オカルトバスターズ!
「幽霊なんかいないよ〜。もうバカバカバカー、ってわわっ!」
小石につまずいた
「ぐ、痛てーって! もういいかげん慣れろよ!」
「無理なモンはムリ!」
田舎とも言えない、かと言って都会とも言えない、中途半端なこの街の公園はかなり広い。
永遠は愛車のホンダエイプ一〇〇を押しながら、刹那は相棒のグロック18Cを構えながら、深夜のパトロールをしていた。
「なぁ、それ意味あんの?」
「
「ジョンじゃダメなの?」
刹那の形のいいお尻からやや上、ちょうど上着で隠れる辺り。そこにあるプレーンレザー製ヒップホルスターにオークションで落とした旧時代のカート式リボルバー、コルトディティクティブスペシャル、刹那命名の『ジョン』が鎮座している。
「
その日、通算三日目の巡回は何事も無く終わった。
「行くか」バイクをキック始動した永遠がミラーに掛けていたジェットヘルメットを被る。
「うん」ホルスターに銃をしまいながら頷いた刹那がスカートの下に履いているスパッツを見せびらかすように大胆に大股を開いてタンデム席に跨る。
バイク用ではないが特殊部隊等が突入の際に被っているヘルメットはパトロール中から被りっぱなしだ。
「と、と、と、ととと永遠⁉︎」
「どーした?」
「ひ、人玉っ!」
永遠が刹那の指差した方向を見るのよりも速く、収めたばかりのショルダーホルスターからグロックを抜く。
条件反射の様にトリガーが絞られる。
「バカっ、ありゃ警邏のライトだっ」
慌ててグロックを持つ刹那の腕を抑え込む永遠。
しかし刹那は抜き様にフルオートモードにしていた。
「ブババババッ」と音を立てて数発のBB弾が撒かれた。
「いてっ! 誰だコラッ!」と警官の声が響いた。
「掴まれッ!」
永遠が即座にクラッチを握り、ギアペダルを踏み込む。
刹那は左手でタンデムベルトを握り締め、両足は慌てて置き場所を探す様にパタパタと二度空中を踏み、三度目に正しい位置に収まる。
「飛ばすぞ!」
急なクラッチ操作とラフなアクセルワークに加えてタンデム席に女子高生。
盛大にフロントタイヤを浮かしながら加速していく永遠のエイプ。
ここがウィリー大会の会場なら間違いなく優勝。
後ろから「待てっ」と叫ぶ声が永遠にも届いた筈だが、免許取得から一年以内でのタンデム・一八歳未満が持っててはいけないエアソフトガン・バレはしないだろうが乗車用でないヘルメット・極め付けに警官への発砲。さすがに数え役満なのは一目瞭然。これで馬鹿正直に止まる阿呆はいないだろう。
一度は走り寄ろうと試みた警官が自転車を止めた場所まで戻る頃には、走り去るバイクの音は諦めるに充分な程遠ざかっていた。
最短コースで家までの道を走ったつもりの永遠だったが、心理的に左方向へと逃げていた為、やや遠回りをした
家の近くでエンジンを切り、惰性で家の前まで転がっていく。刹那もタンデム席から降りて音を立てない様に隣の家に消えて行った。
「明日からのパトロールはしばらく歩きだな」ヘルメットを脱いだ永遠が夜空を見上げながら呟いた。
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