3 キミ表情と中身別人じゃない!? だがそれもいい!

『正直血液型占いとか全然信じて無かったけど、占い通り良い事あった! いや、ほんと……サイコオオオオオオオオオオオッ!』


 こ、これ本当に雪宮さんの心の声なのか? なんか違う奴の心読んでないか俺!?

 いや、あの……普段と別人ですやん。落ち着いてクールな感じが全くしないんだけど……あの、どちら様でしょうか。いや、雪宮さんなんだけど……。


 ……いやでも成程なァ! これがギャップ萌えって奴かァ!

 そういう一面もすんげえ可愛いと思います!

 サイコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


 ……ってちょっと待て。

 雪宮さんが可愛いのは当然として、ちょっと待て。


 雪宮さん……俺と隣になったからテンション上がってる感じなんですか……?

 それってつまりどういう……。


「……」


 !?!!!!???!!??!?!?!??!?!?!?!?


 ちょ、ちょちょちょちょちょっと待て落ち着け落ち着け落ち着くんだよォッ!


 そ、それって俺の事嫌ってない所か……その……なんでしょう。

 とても好意的に見て貰えてるという事に……。


 ……何故に!?

 何故に俺なんかを!?


 こんな元弱小野球部員以外に特徴ねえような俺の事を何故に!?


 そして超能力をオフにしていなかった為、まだまだ雪宮さんの心の声が流れ込んでくる。


『お、落ち着け。落ち着け私。落ち着かないと多分にやける。顔に出さないように一旦平常心…………えへへ嬉しいなぁ』


 俺もすげえ嬉しいんだけど……いや、ほんと何で俺なんですかね……。


『……でも嬉しいだけで止まるな私。勇気を持って踏み出していかないと、一年の頃からの片思いが最後まで片思いで終わる……ああああああ! 今年こそは榊君と夏祭りとか行きたい! いや受験勉強とかしなきゃだけど……というか榊君と受験勉強がしたいいいいいいいい!』


 俺もおおおおおおおおおおおおッ!


 ……と、一緒にテンション上がりまくりだったけど、結局なんで俺なのかみたいなのは分からなくて。

 ……そしてこれ以上探るのは駄目だと、ようやく冷静になれた。


 超能力をオフにする。


 結局魔が差してやってしまった。

 やった結果、とても嬉しいことが知れたけれど……それでも俺にそんな思いを向けてくれる人の心の中を読み続けるような真似は、心苦しくてちょっとできない。

 好きな相手で、好きになってくれた相手だからこそ、より尊重するべきだと思うから。



 ……だから、もう雪宮さんの心は覗かない。



 とかいう宣言も、その内結局崩れるのではないかって思う。

 一度踏み込んでしまったから。

 俺は踏み込むような奴だったから。結局この力を乱用してしまう気がする。


 自分がそういう人間だって事は今日分かった。


 それでも……抑えられるだけ抑えよう。

 今も無茶苦茶何を考えているか読みたいんだけどさ。


「……」


「……」

 

 で、だ。

 そういうイレギュラーなやり方で向うの感情を知ってしまった訳で……多分うまくやればうまくいきそうなのは分かったのだけれど。

 それを知った方法がイレギュラーすぎて、踏み込めない。


 俺と雪宮さん。

 その間にあまりにも接点が無さ過ぎて、どうやって話すきっかけを作ればいいのか分からない。


 ……いやマジでどうしよう。

 最低でも夏休みまでに連絡先の交換位はしたいんだけど。


「……」


「……」


 なんかそれすらもハードル高くないですかね!?

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