第2章 不思議な旅 第8話 潮流

潮目は至る所で変わりつつあるようだった。


カリブ海沖では、53番が取り沙汰され、スエズ運河沖では、その所業がトルコでの報道で明るみになっていた。


日が昇るにつれて真実が分かりやすく世界の民衆の目につくようになり、都市伝説として扱われてきた事を次の時代の常識として受け入れる、心の準備を促す土壌づくりは整いつつあった。


座礁船には、パンドラの箱が大量に積載されており、荷主の意図しない場所で開かれた秘密の中身は、予定の災厄や大混乱は起こさなかったが、強烈な事実を知った者の心に衝撃波として押し寄せ、希望を探る、フェイクな世情を疑い真実を求める機運は高まりつつあった。


それでも、寄せては返すリアルとフェイクの波に見え隠れする真実に、目を留めようとする者はまだ少ないようで、信じるか信じないかは各自しだい、先導する先触れの者達の苦労も未だ報いは少なく、扇動される多数の乗る船には不安はあるが船頭は無く、八口分の箱舟の時代を思い起こさせる様相は、緊急放送の大波か、戦火の火ぶたが切られる報道の時を待つしかない様にも思われた。


御禊みそぎはら罪穢つみけがれが、荒潮あらしほの しほ八百道やほぢの 八潮道やしほぢの道中、台湾海域たいわんかいいきの辺りで濃く淀み始めた頃のこと。

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