第1章 出立  第12話 十字架を背負って

「プリウスかコロヌスか」 それが問題だった。


勝利を確信していた頃は、頭の中でいろんなところをドライブしていた。


が、それも虚しく農奴の日々を送るのだ。


どうせ人類は奴隷から解放されるのだ、時間の問題だけは止む無し、

そう自分に言い聞かせ、アメリカ国民の苦しみなど知ろうともせずに

賭けに興じた罰を自分に課し、農務に励む決意をした。


人類の業を一身に受けて贖われたイエスに思いを馳せ、

自分の十字架は責任を持って背負うことにしよう。


科学技術は量子の頭脳を造るほど発達した時代に、まさかとてつもない人間の精神の未熟さと野蛮さを目にすることになるとは思いもしなかった。


便利だけでは幸福にはなれないと痛感させられた出来事の一端だった。


生命の安全、お互いが信頼しこれが確保されないと得られないものなのだ。


いくらこの先、自分たちの暮らしに都合の良い金融体制に変わろうと、

フリーエネルギーなるものを共有することになろうと、自分達自身が

進歩向上しない限りは、それを持て余すだろう。


裁くべき悪は、自分自身の中にもあることに気付き、

人のことを言えた義理ではないなとふと考えた

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