第18話 ダンジョンでの日々

 ダンジョンの壁がつるつるとした物に変化した。

 あー、スライムでもいて壁を磨いたのかな。

 そんな訳はないか。

 少し行った所に居たのはヒルの魔獣だった。

 ぶよぶよして非常に気色悪い。


「無理、無理。私には無理。あんな気持ち悪いのを退治したくない」

「食べたくない」

「一応やってみますが、期待しないで下さい。強酸砲」


 酸が掛けられるが少しも溶けない。

 借金を背負わせたいが、手はどこにあるんだ。

 体のどこでもいいのか。

 とても触りたくない気分だ。


 皆の目が俺に集中する。

 やれってか。

 やれば良いんだろ。


「【ローン】スピードと腕力と防御10000倍からの。【肩代わり】」


 ヒルの魔獣を殴ってから、肩代わりはダンジョンだ。

 ヒルは破裂して付近に体液を飛び散らせる。

 何とかなったな。


 皆の目が部屋から出て行く通路に釘付けになる。

 おー、仲間なんか呼ぶんじゃねぇよ。

 あの体液が曲者だったらしい。


 こんなのやってられっか。

 ダンジョンの壁を殴る。

 さっき防御を肩代わりさせて、壁はもろくなっているので簡単に崩れた。


「みんな逃げるぞ」

「そうね。逃げましょ」

「逃げる」

「戦略的撤退ですね」


 壁をぶち抜いて逃げまくったが。

 ヒルは着実に追ってくる。


 そして、前方にはひと際大きいヒルが居る。

 中ボスという奴かな。


 90度、方向転換したら中ボスも追跡に加わりそう。

 絶対そうに決まっている。


「【ローン】魔法威力10倍。炎よ矢となりて飛べ、ファイヤアロー」


 十倍のファイヤーアローで追いかけて来たヒルの魔獣は一掃された。


「【肩代わり】ダンジョンに肩代わりさせてと。ザコは俺がやったんだから中ボスは頼むよ」

「仕方ないわね。炎よ矢となりて飛べ、ファイヤアロー【魔法巨化】」


 中ボスのヒル魔獣が丸太ほどのファイヤアローで吹き飛ぶ。

 体液がそこら中に飛び散った。

 物凄く嫌な予感がするんだけど。


 通路からヒルの魔獣がこれでもかと出て来た。

 もうやだ帰りたい。


「もう逃げるっきゃないだろ」

「そうね」


 俺達は壁を壊しながら逃げた。

 待てよ。

 防御力を俺が借りて、ダンジョンが肩代わりして、一定時間もろくなる。

 じゃ、逆にしたら。

 もろさを俺が借りて、ダンジョンが肩代わりして、一定時間硬くなる。

 それだ。


「【ローン】もろさ1000倍。さあ逃げ道以外を塞ぐんだ」

「もう、雑用をやらせて。頼む時はお願いしなさいよ。今回だけだからね。砂よ壁になれ。サンドウォール」

「【肩代わり】ダンジョンに肩代わりさせて。よし壁が固まったぞ。今のうちに逃げよう」


 俺達は急いでその場を離れた。

 ふぅ、酷い目に遭ったぜ。


「カタカタカタ」


 お次はなんだ。

 スケルトンという事はアンデッドかよ。

 ゾンビとかに触るのは嫌だからな。


「強酸砲」


 スケルトンがみるみる溶けていく。


「でかした、ジュエルスター。強酸砲も役に立つんだな。この調子で頼む」

「あれは駄目ですね」


 見るとゴーストが寄って来た。

 ゴーストにつめ印を押させるなんて出来ない。

 意外な弱点発覚だ。


「もう、また私。炎よ矢となりて飛べ、ファイヤアロー」


 ファイヤアローを食らってゴーストが消える。

 どうしよう、ゴーストの上位種とか出て来たら。

 そう思ったら、出て来たよ。

 物凄く光っているゴーストが。


「グレーターレイスね。あれは聖職者じゃないと無理だわ」

「任せてくれ。さっきので学習した。【ローン】邪悪10000倍」


「うわっ、あんたさっき魔王にならなかった。今は聖人に見えるけど」

「そうさ、27時間は聖人だ。おらおらおら」


 俺はグレーターレイスをタコ殴りにした。

 程なくしてグレーターレイスは消え去った。


「胡散臭い聖人ね」

「なんか美味そう」

「駄目よ。食べたら、絶対に腹を壊すから」


灼筋しゃっきん先輩、うっすらと光ってます」

「蛾が寄って来なきゃいいけど。寄って来たら強酸砲で追い払ってくれ」

「はい、その時は」


 よし、27時間はアンデッドに対して無敵モードだ。

 ビシバシ戦闘して、さっさとアンデッドゾーンを抜けるぞ。

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