03話.[そうなら嬉しい]
私は海崎縞のことが好きだ。
理由は単純に優しく、格好いいから。
小学生の頃からずっと彼女のことを好きでいる。
でも、高校1年生の10月、事故が起きて少し歪んでしまった。
同じ学年なのにやたらと小さい子が転びそうになって慌てて支えようとした結果、その子とキスすることになってしまったのだ。
最悪だったのは好きな縞の前で、だったということ。
怒りの感情がなかったと言えば嘘になる。
けれど勝手に支えようとしてああなってしまったのだからその子に本当は罪があるわけではないのだ。
「由乃」
「あ、深雨」
傍から見たら本を読んでいるとそのまま捉えられる感じ。
が、全く集中できていなかった、そこからのことを考えたら余計に。
事故とはいえ目の前でキスすることになったこと。
それを理由にして彼女の唇を何度も何度も奪ってしまったからだ。
「昨日、縞とハンバーガーを食べに行った」
こういうときに限って全てを話してくれる。
いつもなら大抵のことはうなずくか首を振るだけで済ます子なのに。
「なんでそれを私に?」
彼女は少しだけ考えるような素振りを見せてから「今度は3人で行きたい」と言ってくれた。
普通なら嫌われるようなことをしているのにどうしてこの子はこうなのだろうか。
キスをしながらも縞のことが好きな私ではいるものの、いつもそう考えてしまう。
本当は良くないことだと分かっているのだ。
それなのに、どうしてもこの子を見るとあのときのことを思い出してむしゃくしゃというか、こんのぉって感じになってしまう。
もう半分以上転びかかっていたというのに助けられると自分の能力を過信した私が間違いなく悪いのに、彼女は寧ろ被害者なのにずっと。
ちなみに、あれだけやっていてもなんにもすっきりなんかしなかった。
それどころか悶々というか、上手くいかないことに頭の中がごちゃごちゃになるというか、いやもう本当に勝手に何度も奪っておきながらなにを言っているんだという話だけど。
……それでも縞が好きなのは変わらないってどれだけ最低なのかと言いたくなる。
「深雨、しよ」
「ここは教室だけど」
それならこれで最後だ。
今度こそ縞に集中すると誓おう。
縞にもちゃんと言う、私がしていたことの全部を。
寒いと文句を言われるから速攻で外に出て速攻で引き戸を閉じた。
「これで最後にするから」
「うん」
最後ということもあって優しくそこそこの長さのものにして。
「ありがとう」
一方的にお礼を言って先に戻った。
そのまま他の子と盛り上がっていた縞のところに行き廊下に来てもらう。
説明して、彼女がなにかを言ってくれるのを待った。
「実はさ、私も深雨にしたことがあるんだよ、由乃がした日の翌日に必ずな」
「好きなの?」
「友達としては好きだ」
私もこの子も深雨を振り回してしまったことになる。
これからは絶対にそんなことをしないと誓いつつ、さらに抱えていた気持ちを真っ直ぐにぶつけたのだった。
「な~」
また違った場所で本を読んでいたら野良猫が近づいて来た。
餌らしい餌を持っていなかったのもあって帰ると考えていた自分。
が、予想に反してその子は私の足に体を擦り付け始めた。
多分、ここで撫でたところで本当に求めているのはご飯だろうから触れることはしない。
そうしたら勝手に飽きて帰ることだろう、時間の無駄遣いだったと考えつつ。
「捨てられちゃったの?」
なんか寂しい気分だったから結局誘惑に負けて撫でてしまった。
もふもふな毛、人間にも生えていれば冬は暖かいだろうなって妄想をして。
人と関わることがあるのか、まさかのまさか、太ももの上に乗って丸まった。
ゴロゴロって喉を鳴らして、こっちがなにかをできたわけでもないのに申し訳なくなってしまった。
あのふたりの側にいるときは自分もこんな感じだ。
でも、本当はいいことのはずなのに寂しさがとてつもない。
ぽっかり穴が空いてしまった感じ。
本当は自分がキスをしてほしかったのだろうか?
