第14話 クラン・フェリアル
一面の砂だ。
もちろん俺が壁を壊して出来た砂もある。
だが、これは違う。
砂の中に大盾を持った男とほとんど全裸の男。
それになぜか幼女が佇んでいた。
ここは最前線の3階層だ。
「なんだジュエルスターじゃないか。見慣れない男を連れてるな。相棒か」
盾を持った男がジュエルスターに話し掛けた。
「重厚好敵手。俺は忙しい。先に進むからどけ」
「ガォー食べちゃうぞ」
半裸の男がそう言って爪を立てる仕草をする。
「はらへった」
幼女がそう呟いた。
突然砂が集まり人の形をとる。
「俺が何かって、たぶん魔法生物なんだろう」
砂で出来た人がそう言った。
「こいつらは有名なのか。中々に濃ゆいメンバーだな」
「
「ああ、商売敵って奴か」
「借金と言うのか変わった通り名だな。俺は重厚のロイド」
盾を持った男がそう自己紹介した。
「俺は借金くずのアカジ。Cランクだ」
「なんだCランクかよ。期待して損した。一応名乗っておくよ。
「大食幼女、ティル」
「俺は砂男のワード」
おっと敵の襲来だ。
オークの一団がやって来た。
大食幼女がとてとてと歩き、オークの脛にかぶりつくと咀嚼もせずに飲み込んだ。
「【消化】スピードに転化」
倒れたオークの腹にかぶりつき瞬く間に平らげた。
物騒極まりない幼女だな。
オークの十分の一より小さく見える大きさなのに、よく腹に収まった物だ。
消化のスキルのおかげだな。
大食幼女は残った骨をバリバリとかみ砕いた。
オークはその惨状を見て恐れおののいた。
大食幼女は物凄いスピードでオークに襲い掛かり次々に腹に収めた。
いやドン引きだよ。
これは酷い。
「けっぷ」
大食幼女は最後に可愛らしくゲップをした。
消化のスキルは食って能力値を増やすのだな。
これって食える相手ならほとんど無敵なのではないか。
「
「ああ、皆さんの健闘を祈る」
「これはどうもご丁寧に」
「俺は通したくないな。【獣化】狼バージョン」
それが彼の戦闘態勢のようだ。
穏便に済ましてやろうと思ったのに。
「【ローン】スピード1000倍からの【肩代わり】」
「何っ早すぎて見えなかったぞ。どうした
重厚が
「スキルを掛けた。時間が経てば元に戻る」
「まあ、
砂男がそう言った。
「はらへった。人肉は食うなと言われた」
「大食幼女ちゃん、魔獣を食べに行ってきなさい」
「うん、そうする」
そう言うと大食幼女はとてとてと歩いて去った。
俺の言う事を聞いてくれたみたいだ。
幼女と殺し合いなんてしたくないからな。
「眠りには早い時間だな」
どうやら、砂男は見逃してくれるらしい。
俺達はその場から立ち去った。
少し進むとアンリミテッドが大食幼女の頭を撫でていた。
「アンリミテッドも動員されたのか」
「クランメンバーのほとんどが参加しているはずよ」
「アンリミテッド、その幼女と仲がいいのか」
「ええ、クラン・フェリアルからは勧誘を受けているの。もちろん断ったけどね。今も会うたびに勧誘されるわ」
「へぇ、そうなんだ」
ああ、共通点が分かったぞ
砂男は砂化だとすると、アンリミテッドは魔法巨化だ。
なるほどね。
「この先は一緒にいきましょ」
「アンリミテッド後輩、足手まといになるなよ」
「ふん、あなたこそね」
幼女を加えた即席の四人パーティで進む。
この先は広間になっているようだ。
巨体が見えた。
この巨体は前にもやったから分かるオークエンペラーだ。
「強酸砲」
ジュエルスターの強酸砲が炸裂。
オークエンペラーは苦悶の声を上げた。
だが、焼けただれた皮膚が逆戻りするように回復する。
大食幼女がとてとてと歩き脛にかぶりつく。
やはり肉が盛り上がりオークエンペラーは回復する。
「危ない」
「【消化】防御に転化」
大食幼女が蹴飛ばされてころころと転がる。
「怒ったわ。業火よ湧きあがれ泉のごとく湧き上がれ、エクスプロージョン【魔法巨化】」
おいおい、狭い所で爆発なんて撃つなよ。
暴風が吹き荒れて、大食幼女がころころと転がる。
「きゃはは」
楽しんでいるようで何より。
オークエンペラーの片腕は明後日の方向を向いていて、胴体の半分は炭化している。
だが、みるみる間に肉が盛り上がり回復した。
オークエンペラーが持っている斧でアンリミテッドに切りかかる。
「強酸ガード」
ジュエルスターが手を酸の盾に変えてアンリミテッドを守る。
ジュエルスターの手は吹き飛んだが、オークエンペラーの斧を溶かす事には成功したようだ。
斧は柄だけになっていた。
「助かったわ」
俺はスライム回復液をジュエルスターに掛けてやった。
「しょうがないな。【ローン】スピード1000倍からの【肩代わり】。大食幼女ちゃんおあがり」
「いただきます」
動けないオークエンペラーが幼女に食され瞬く間に骨になる。
「【消化】防御に転化。おなかいっぱい。お休み」
あらあら、寝てしまったよ。
「私は大食幼女をクラン・フェリアルに届けてくるわ」
「先を急ぎましょう、
「それって高い?」
「金貨1万枚は下らないかと」
ひゃっほい。
一挙に借金返済出来るぞ。
これは手に入れないとな。
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