第1章 出立 第13話 天国と地獄
天国は、ご飯を食べるのに長い箸を使うんだ。
地獄は、ご飯を食べるのに長い箸を使うんだ。
その説話を聞いた時に違いが分からなかった。
要は、にこやかに食べさせ合うか、その思いが湧かずに餓死するか、
人間の心次第でこの世も決まるということだ。
昔、話してくれたその人は、数奇な運命を辿り、チベットから持ち帰った曼荼羅を、奇しくも釈迦の誕生日4月8日に見せてくれた。
特別描写が優れているというようなことはなく、民間信仰のご家庭で大事にされて
いた物だという。
中国の弾圧?何かの経緯で譲り受けたとのことだったが、その当時の自分は
要領を得なかった。
それよりも、極道の世界から身を洗い、神様と友達だとワハハと笑うその人の、
人生に興味を抱いた。
極道には十ヶ条があるらしい。
それを見て極道入りを決めたみたいだ。
中身は教えてもらえなかったが、神様を感じたという。
もともとの神様好きだった訳だ。
舎弟達にシャブ売りから身を引かせる為、見せしめにその恐ろしさを見せつけようと、自らの腕にまとめ射ちしたその時、悲鳴を上げて気を失い、まばゆい光を
みたという。
その時からのお付き合いとのことだった。
それから自分の人生が自分の物でなくなり、行脚の果てで出会うこととなる。
一カ月ほどだっただろうか、家に逗留していたのは。
「神様は、人じゃないんだよなぁ、光なんだよなぁ」
我が家の神床にある、宗祖の写真を見て言った言葉である。
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