それとも、あれをしておけばあのふたりが、少なくとも由乃はいてくれると考えていたからだろうか。
「にゃ~」
どうやらこの子には友達がいたみたい。
私の足から下りて、1度こちらを見て鳴いてからどこかへと歩いていった。
時間に余裕があるこちらは引き続き読書をしていくことに。
けど、これがどう考えても失敗だった。
気づけばバスが走らない時間になっていて歩いて帰る羽目になった。
別にそこまで傷ついていたというわけでもないのに、多少引っかかる程度であったのになにをやっているのだろうか。
とりあえずは母と姉に連絡を済ませ、ゆっくりと歩いていく。
今日に限って遠い場所を選んだのが逆効果で、下りと寒さが体力を奪っていった。
それでも立ち止まるわけにはいかないから30分毎にぐらいに連絡をしつつ前を目指して歩いていくことに。
「着いた」
冷え切った手で鍵を開けて中へ。
「おかえりなさいっ」
「ごめん、本を読んでいたらバスの時間が……」
「いいわ、無事に帰ってきてくれたのなら」
細かく連絡していたのが良かったのだと思う。
友達が少ないというのも逆にいいのかもしれない。
大事なときに結局携帯を使えませんでした、ではアホらしいから。
とにかく冷え切った体を暖めるためにお風呂に入らせてもらうと痛いぐらいに熱かった、それだけ冷えていたのだと考えると不思議な感じがする。
長距離を歩くなど初めての体験だった。
……やはりそこまで不安だったということだろうか。
「あんたなにやってんのよっ」
「気づいたら真っ暗だった」
「普通、本を読んでいたのだとしても気づくでしょ?」
「照明が最初から点いていたから、そもそもあそこに着いた時点で暗かった」
心配してくれるのって嬉しい。
こういうときは素直になるのが1番だ。
ありがとうとごめんをきちんと言っておかなければならない。
「はぁ、まあいいわ、これからは気をつけなさいよ?」
「ありがと」
筋肉痛にまず間違いなくなるだろうし、残念ながら明日は普通に学校がある。
それでも今日こうして帰ってこられたことに凄く安心した。
2度と同じような馬鹿はやらかさないと誓いつつ寝たのだった。
「深雨、肩を揉んでやるよ」
「ありがと」
足の方が重症だった。
そもそも非力な自分が歩くには無理な距離だったのだ。
帰らなければ死ぬという空気があったからこそなんとか頑張れた。
「純華に聞いたぞ? 昨日無茶したんだってな」
「気づいたらバスの時間が終わってた」
昨日は帰ることだけに集中していたけど、その間のことが気になる。
もうふたりは仲良くやっているのだろうか。
想いを由乃はぶつけたからそうなっている可能性は普通に高い。
「足は大丈夫なのか?」
大丈夫じゃないと言ってもどうにかなるわけではないから大丈夫と返しておく。
「万が一のためにお金はちゃんと持っておいた方がいいぞ」
1千円持っていたから途中途中で温かい飲み物を飲んだ。
尿意を催した際には公衆トイレが偶然見つかった際に駆け込んだ。
怖い思いというのはあまりしなかったと思う、幸い、人とすれ違うことも少なかったから。
「あとは私にでも連絡してこいよ、そうすれば迎えに行ってやるのに」
「遠かったから」
「それでもだ、深雨をひとり暗い中歩かせるぐらいなら迎えに行った方がマシだ――なんてな、純華から連絡が来ても動かなかったことを反省してる」
「縞が悪いわけじゃないから」
これまでと違って彼女と仲良くすると敵視されてしまわないだろうか。
由乃からすれば面白くない光景だ、しかも心配をしているとまでくれば待ったとなにかを言いたくなるか、私だけしかいないときに自由に言ってくるかもしれない。
私はふたりのことを結局のところあまり知らないのだ。
ふたりの間にあるものと私とふたりの間にあるものとでは貧弱過ぎて比べることもできないぐらいのレベルで。
「やっほー」
「よう、あっちはいいのか?」
「うん、それよりふたりのことが気になってさ」
「深雨が昨日無理したからさ、肩を揉んで少しでも回復させてやろうと思ってな」
「読書が好きなのは分かるけど、外で遅くまでいちゃうのは不安なところだよ」
あくまで来てくれる限りは普通に接すればいいか。
少しして休み時間が終わったことにより丁度いい区切りとなった。
授業が始まったらある程度は集中しつつ、由乃と縞を見る。
由乃は窓際、縞は私と同じ廊下側、ただし完全に壁に面している形となる。
ふたりがもし付き合っているのだとしたら気にする必要のないこと。
でももし、付き合っていなかった場合は少しだけ改める必要があるのかもしれないとやはり考えることになった。
放課後までふたりが話しているところや、それぞれの友達と話をしているところを見ていたものの、特に変わった様子はなく。
「深雨ー、なにぼうっとしているの?」
