第13話 変態

さて、前回私の表向きの英雄デュエム=エスタ=チェルタルドの物語を語ったところであるが、

今度は本当のデュエム=エスタ=チェルタルドについて語ろうと思う。

私は何を隠そう周りの人間が嫌悪し、忌み嫌われるレベルのドMだ。


私はチェルタルドという小さな農村の出である。

その村の領主の家に末っ子の長男として生まれた。

私には姉が3人おり、皆性格が全く違っていた。

メンタルを削るのを得意とする長女ユアン。

肉体的に消耗させるのを得意とする次女キサラ。

社会的に私を抹殺しようとしてくる三女ミルテ。

この姉たちに囲まれ幼少期から13歳までを過ごした。

三人とも多種多様な責め苦を私に課してくださり、今思い出しても興奮する。

これらはすべて愛ゆえにということなのだろう。

そして彼女たちから施された情操教育によって私はドMとしての素質を開花させていった。

痛みや悲しみが快楽へ変わったあの日の事を私は今でも忘れない。

私が13歳になるころには完全に調教されきっていた。

しかし、それと同時に私は姉たちの責め苦にどんどん慣れてしまい、物足りなさを覚えるようになったのだ。


そこで、国内ではスパルタ教育で有名な上に、1年後には入学者が5分の1にまで減ってしまうという士官学校への入学を目指したのだ。もともと勉強はできる方だったし、剣の腕にも自信があった。

表向きは強い軍人になり、祖国を守ることであったが、本当はもっともっときつい責め苦が、欲しくて欲しくて仕方なかったのだ。入学前日にはまだ見ぬ責め苦に興奮しすぎて夜眠ることができなかった。


入学後は最高の環境に日夜興奮し続けていた。

全寮制の学校で、ひたすら繰り返される無茶なトレーニングに、体罰、叱責。

そして、誰かのミスから起きる連帯責任という名のさらなるしごき。

途中から私は連帯責任という言葉を聞くだけでも興奮できるようになっていた。


しかし、それも長くは続かなかった。

入学してから1年が過ぎるころ、私は徐々にこれらのスパルタに慣れてきてしまったのだ。


そのころから私は、自分の死について考えるようになった。

私の理想の死は、圧倒的な力の前に、虫けら同然に、私の今までの人生がすべて無意味であったかと思わされるほど一瞬で消し炭にされ、見向きもされぬような死なのだ。

私をゼロにしてくれるようなそんな力に憧れと畏怖、そして興奮を覚えていたのだ。


それからというもの、私は自己鍛錬という無茶なトレーニングを繰り返していた。

それもこれもすべては圧倒的な力を求めていたからなのだ。

しかし、圧倒的な力はそうやすやすと私の前には表れてくれなかった。

これも神様からの焦らすというプレゼントなのだろう。


私は士官学校を主席で卒業後、コルトーナ砦に配属され、そこで数年間兵として勤めたのち、砦の主長となっていた。

その間も自己鍛錬は怠らなかった。

そして、キリクの第1次侵攻が起きたのである。


本当は私一人で敵陣に切り込みたかった。

そして圧倒的な数を前にごみの様に蹂躙されたかったのだ。

そのために、ついてくるなという旨の無茶な作戦発表をしたのに、アイツらと来たら私の気も知らず、

涙ながらに『私たちは地獄まで隊長にお供します!』といってくるではないか。

私は少し苛立ちを覚えた。


その後英雄と呼ばれるようになった私に転機が訪れた。

そう。四極の魔女との出会いである。

本当に興奮した。彼女たちは圧倒的に強かった。

そして私は毎日のように、彼女たちにごみクズの様に屠られる様を想像しては、興奮していた。


特に忘れられないのが、リーテ女王様だ。

彼女の敵を一瞬で黒焦げにするほどの威力を持つ雷撃、そして敵を精神的に追い込み同士討ちをさせ、気が付けばキリクという国家の心を殺したあの口撃。肉体も精神も徹底的に追い込んでくださるその姿はまるで女神であった。

私は神に感謝した。


しかし、そんな夢のような時間はすぐに過ぎ去ってしまったのだ。

キリクはリンク王国への侵攻をやめ、不可侵条約が結ばれたのだ。

そしてあの国王というくそジジイは彼女たちを恐れ国の僻地へと左遷したのだ。

許せなかった。しかし私にも英雄としての立場があり、どうすることもできなかった。


私はその後平和な王都で暮らしていた。

広場には私の銅像が作られ、郊外に別荘を持ち、社会的には成功を収めていた。


しかし、私はこんなものを求めていたのではない。

私は完全に腐っていた。


私は意味もなく王都をぶらついていた。

その時、魔術師の格好をした女性2人と、1人の少女とすれ違ったのだ。


その時私の本能が蠢き始めた。

なんだこの感覚は。

私は彼女達の後を追った。

彼女達を探しながら、私はこの自分の中の蠢きの答えを探し始めていた。

そして彼女達に追いつき、声をかけたとき、私は自分の中の蠢きの答えを見つけた。


「リーテ女王様」

そう声をかけた時、私の股間ははちきれんばかりに怒張していた。

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