第19話 ダンジョンでの日々2

「オラ、オラ、オラ、アカジ様のお通りだぞ」


 俺のパンチに触れるとスケルトンが粉々になった。

 気持ち良いな。

 でもゾンビは勘弁な。


「ゴーストが来たわよ」

「愛のハグ攻撃」


 俺の体の近くに来たゴーストが溶けるように消える。


「それってただの体当たりじゃない」

「いいんだよ。俺のハグには愛があるんだから。試しにやってみるか」

「下らない事を言っていると、魔法を叩き込むわよ」


灼筋しゃっきん先輩、中ボス部屋があるようです」

「中ボスはなにかいな。うげっ、ドラゴンゾンビじゃん。触りたくないな。俺はパス」

「腐った物は食べるなって言われているの」

「酸に耐性があるような気がします」


「何よ、私にやれって言うの。良いわよ、やったろうじゃん。業火よ湧きあがれ泉のごとく湧き上がれ、エクスプロージョン【魔法巨化】」

「お前、ダンジョンでそんなのを撃つと」


 爆発が起こり爆風が来て、俺達は吹き飛ばされ通路の壁に叩きつけられた。

 ほら、言わんこっちゃない。


「みんな平気か」

「酷い目に遭ったわ。カッとなるものじゃないわね」

「ジュエルスターはスライムだから、平気だよな。大食幼女は元気に転がってるな」


 中ボスの部屋からドラゴンゾンビの雄たけびが聞こえて来た。

 怒ってらっしゃる。

 寝起きに爆弾を放り込まれたんじゃそうなるよな。

 部屋から入口に向かって毒のブレスが吐かれた。

 覗き込む気も起きない。

 毒のブレスをかいくぐって接近するのは勘弁してほしい。

 触るのも遠慮したい。


 ローンスキルで魔法を撃つのも一つの手だが。

 投石器と金属の玉を取り出してと。


「【肩代わり】玉に聖なる力を肩代わりさせてと」


 ほら飛べ聖なる玉。

 投石器から放たれた玉は燐光の残像を引いて、ドラゴンゾンビに当たった。


「グギャー」


 効いてる効いてる。


「【ローン】邪悪10000倍。【肩代わり】金属の玉と。ジュエルスター、馬鹿力でぶつけてやれ」

「はい、灼筋しゃっきん先輩」


 俺が聖なる玉を作り、ジュエルスターが投石する。

 段々とドラゴンゾンビの声はか細くなり、仕舞いに聞こえなくなった。


「どれどれ。おー、灰になったな」


 床に転がる沢山の光る玉。


「これ、売れないかな。聖なる玉とか名前をつけて」

「そんな事をしたら、教会が飛んでくるわよ」

「でもよ。効果があるんだから、良いじゃないか」

「教会にもメンツがあるのよ。こんな俗物が聖なる玉を作ってるなんて知れたら、信者に暴動が起こるわ」


「うん、裏でこっそり売ろう。露店で売れば誰も本物だとは思わないだろう。光る綺麗な玉としか認識しないはずだ」

「知らないからね。ちょっと大食幼女。何を舐めているの。そんな汚いのを舐めちゃ駄目」


 大食幼女が光る玉を舐めると光が無くなった。

 えー、聖なる力も消化しちゃうのかよ。

 なんか負けた気分だ。

 玉の光は全て大食幼女の腹に収まった。


 灰の中にきらりと光る物がある。

 おー、特大の魔石だ。

 儲かったな。


「ドラゴンの魔石はいくらぐらいかな」

「そうですね。金貨1000枚は下らないでしょう」

「四人で分けて金貨250枚ずつか。ダンジョン攻略って儲かるんだな」


「そうよ、知らなかったの。今日倒した魔獣全てで、一人あたり金貨1000枚はいくわ」

「おー、借金が消えた。ダンジョンさまさまだな」

「でも生きて帰らないと、それも取らぬなんちゃらよ」


「このメンバーで全滅ってのは有り得ないだろう」

「油断は禁物よ。ダンジョンの中ボスの強さから察するにラスボスは途轍もなく強いと思う」

「まあ、なんとかなるんじゃない」


 ローンスキルがあれば大抵の敵は容易いだろう。

 駄目だったら、一億人分ぐらい借りて、一生借金を背負って生きていくさ。

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