あっという間に放課後になって今日のところは人間観察を終えることにした。
ふたりが楽しそうに会話しているのを見ながらの帰路となっていた。
「縞、今日縞の家に行きたい」
「別にいいけどなにもないぞ?」
「縞といられればいいから」
読書はやめてしまったものの、積極的にアピールすることを始めたようだ。
縞は少し困ったような声音で「あんまりストレートに言うなよ」と言った。
少しは影響を与えられているみたいで、気恥ずかしそうに頬を掻いていた。
「そうだ、深雨も来る? 縞の家に行けるよ?」
どうしてそこでヘタってしまうのか。
ふたりきりでいいというのに余計なことをしてと内で呟く。
「今日はお母さんに早く帰ってこいって言われているから」
「あー、確かお母さんは専業主婦なんだっけ?」
「うん、だから縞の家で楽しんで」
「ありがとっ、あ、来なくて喜んでいるわけじゃないからねっ?」
「由乃、それだと喜んでいるように聞こえるぞ」
由乃がわーわーと言いつつ縞と歩いていった。
本を読みたいのもあったし、この前遅く帰ったことで気をつけているところもあったのでとりあえず1ヶ月ぐらいは大人しく寄り道せずに帰りたいと思う。
せっかく家の雰囲気も良くなっているんだから寄り道なんて必要ないだろう。
そう、誘われないことを直視せずに上書きして帰ったのだった。
「深雨、ちょっと来い」
1週間が経過した頃、帰ろうとしていたところに急に縞がやって来た。
しかも何故かすごい小声で、誰かに見られたくないのだろうか。
「ふぅ、またハンバーガーでも食べようぜ」
「由乃はいいの?」
「たまにはな、なんか仲間外れにしているようで嫌なんだよ」
寂しかったのは確かだから素直に甘えることにする。
この前と違って今回は安価で美味しいハンバーガーを頼んで食べた。
「美味しい」
「ソースがついてるぞ、じっとしとけ」
「ん……、ありがと」
「そのまま帰ったら深雨が恥ずかしい思いをすることになるからな」
やっぱり縞は優しい。
由乃のことを考えたらこうしてふたりきりで行動はするべきではないけど。
そういうので遠慮しなきゃいけなくなるのは嫌だな。
「暗い顔をしてどうした?」
「いいのかな、由乃に内緒でこんなこと」
「別にいいだろ、そんなこと言ったらこの前だって私と由乃だけで集まったろ?」
「でも、由乃は縞のこと」
「いいんだよ、というか、なんかよく話すようになったな」
話すのは好きだからだ、分からないだろうけど。
10月ぐらいからだからまだ2ヶ月ぐらいしか経過していない。
それでも由乃をきっかけにして一緒にいられるようになったんだから、いたい。
「もしかしてこの前もそれで遠慮したのか?」
「うん、あとはお母さんやお姉ちゃんに迷惑をかけてしまったから大人しく帰ろうって思っていたの」
「ああ、その前日は帰宅時間がすごい遅くなったんだよな」
「うん。でも、縞が誘ってくれたから今日は破ってみた、一緒にいたいから」
好きの意味も違うと思うけど、一緒にいたいのは確か。
それだけでいいと思う、縞がいいって言ってくれているんだから気にせずに真っ直ぐ。
「一緒にいたいって言ってもらえるのは嬉しいな」
「縞は優しいから、由乃もそうだけど」
「由乃なあ、もう少し元気さを抑えてくれるともっといいな、深雨は由乃の半分ぐらいは明るくなってほしい」
由乃の半分ってそれは縞ぐらいになれということだ。
無理、姉とだって絶望的なまでぐらいには差があるというのに。
「ごちそうさまでした」
「あ、待っててくれっ、いますぐ食べるからっ」
「急がなくていいよ、ゆっくり食べてくれれば一緒にいられる時間も増えるんだし」
もう夜ご飯はいいと母に連絡してあるし、そもそも食べることはできないぐらいのお腹具合。
それなら急いで帰る必要もないだろう、彼女が来てくれたのだからもっと一緒にいたい。
もちろん、彼女が帰りたいと言うならそれはもう仕方がないことだから帰るつもりではいる。
母と話したいし、姉とだって話して一緒に寝たいんだから、どっちが大切かではなくてどっちも大切なのだ。
「ど、どうした? 風邪でも引いているのか? それとも、私の妄想、夢か?」
「ううん、私だよ、現実だよ、一緒にこうして来ているんだよ」
「待っていてくれ、食べるから」
特に話せなくてもこうしていられることが嬉しいって分かった。
この前みたいななにかを失ってしまった感じは全くしない。
「帰るか、こういうときに先に会計システムはいいよな」
「うん、あ、お金足りてた?」
「大丈夫だ、行こう」
うん、確かに縞が驚くぐらいには喋りすぎていると思う。
喋るよりも聞く方が好きだった自分にとって、これは良くないかもしれない。
会話を遮るようなことはしていないものの、話しすぎる人間は良く思われないかもしれないからだ。
