第5話 ゴットグリフォン

「おはようさん」

「貴様イラス様に向かってなんという事を。いいか、おはようさんなどと言うのは目下の者に使うものだ」

「おっ、なんか聞こえた」


 クランハウスの魔道具が音を発する。


「緊急要請。緊急要請。村にグリフォンが強襲」

「行きましょう。灼筋しゃっきん先輩」


 仕方ねえな。

 俺は回復液が入った収納バッグを手に取り現場に向かって駆け出した。

 一時間後、目的地の村に到着した。

 居たのはグリフォンの群れ。


 群れやがって、うっとうしい。


「強酸砲」


 ジュエルスターが酸を発射するも当たらない。

 弓かバリスタを持ってこないと駄目だろう。

 俺達は途方に暮れた。

 俺が本気を出せば容易いが、スキルの秘密を知られてしまう。

 グリフォンもジュエルスターが強敵だと分かっているのか地上には降りてこない。

 そんな時、真っ赤なドレスを着た女の子が応援に駆け付けた。


「だらしないわね。業火よ飛べ、ファイヤーボール【魔法巨化】」


 30センチほどのファイヤーボールがスキルの影響で30メートルほどになる。

 近くでみるとまるで太陽だ。

 それがグリフォンを巻き込みながら、空に向かって飛んで行く。

 おおっ、今回は楽勝だな。


「アンリミテッド後輩。減らず口を叩く暇があったら、とっとと片付けろ」

「分かっているわよ。魔力よ地獄の果てまで追いかけろ、マジックミサイル【魔法巨化】」


 10メートルもある魔法の誘導弾がグリフォンを次々に落とす。


「ぼさっとしてないで、地上に落ちて生きている奴に止めを刺す」

「はい、はい」


 俺は剣を持って走り回り止めを刺した。

 ジュエルスターの野郎さぼっているな。

 ふてえ野郎だ。


 その時、地上が陰る。

 見上げるとグリフォンの10倍はある奴が悠々と飛んでいた。


「強酸砲」


 おっ、今度は当たるか。

 これだけ的が大きければ当たるはずだ。

 巨大グリフォンは翼を羽ばたかせ、強酸の弾を打ち返した。

 ジュエルスターがそれをもろに浴びて装備を溶かされる。

 ジュエルスターこいつ使えないな。


 巨大グリフォンは風を起こし突風の刃でジュエルスターを切り裂いた。

 やられちゃうのかよ。


「ちょっと、やってくれちゃって。敵討ちよ。業火よ湧きあがれ泉のごとく湧き上がれ、エクスプロージョン【魔法巨化】」


 目もくらむような爆発が起き、きのこ雲が上がる。

 やったか。


 みると女の子は倒れていて、巨大グリフォンは無傷だった。


「魔力切れ……」


 魔力切れかよ。

 こいつも使えないな。


「【ローン】道標ミサイル」


 俺はパワーを一万人分借りて岩の道標を持ち上げ投げた。

 これで27時間は力仕事を出来ない。


 岩は巨大グリフォンの胴体を貫き空に消えて行く。

 巨大グリフォンが倒されると、グリフォンの群れは散って行った。

 俺は女の子にマナポーションを飲ませた。


「あんた、もっと早く飲ませなさいよ。あれっ、ゴットグリフォンが死んでる」

「魔法で死んだんじゃないのかな」

「やっぱ、私って天才」


「ジュエルスターにスライム回復液を掛けてやってくれ。俺は腰が抜けて動けない」

「もう、女の子に力仕事させる気。仕方ないわね。浮き上がれ、フロート」


 回復液が空中に浮かびジュエルスターに掛けられた。


「ありがとうございます。灼筋しゃっきん先輩」

「ちょっと。お礼を言う相手が間違っているわよ」

「いたのか、アンリミテッド後輩」

「いたのかだって、きー。この後おごりなさいよ」

「そうだな。最初にやられたジュエルスターは罰でおごりだな」


「酒場の千回ぐらい、ゴットグリフォンの素材でなんとでもなります」

「倒したのは私よ」

「一緒に参加した場合は均等に分ける。クランの掟だ」

「もしかして、俺も貰えちゃうの」


「あなた、クランのメンバーじゃないでしょ」

「結局もらえないのかよ。そう言えば自己紹介が、まだだったな。借金くずのアカジだ」


「私はアンリミテッドのリリー。さあ、ジュエルスターのおごりで飲むわよ」


 俺はまた何にもしないのにおこぼれにあずかったという事で悪評が立った。

 いい加減にしろよな。

 27時間分働いたのに無料とは、異世界の労働基準監督署は仕事しろ。


「ふん、若い者が何を抜かしている。お主、大して苦労しとらんじゃろう」

「ばあさん。居たのかよ。そう言えばそうだな」

「苦労の度合いから行けば、雑用係の給料でも払い過ぎじゃ。しかし、婆は血も涙もあるからの。出動1回で金貨10枚出そう」

「よっ、太っ腹」


 なんか、上手く丸め込まれた気がする。

 まあいいか。

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