第15話 砂男

 ダンジョンを進む。

 曲がり角からオークの一団が現れた。


「ジュエルスター任せた」

「はい、灼筋しゃっきん先輩。いくぞ、強酸砲」


 酸を浴びてオーク達が溶ける。

 通路を抜けて少し広まった部屋に入ると、皮鎧を着たオークがいた。

 ハイオークか。

 それともオークファイターか。


「強酸砲」

「ぴぎっ」


 オークは酸に耐えた。

 少し回復能力があるのかも。

 仕方ない手を出すか。


「【ローン】スピード1000倍からの【肩代わり】。今だ、思う存分溶かせ」

「強酸砲、強酸砲、強酸砲」


 オークは溶けた。

 このぐらいの敵だと苦戦しなくて良い。

 こんな展開が最下層まで続かないかな。

 突如、声を掛けられた。


「午睡には良い時間だ」


 砂がダンジョンの部屋に流れ込んで、人の形をとる。


「お前は砂男。なんのつもりだ」


 ジュエルスターがそう言った。


「クラン・ヴァルドを排除しようと話し合いがついた」

「強酸砲」

「ふっ効かないな。お返しだ。安らぎの眠りへ誘え、スリープ」


 ジュエルスターが卒倒した様に倒れる。

 眠っているようだ。


「俺を残したのが間違いだ」


 砂男に借金を背負わせようとした時、突如ジュエルスターが起き上がった。

 眠ったんじゃないのか。

 そして、ジュエルスターが巨大スライムに変身した。


 砂男をスライムが飲み込む。


「くっ、これだから眠りの良さを解さぬ輩は」


 スライムの中に散らばった砂が見える。

 その砂粒が一つにまとまりスライムを食い破り、人の形を取った。

 幾分身長が縮んでいるようだ。


 砂が溶けたのだろうな。


「くそっ、相性が悪い。仕方ない。砂カッター」


 砂男の体が砂の刃になってスライムを切り刻む。

 だが、スライムはバラバラになっても蠢き再び一つになった。


 いくらかスライムの大きさが小さくなっている事から、ダメージはあるんだろうなと思った。

 ここで俺がスライム回復液を掛けたりしたらどうなるのだろう。

 やってみっか。


「汚いぞ、回復するなんて」

「そういうお前だっていくぶん回復してるだろ」

「駄目だ。こう着状態には耐えられない。眠くなってきた。俺は帰る」


 そう言うと砂男は砂になって引き上げて行った。


 攻略を再開したいが、ジュエルスターはいつになったら起きるのか。

 さて、気付け薬なんて持っていない。

 そう言えばローンスキルって現在6種類借りれるよな。

 でも次にスキルレベルが上がったら7種類だ。

 ステータスには能力値は6種類しか存在しない。

 もしかして、能力値以外の物も借りれるのか。

 試してみよう。


「【ローン】睡眠1000倍。ぐう」


 俺は寝ていたのに気がついた。

 物凄く快調な目覚めだ。

 腕時計を見たが時間は十秒しか経っていない。


「よし、【肩代わり】」


 眠りの反対の目覚めをジュエルスターに肩代わりさせてやった。


「はっ、迷惑を掛けました」

「早く人の姿になれよ」


 ジュエルスターが人の形に戻る。


「強敵でした」

「それな。三時間は眠れないぞ。今、睡眠を肩代わりしてるから」

「そうですか。灼筋しゃっきん先輩のスキルは応用が利きますね」

「お前も眠っているのに自動迎撃とはやるじゃないか」

灼筋しゃっきん先輩に襲い掛かったりしませんでしたか」

「いや全然」


「おかしいですね。敵味方の区別なく暴れるはずなんですが。ちょっと待って下さい。スライムに聞いてみます。ふんふん、なるほど。灼筋しゃっきん先輩に敵対するのをスライムが恐れたようです」

「そうか、俺のスキルなんて隙だらけなんだがな。あとクラン・フェリアルで能力が分かってないのは重厚だけだな。知ってるか?」

「ええ、硬化です。幸い強酸砲とは相性が良い。溶かせますから」

「盾で防いでくるんじゃないか」

「その可能性はありますね。酸で溶けない加工をしているかも知れません」


「その時は俺のスキルだな。スピードはそれほどじゃないと思うから。なんとかなるだろ。ただな大食幼女とはやりたくない。幼女を虐めるのは性に合わない」


「彼女は馬鹿ですから、食べ物で釣れると思いますよ」

「そうだな。それが一番か。よし、時間をロスした分も取り返そう」

「はい」


 俺達はダンジョンコアを手に入れるべく、攻略を再開した。

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