学校イチの美少女が実は残念系ガンマニアな学園探偵(自称)物語

笹岡悠起

学園探偵VS幽霊!

スクールディティクティブ!

「おーい、永遠とわー」


 教室の入り口から窓際に座っている少年まで届くように発せられた大きな呼び声。

 ただでさえざわついている休憩時間。しかも今は昼食後だったので、その声がする方を向いたのは呼ばれた本人である永遠と幼馴染の刹那せつなだけであった。


 呼ばれた当の本人よりも早く少女が立ち上がり、夏だと言うのに一年中羽織っているブレザーのポケットに手を突っ込んで肩で風を切りながら声の主に歩み寄る。

 立ち上がり際、弾込めしていた予備弾倉マガジンを慌ててショルダーホルスターへ収める。側面に黄色く『G』と書かれたマガジンから零れ落ちたBB弾が床に落ちて跳ねる。すぐ気付いた少女は、互い稀なる反射神経で歩きながら空中でキャッチし「レア物の弾だもんね」と呟いた。


 少年は歩み寄る刹那の方をちらりと見て、小さな溜息をつき読みかけの雑誌を開いたまま机の上に伏せゆっくりと立ち上がった。雑誌の表紙にはモンキーやダックスといった小さなバイクの画像が所狭しと並んでいる。軽く頭を掻いてから刹那の後を追いかけた。


「何? 依頼? それなら永遠じゃなくって最初に所長のこの私を通してよね」と男子生徒の顔を睨みつける。

 間に合わなかったか。と、いった表情だがさほど責任を感じている様子のない永遠が刹那の後ろで片手でゴメンとゼスチャーをしている。


「で?」と更に睨みを効かせつつ自分の顎を相手の喉元を刺す勢いで更に顔を近付ける。

 彼女なりに凄んでいるつもりだが、アメリカ映画、その中でも刑事物の観過ぎだ。今日の彼女の中身はダイハードのジョンマクレーンかも知れないし、リーサルウェポンのマーチンリッグスかも知らない。


 日本人離れしたスッと通った鼻筋に透き通るような白いきめ細やかな肌、少したれ気味な奥まった瞳はやや青みかかった灰色。

 本人に自覚は無いが、彼女は間違いなく学校イチの美少女だ。そして更にはち切れんばかりに膨らんだバストと引き締まったウエストから繋がるヒップラインと、抜群のプロポーションの持ち主。そんな女の子に鼻先5センチの距離で息をかけられながら詰め寄られて、依頼者の彼は顔を赤らめた。


「……いや、あのさ。うちの近所の公園で夜中に出るらしいんだよ? 幽霊。で、なんでも屋のお前らに妖怪退治を頼みたくってさ」後退りしながら語られたざっくりとした依頼。


 その内容に刹那の表情が一瞬曇ったが、気付いたのは幼馴染の永遠だけだろう。そう、刹那はオカルトが苦手。どのくらい苦手かと言うと、幽霊と妖怪の区別すらついていないレベル。刹那にとってはオカルト全般一括り、兎に角苦手で何も考えたくないのだ。


「なんでも屋じゃないっ! 『スクールディティクティブ』刹那っアーンド永遠っ!」

 刹那の叫び声にざわついていた教室に一瞬だけ静寂が訪れたが、本当に一瞬だけですぐに「また刹那か……」といった溜息にも似た空気が流れた後、元通りの騒音が再生された。


 高校二年生にもなって未だ厨二病気質。

 永遠は刹那の幼稚さにウンザリはしているのだが、家も隣同士で二人共同じ病院で生まれ、誕生日だって二週間も離れていない。

 幼馴染というよりは腐れ縁と言った方がしっくりくる。

 それならいっそのこと刹那が起こす騒動を一緒に楽しむようにしようではないかと、前向きに考えて彼女と行動を共にしている。


「とりあえず詳しい話聞かせてよ」

 本日もいつも通り永遠が話を纏めて行った。

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