第2章 不思議な旅 第7話 軽挙妄動 -源流へ-
界隈の者は浮足立っていた。 創られた動乱の中にうごめく新しい時代の予兆に。
日本国内は未だ緊急事態宣言下にあり、ヨーロッパ方面では感染症の第3波を恐れて
またロックダウンに移ろうとしている頃だった。
もうそろそろだろう。
秘密裏に動く米軍の成果を、さも見越したように思い込んでいた集団は、またしても
裏切られた気持ちに陥ったかもしれない。
新たな幕が開くようなはっきりと大衆に分かる事態が起こると信じ切っていた者達は何も変わら無い普段の暮らしに溶け込むことに、前よりも違和感を感じだしていた。
変化は季節が春を告げるように穏やかで、緩やかな道を選び、辿っていた。
兆しを掴む勘の鋭い発信者の一部は、己の信じた現実との食い違いと潮目を読み取る未熟さに苛まされ、フォロワーの信用を失いながらも、視野を広げた実相を掴む目と、冷静沈着に事態を把握する力を真剣に養い始めなければならなかった。
時代を見通す目というものは、一朝一夕には得られず、現象を追いかけては逃げられるばかり、原因の源流に辿り着かなければ持ちえないものなのだろうか。
ただ、源流を遡る者を簡単には迎え入れてはくれない様で、言論・情報弾圧の
アルゴリズムの波は、太平洋を越え、日本のYouTuberさえも押し流そうと、誰かにとっては都合の悪いキーワードを含む内容に、容赦なく押し寄せては注意や
警告を与え、さらっては削除していった。
そのリズムは、この時期の世界の至る所に波及していたのかもしれない。
時折、軍事作戦の一端を垣間見せる動画が押し寄せては、現実の暮らしが高ぶった心の波を押し返し、さざなみ立たせるフェイクリアリティの日常は悪酔いさせていた。
表の国内ニュースも、感染症のプロパガンダで飽きた民衆をなだめるように、
日米首脳会議での両首脳のスタジオ入りの動きに合わせ、中国包囲網で動く世情を
垣間見せはじめた。
「むにゃむにゃ」と、言いたいことも言えないそんな世の中で、アルゴリズムを避ける発信者達は、オールドメディアを飲み込む、新しいプラットフォームの到来の波に乗り変えようと待ち構え、全世界を飲み込む真実の、一斉緊急報道のビッグウェーブを恋焦がれていた。
潮目は徐々に変わり始め、世界に張り巡らしていた報道機関のフェイクは曝された。
「一度に開く梅の花、梅で開いて松で治める世と成りたぞよ」
世の建替え建て直しの言葉を髣髴とさせる新しい時代の予兆は、
新しい時代がウメの苦しみで始まることをも感じさせていただろうか。
一歩間違えば大惨事、立て分けを始めていた潮流は、曖昧になる境界線や今までの枠組みを難なく乗り越え、表裏をあざないながら世界観を新調しようと、うねりを増し始めていた。
「大和魂とは、松の心である。
松の心とは、時節を待つ心であり、いつまでも変わらぬ誠である」 茂吉翁
想いが言葉になり、言葉が行動をひき起こし現象となる。
その思想の源流を訪ねた時、その頃民衆が待ち望んでいたはずの結果は、
世界の果てまで寄せた第一波、唯物思想の答えだった。
第二波が想いの源流を遡り、霊(ヒ)の元へと返す頃、すべての流れは合流し
その風潮が思いの竹を揺らし合わせ、世界観の答えあわせとなるのだろう。
そんなことを考えながら、南シナ海の荒波の動きを睨み眺めていた。
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