外の世界

「マリーニそれは、なりません」


そこは、人類未開の地とされる壁の外の世界。


銀色の古びた鎧を身に纏った初老の男は、小躍りでもするかのように、あわてふためいていた。


「キャハハハハ」


菜の花のワンピースを着た少女は、無邪気に、走り出していた。


「マリーニ!マリーニ!」


銀色の古びた鎧を身に纏った初老の男は、あわてふためき後を追う。


「あ~あ、あのふたりまたやっているよ」


執事の風貌をした男は、あきれたように、いった。


「おい、アレンサ!ぼーっとしてないで、はやくお前もこっち来て手伝え!」


銀色の古びた鎧を身に纏った初老の男は、相も変わらず小躍りするように、走り続けている。


「わんわんわん……わん」


そのこぎたらしい犬は、どこからともなく、そこに、あらわれた。そして……


「あー見たことないわんわんさんだ!ねぇズデンこのわんわんさんは、何て言うの?ねぇ……」


「マリーニ……」


ズデンは、その古びた鎧とは、につかない、まがまがしいつるぎを静かに振りかざす。


その男は、左にすこし首を傾け、そして、すべてが、まるできつく絞られたぼろ雑巾のように、ねじれ、そこに、絶命していた。

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真実のリンゴ jen @jen-1979

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