第1章 出立  第17話 「いよいよ」だ

ひとしきり、当時のことを思い返し、読み返しなどしていたら、

約束の日がきてしまった。

ある程度の物は揃えられたのかもしれない、そう思った時風が吹いた。


「いよいよだね。」


「ああ、いよいよだ。出立しようか、準備は良いかい。」


「うん」


その弾むような返事を聞くと、私は龍形となり、彼の足もとに身をかがめた。


「ぼ、僕一人でも翔べるよぉ」


「遠慮はいらないよ、今のうちから慣れておけば良いさ、さあ出発だ」

「二月はシートベルトを締めて!・・」


「えっ!?」


親様へ思いを馳せた瞬間、時空の扉の前へと引き寄せられた。


「さあ、行くが良い」


直接頭に心地よく響く声を聞き取り、まばゆさに目を細めながら、当時を思い起こすと扉のひとつが開きつつ迫ってくる。

髭が触れるかと思った瞬間、真っ白な扉は私たちを飲み込んだ。

 

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