第13話 ダンジョン見つかる

 ゴブリンはいねがぁ。

 居た、居た。


「【ローン】スピード1000倍からの【肩代わり】そして【連帯保証】」


 ささっと押しなはれ。

 よし、押したな。


 次だ、次。


 おっ、またゴブリンだ。

 ささっと押しなはれ。

 そんな作業をする事一時間。


 それにしても、ゴブリンが途切れないな。

 なんかどんどんゴブリンの数が増えてないか。

 こりゃ、好都合。


 そして、遂にゴブリンが湧き出している巣穴を見つけた。

 ひゃっほい、カモがうじゃうじゃ居るじゃねぇか。


 この巣穴をクランに報告したら、狩場独占なんて事にならないかな。

 そうなったら上がりの何パーセントか貰ってウハウハだぁ。

 よし、急いで帰ろう。


 クランのドアを勢いよく開ける。


「なんだカチコミか」

「嫌だな。みんな血相を変えて。クランメンバーのアカジですよ。血相を変えるのならこれを聞いてからだ。ゴブリンが無限に湧き出る巣穴を見つけた。みんなゴブリンを狩ってハッピーになろうぜ。俺に上納するのを忘れずにね」

「おい、こら。借金くず。無限にゴブリンが湧き出ていたのか」

「イラス、胸倉を掴んじゃってどうしたんだ」

「それが本当なら、それはダンジョンだ」


 場に緊張した空気がみなぎった。


「ダンジョンが発見されたのか。ついてないな今度は死人が幾人でるやら」

「腕がなるぜ。ダンジョンコアをゲットして大金持ちだ」

「こうしちゃおられん。パーティメンバーを集めないと」


 あれ、予想外に大事でしたか。


「早く地図を書け」

「分かったよ手を放せ。胸倉をつかまれちゃ地図が書けない」


 地図を書くと複製が瞬く間に作られ、クランのメンバーは全員出動していった。

 あれ、俺への上納金の話はどうなったの。

 くそ、騙された気分だ。


 何か知らんが出遅れたようだ。

 いいよ、先勝ちは糞勝ち。


「お前さんは行かないのか」

「おっ、婆さん、久しぶり。婆さんも残っているじゃないか」

「わしはクランマスターだよ」

「えっ、婆さんクランマスターだったのか」

「そうじゃ。生憎とな」


「置いてかれたのか。可哀そうに」

「ふん、余計なお世話じゃ。まだわしの出番ではない。それだけじゃ」

「そういう事にしておいてやるよ」


 さて、俺も行くか。

 ダンジョンの入口に行くと、そこには所狭しと露店が軒を連ねていた。

 おおっ、お祭りみたいだ。


「ダンジョンの地図いらんかねぇ。現在2階層まであるよ」


 もう2階層を調べ尽くしたらしい。

 早いもんだ。

 さてと、俺もダンジョンに足を踏み入れるとしますか。


 ダンジョンの中は洞窟になっていて薄暗い。

 光源は光る苔のようだ。

 ゴブリンの姿はどこにもない。

 俺を支えてくれる連帯保証人は無事だろうか。

 外に出ていた奴だから、半数ぐらいは無事だと良いな。


 俺の目論見を壊してくれた憎いダンジョンめ。


「債権者にしてやる。【連帯保証】ふははは、ダンジョンの壁に押し付けたらスキルが発動してやがる。勝ったな。もうダンジョンは手のひらの上だ」


 なんだ、出落ちかよ。

 攻略の意味ないじゃん。

 ところでダンジョンの懐の温かさはいかほど。

 結局そこが分からないと借金を押し付けられないじゃん。

 とほほ、振出しに戻るか。


 肩代わりはさせられるよな。


「【ローン】防御1000倍からの【肩代わり】そして壁を殴る」


 やったぞ。

 壁に大穴が開いた。


 ふはは、近道して進もう。

 あれ、2階層への階段はどっちだっけ。

 完全に準備不足だ。

 それに俺は斥候には向いてない。

 地図屋に地図を売ってもらってから再チャレンジしよう。


 そういえば食料も持ってないや。

 水もない。

 もう、めんどくさいな。

 俺は地上に出て、めんどくさい事を引き受けそうな人間を探した。


「おっ、ジュエルスター発見」

灼筋しゃっきん先輩はてっきり最前線にいると思ってました」

「食料が心許なくてな」

「それなら、収納バッグに全て入ってます」

「用意いいねぇ。一緒に行っちゃう」

「はい、行きましょう」


 しめしめ、めんどくさい事を引き受けてくれる人間を確保したぞ。

 雑魚魔獣はみんなジュエルスターに押し付けよう。

 俺の役目は壁を壊す事でいいな。

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