第9話 アルティメットリッチ

「おい、静かに。外で何か聞こえるぞ」

「貴様、イラス様をおいと呼んだな。許さん」


「緊急要請。緊急要請。この都市にアンデッドの大群が押し寄せています。全員出動して下さい」

灼筋しゃっきん先輩、行きますよ」

「そんな訳で行ってきまーす」

「貴様、一言謝ってから行け」


 俺達は街の外に出ると、おびただしいスケルトンとゾンビが居た。


「強酸砲」


 ジュエルスターお得意の必殺技が出た。


「らちが明かないな。奥の手を使うか。超酸砲」


 ジュエルスターの腕が膨れ上がり、巨大な酸の弾を発射。

 千ぐらいのスケルトンが一気に消えた。


「なんか強くなったな」

「ええ、テラスライムの因子を寄生しているスライムに埋め込みました」

「人間辞めるのもほどほどにな」

「はい」


「【斬撃強化】倍化剣いち、倍化剣に、倍化剣よん、倍化剣はち、倍化剣いちろく、倍化剣さんに、倍化剣ろくよん、倍化剣いちにっぱ、倍化剣にごろ、まだまだぁぁ。倍化剣ごいちに、倍化剣いちぜろにいよん、倍化剣にいぜろよんはち、倍化剣よんぜろくんろく。ふぅ、新記録だぜ」


 剣聖も頑張っているようだ。

 アンデッドの大群一万が細切れになっていた。



 デビット達のパーティがそんなSランクの活躍を見てあっけにとられていた。


「邪魔だ。どいてもらおうか」


 ぼーっと立っていたデビットが王打おうだに突き飛ばされた。


「おいおっさん、謝りも無しなのか」

「デビット、相手が悪い。Sランクの王打おうだですぜ」


「拳の錆になりやがれ。【流動】デスブリット、デスブリット……デスブリット」


 王打おうだが拳を突き出す度に、離れた所にいるゾンビが肉塊になる。

 王打おうだは遠距離攻撃も持っていたんだな。


「業火よ湧きあがれ泉のごとく湧き上がれ、エクスプロージョン【魔法巨化】。……。業火よ湧きあがれ泉のごとく湧き上がれ、エクスプロージョン【魔法巨化】」


 アンリミテッドも活躍しているようだ。


「見て見て。アカジがいるよ」


 リーチェが俺を見て囃し立てる。


「なんだ荷物持ちじゃねぇか」

「疫病神にならなきゃいいけどな」

「違いない」


 Sランクが何人もいると早いな。

 あっというまにアンデッドの大群は退治された。

 終わりかと思ったら空間が歪み、そこから黒いスケルトンが現れた。


「我の軍団をよくも。レッサードラゴン、オークエンペラー、ゴッドグリフォン、テラスライムとよくも配下をやってくれたな」


 こいつが元凶か。


「【流動】キングインパクト」


 王打おうだ、早いよ。

 まだ喋っている途中だろ。


「もう我慢ならん。【無限魔力】遠き彼方の星よ我の求めに応じろ、メテオフォール」


 黒いスケルトンは倒れた。

 あれ死んだの。

 あっけないな。


灼筋しゃっきん先輩、あれを」


 指さした方向を見ると隕石が炎の尾を引いてこちらに向かってくる。

 あーあ、終わりか。

 何が終わりかだって、俺の平穏な生活が終わりだって事さ。


「【ローン】テンミリオン・アタック」


 1000万人分のパワーで俺は地面を蹴り隕石に体当たりした。

 粉々になる隕石。

 俺は地面の落下の瞬間に魔力を借り着地した。


「こっちに来るぞ!!」


 破片の一つが逃げ出して少し離れていたデビット達を襲った。

 みんなと固まっていれば良かったのに、せっかく被害が出ないように砕いたのにさ。


「ぎゃー!!」


 あーあ、運のない奴らだ。

 破片が地表で爆発して、デビット達はそれに巻き込まれた。

 デビット達を他の冒険者が助けに掛かる。

 生きてるのか。

 しぶとい奴らだな。


「隕石は誰がやったんだ」

「俺は見てたぞ。ジュエルスターの足元にクレーターが出来たと思ったら隕石が爆発してた」

「ジュエルスターばんざい」


 他の者はみなジュエルスターがやったと思っているらしい。

 まあいいさ。

 ソーラー電卓で計算する。

 1000万人分のパワーは1157日の返済で3年と2か月になる。

 お払い箱になるには丁度いい。


灼筋しゃっきん先輩、いえアカジさんをAランクとクランに推薦します」

「俺も推薦しようか」

「そうだなぁ、俺も推薦しとくか」

「私も推薦するわ」


「そんな馬鹿な。借金くずのアカジだぞ」

「イラス、文句があるのか」

「いえ、王打おうださん」


「俺は今の闘いで体を痛めた。3年と2か月は完治しない」

灼筋しゃっきん先輩はクランハウスでのんびりしていて下さい」


 四人のSランクが逃さないぞと目が言っている。

 とほほ。


 ちくしょうSランクの奴らにスキルがばれた。

 あーあ、めんどくさいったらないな。

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