体とは別に保存するための前処理だと言われた。
「古木さん、飲み過ぎですね肝臓を正常値まで修復しました」
「医療用カプセルって便利だね」
医者からは検査結果は飲み過ぎと言われるものの、それはもう修復が終わったと告げられ、たった1時間寝ているだけで治癒するとは凄い技術だと思わずにはいられなかった。そして活動期間中に使う身体は転送技術を使いクローン体に意識を移すらしい。
<<クローン技術研究所>>
「これが俺の新しいボディになるのか・・(呆」
メディカルセンター内にある技研に向かい、今は目の前の保存容器に浮かぶ若い頃の自分そっくりなクローンを眺めている。何ら情報の入っていないブランクボディーに古木の骨格情報を与え医療用カプセルで強制的に復元したそうだ。そして意識を移し万が一契約期間中に死んだ場合は、保存液に浸る元の身体にそれまでの記憶を移し地球に強制送還するらしい。
「クリス、同じ意識の俺が2人は出来ないと言われたが」
「同時に覚醒すると共鳴を起こし死んでしまうので法律で禁止されている」
理論的には完全コピー体を作ることは可能らしい。しかし何故か意識が共鳴を起こしてしまい必ずコピーした方が耐えきれず死ぬと言われた。想像だが時の権力者が不死を願い何度も実験を繰り返した結果が禁止理由になったに違いない。
「大昔に魔道具を使い分身体を作った記録はあるのだが、今はその魔法技術は途絶えている」
事前の説明にはなかったがこの世界では魔法が使えることが判明した。強制学習で覚えた情報を振り返り、ある一定以上の精霊の加護を得たものは魔法が使えると思い出す。しかしこの世界の魔法使いは極限られた一部の人しか使えず、技術は途絶え気味だと言われた。
「魔法を使える奴はいるんだろ」
「デルタ王国は少数だよ、クーンとフォーレストは未だ現役だったりするけどな」
こら、先に教えろと一喝しそうになる。しかしデルタ軍所属なのでまあ仕方ないと古木は諦めることに。そしてやっと開放されると思われたが更なる苦難が待ち受けていた。
「えーまた学習なの〜」
クローン体の調整が終わるまで強制学習を行い更に細かい予備知識を取得するそうだ。クリスは「諦めろここで挫けたら手ぶらで帰ることになる」と言われ3日ほど病院で過ごすことになってしまう。
<<4日後・クローン研究所>>
強制学習の試練を乗り越えクローンに意識を移す為に研究所に赴くと、早速手続きの同意書にサインをすると、そのまま医療用カプセルに押し込まれた。
「どうですか古木さん、もう新しい身体の方に意識が入っていますよ」
「おお、これは凄いな」
意識が戻ると既にクローンに移り変わっていた。身長は180センチと実際より1センチ高く体格はほぼ同じだ。
「うん、どこかの公爵と言ってもいいくらい、凄くいい男に仕上がっていますよ♡」
顔は面影を残しつつ彫りが深くなっている。間違いなくデルタ人に合わせ違和感がないように整形されていた。髪の毛の色はオリジナルの真っ黒のままだけどね。
「そ、そうなのね(汗」
世話をしてくれている若いナースは時折ジッと顔を眺めウットリしていた。なので慌てて鏡を見ることになるが・・。
「あらら、外国人風だねぇ〜」
クローン体の設定年齢は22〜3で若返ることになると言われていたが、実際に見てみると古木+西洋人のような顔立ちで、どうやらこの世界ではイケメンの部類に入るらしい。
「それではリハビリ施設に参りましょう」
数名のスタッフと共に上の階にある施設に移動すると軽くストレッチを行い、トレーニングマシンで走ると体の応答性が凄く信じられないほど軽くなっている事を確認。そんな新しい体に感動しているとクリスが迎えに来てくれる。
「どうだい古木君」
「もう完璧で感謝しか無いわ」
「クリス少佐、退院してもかまいません」
いきなり退院となり軍服に着替えメディカルセンターを出る。そしてモジュールはフルスペックに変更したと言われ、アイコンを開くと確かにすべて使える状態に知らぬ間に変わっていた。
「この後は確か陛下と謁見だよね」
「そうだ、緊張するなよ」
「フン、その程度じゃ緊張しないよ」
「あはは、そうだった」
次の控える謁見は挨拶程度と言われているが、不測の事態を想定して情報支援Aiを起動して備えることに。
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「フェアリー繋がるか?」
「はい、こんにちは。これからよろしくです」
「色々頼むよ。名前はフェで短縮するね」
「畏まりました。Aiは主人の性格に似てくるそうです」
「へー、じゃ碌でなし決定だな」
「それは勘弁」
「もう似てるよ」
「・・・」
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本当にこの支援Aiは感情が豊かで面白い、現在の地球で話題のGPTもこの様に進化するのだろうか、興味深いと思わずにはいられなかった・・。
<<デルタ王国・謁見の間>>
「初めましてジェフ陛下、古木翔太と申します」
「ワシがデルタの王ジェフだ、古木とやらせいぜい活躍せよ」
挑んだ謁見でのジェフ陛下の見た目は40過ぎのオジサマで、やはり王としての威厳と言うか威圧を感じる。たぶん立派なヒゲが尚更そうさせるのだろう。一通り挨拶を交わすといきなり名前を変えろと言われてしまう。
「承知しましたジェフ陛下、アーレイ・ウェブスターは如何でしょう」
「おー良い!建国の父の名が入っておるなそれで行こう。それとな古木の名はここにいる数人しか知らんからな安心せよ」
わずか3分ほどの謁見は即座に終わり、取り敢えず名前を変えるのが最初の仕事だった。部屋を出ると隣に控えていたクリスの顔が曇っていることに気がつく。
「ところでアーレイ、何で”ウェブスター”を選んだ、あの名は建国の父の名だぞ、普通恐れ多くて付けることはない」
ジェフは喜んでいたが普通はこの名前を選ぶことはしないらしい。と言うかウェブスター家は途絶えてしまったので尚更だと少し怒り気味に説明を受け、古木もといアーレイは決めた理由を話すことになってしまう。
「いやさ、名前を考えていたらそのまま寝ちゃって、夢の中で麗人なお姉さんに”ウェブスター”って名乗りなさいと言われてたから、語呂が良いアーレイをくっ付けたのさ」
「何だそれ、そんなに軽くていいのか!(呆」
「2年だし」
名前をつけた理由を話したらクリスに呆れられたけど、取り敢えずアーレイの名は呼びやすくていいけどなと言われたよ。
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