「ハンバーガーの難点は手を洗っても臭いが簡単には落ち着ないことだよな」
「ははは、確かにそうかもしれない」
「少し触れるぞ、手は洗ったから安心してくれ――んー、熱が出ているわけじゃなさそうだな、深雨は元々体温が高いし」
「風邪じゃないよ?」
「なにが急に深雨をそんなに変えたんだ?」
なにがってこの前のことに決まっている。
かなり寂しかったんだ、もう来てくれなくなると考えていたらあんなことになった。
もうあれだけ歩くのはごめんだ、だからきっかけになるような似たようなことがなければ起こらなければいいなって。
「まさか、キスされたいのか?」
「キスというか、誰かがどんな理由であれ必要としてくれるのが嬉しかったのかもしれない」
「ま、確かに頼ってきてくれたら嬉しいわな」
しかもそれが由乃という明るく可愛い女の子だったから余計に。
「私もやっておいて言うのもなんだけどさ、もうやらせるべきじゃない」
「ないよ、由乃は縞が好きだから」
「それは知ってるけどな、直接ぶつけられたし」
なんでこんな反応なのだろうか。
気にしている素振りを見せていたのは彼女も同じなのに。
マイナスな思考ばかりしてしまって進めない、なんてタイプではないだろうし……。
「深雨」
「今日はありがと、たまにでいいから私の相手もしてね」
別れ道に来てしまったらもうお互いに帰ることしかできない。
別れるときは寂しいけど、引き留めようとすればするほど相手に迷惑をかけることになるからできないのだ。
「待て、私の家に来ないか?」
「縞の家に? いまから行ったら迷惑なんじゃ……」
「大丈夫、部屋に直行すれば問題もない」
「あ、じゃあ、連絡してからでもいい?」
「おう、ゆっくりでいいからな」
21時までに帰るという約束で許可を貰った。
現在はまだ18時半ぐらい、ある程度の余裕はある。
それでもお風呂に入ったりしたいだろうから20時には出ることにした。
「お邪魔します」
リビングの電気が点いているから彼女の家族がそこにいる。
けれど彼女は私の手を掴んで部屋まで無言で運んでくれた。
「飲食店に行った後って制服とかも臭いがついているよな」
「あ、臭くないかな?」
「気にするな、遠慮なく自由なところに座ってくれ」
部屋の中央ぐらいにはカーペットが敷いてある。
ただ、その更に向こうにはなにも敷いていない場所があるからそこに座らせてもらった。
「冷たいだろ?」
「……ここならあんまり被害も出さないかなって」
「いいんだよ、いちいち気を使いやがって」
こういう大きさのカーペットは洗うのも一苦労だから汚さないようにしたかったのだ。
その点フローリングに直に座るのであれば簡単に掃除をすることができる。
もしかしたら靴下も臭いかもしれないしと不安でいっぱいだった。
「1週間で多いときは何回したんだ?」
「6回、かな、しかもその1回の回数は大体10回ぐらいはしてたかも」
「それは全部由乃からか?」
「うん、全く分からないから任せていたけど」
少なくともキスをされて喜んではいなかった。
だってあの子は関わるようになったときから縞のことが好きだって教えてくれていたから。
内にあったのはどうしてこれぐらい本命に積極的にならないのかという気持ちだけ。
「悪い、変なことを聞いたな」
「ううん」
「はぁ~、自宅って落ち着くよな」
落ち着く、お風呂の時間なんかも好き。
でも、本当はご飯を食べるときが1番好きだった。
意外だって言われるかもしれないものの、このふたりよりも本気を出せばいくらでも食べることができる。
「ちょいちょい」
「なに?」
「膝貸してくれ」
「いいよ」
これから寒さがもっと酷くなることを考えてタイツを履こうかなって考えていた。
なんでいまという話ではあるけど、生足がすぐ側にあるよりはまだ抵抗感もないだろうから。
「……小学生の妹ができたみたいだ」
「縞お姉ちゃん」
「純華が羨ましいな……」
「もしかして眠たいの?」
「そうだな……、なんか食べた後だからか眠たいんだ」
それなら帰った方がいいだろう。
下ろすと言って頭を優しく両手で挟んだらその両腕を掴まれてしまった。
「いい、まだいてくれ」
「でも……」
「取って食べたりなんかしないからさ」
……それならいいか、まだ19時にもなっていないわけだし。
彼女の髪をなんとなく撫でてみた。
ぼさぼさなように見えてそうではなかったらしいと気づく。
「おやすみ」
「ああ……」
自分の部屋とはいえ、こうして私もいるのに寝られるのは信用してくれているからではないだろうか。
もしそうなら嬉しい、あくまで想像だから本当かどうかなんて分からないけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます