第11話 楽して儲かる仕事
無事Cランクになれたのでクラン・ヴァルドに加入できた。
俺は積極的に討伐はしない。
なぜなら『肩代わりありがとう。死ね!』アタックは隙があるからだ。
ローンスキルと肩代わりスキルとの間が隙になる。
カウンターがかすったりして、肩代わりに失敗したら一大事だ。
俺は安全をとる男。
「なあ、ジュエルスター」
「なんです、
「楽して儲かる仕事がないかな」
「先輩だったら、魔獣を倒すのが一番てっとり早いと思います」
「それな、気が進まない。ちょっくら、ギルドの依頼を見てくる」
俺はギルドでFランク依頼を眺めた。
駄目だ安いのしかない。
Aランク依頼を見る。
討伐、討伐、討伐、これも討伐。
討伐がそんなに偉いのかよ。
あった、これなんか良いんじゃないかな。
結界が張れる人募集。
内容は、魔力過多で赤ん坊が暴走を起こしますとある。
魔力の返済を肩代わりさせりゃ良い。
返済している間は平和になるだろう。
さっそく、問題の赤ん坊が住んでいる家を訪ねた。
扉をノックする。
家から怯えた様子の傷だらけの女の人が現れた。
「依頼を見て来たよ」
「良かった。もう駄目かと。早く結界を」
「俺な。魔法は簡単な奴しか使えない。その代わりといっちゃなんだが、まじないができる」
「とにかくお願いします」
赤ん坊がすやすやとベビーベットで寝ていた。
ベビーベッドにはうっすらと光の膜が掛かっている。
あれが結界だな。
光具合からするともうそんなに持たないみたいだ。
「【ローン】百万人分の魔力注入」
俺は持ってきた魔石に魔力を入れた。
魔石はまばゆく光る。
この魔石は例のアルティメットリッチからとった物だ。
無理をいってクランから借りて来た。
「【肩代わり】大きくなれよ」
百万人分だと俺なら返済に116日かかる。
だが、この魔力過多の赤ん坊なら、もっと短いだろう。
依頼が何回も来ると懐的に美味しい。
「済んだのですか」
「ああ、試しに結界の外に赤ん坊を出してみると良い」
「そんな、恐ろしくて出来ません」
「俺がやる」
赤ん坊を抱き上げあやす。
「だぁ」
「助かりました。あなたは恩人です」
「効力が切れたら、クラン・ヴァルドのアカジまで連絡してくれ」
へへっ、今回は儲かったぜ。
治療費と魔石の魔力で倍、儲かった。
依頼の報告にギルドに帰ると、慌ただしい。
「頼む。リム、目を覚ましてくれ」
「皆さん、魔力漏洩症です。魔力を注ぎ込んでやって下さい」
「そうか、魔法を食らって魔力が漏れる怪我だったよな。可哀そうだ。俺は献魔するぜ」
「俺も」
「俺も」
なんか俺も魔力を奉げないといけない空気だ。
いや、やってやったよ。
ローンスキルの魔力で10人分。
「魔力が足りない。どなたか魔力を注いで下さい」
ギルドにいる連中はいたたまれないという顔をしていた。
ああ、ちくしょう。
百万人分の魔力を寄越せって言うんだな。
もってけ泥棒。
「これを使え。クラン・ヴァルドからの寄付だ。魔石は絶対返せよな。それ取られたら俺泣いちゃうかも」
「はい、ありがとうございます。リム、これで助かるぞ」
魔石から魔力が注ぎ込まれる。
リムの顔色に赤みが戻った。
そして、魔石は光を失い。
ピキッ。
なんですとー。
ピキッピキッピキ。
割れた。
そっそんな、割れるなんて。
俺はこそっとクランハウスに戻り、魔石の残骸を魔石保管室に入れた。
「あー、アルティメットリッチの魔石が割れてる」
「最後に触ったのは誰だ」
「それなら、借金くずよ」
「お前、割ったのか」
「何だ騒がしい」
「あっ、ギルドマスター。なんの御用ですか。言ってくれればギルドまで出向きましたのに」
「そこのアカジがアルティメットリッチの魔石で人命救助したので表彰にきた」
「アカジ君、そうならそうと言ってくれれば良かったのに」
「えっとそのう。てへっ、魔石割っちゃいました」
「怒ってないよ。ええ、とってもね。そんな訳あるかー。弁償だな」
「ええー、そんな」
俺は貧乏神にとりつかれているらしい。
たぶんあれだな。
今回の敗因はアルティメットリッチの魔石に百万人分は無理だって事だ。
それと依頼料と魔力で一石二鳥に欲張ったのが不味かった。
ちなみに赤ん坊の肩代わりは6日で終わった。
母親も疲れているみたいなので、何回も依頼料を出させるのは気が引けた。
なので段々魔力を多くして限界に挑戦してみた。
肩代わりの最長は30日と分かった。
肩代わりは月給分って、どこの闇金だよ。
生かさず殺さずってか。
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