第8話 ガキ悪童
小学校に入学して何日か経った、ある日の帰り道。
「正也くん!この紙もらった?」
「ああ、バッチリだぜ、祐作。」
この日の帰りの会での配布物の一つに、「若春サッカー少年団に入ろう!」というペーパーがあった。サッカークラブに入るにはこれで申し込めるようだ。1周目のときは全く気にも留めなかったな。
かつては「サッカーをやる」ことが目的であったが、すっかりサッカーをやることが好きになってしまっており、少し興奮していた。
家に帰って、親に諸々の手続きをしてもらい、次の週末、いよいよサッカー少年団に入団した。
入団当日、そこには私と祐作を含め、8人の同級生がいた。ほとんどは「そういえばこいつサッカーやってたなー。」程度の感想しか出てこないが、一人だけは違った。
「祐作も少年団入るのか。」
「うん。浩くんもなんだね。」
こいつら二人は互いに1組同士だ。
「こいつは?」
「正也くん。僕の友達で、二人とも幼稚園の頃からサッカーやってたんだよ。」
「へぇー!俺もそうなんだよ!なかよくしようぜ、正也。」
「お、おう。」
なんだこいつ、めちゃめちゃ人当たりいいじゃねえか。だが、じきに不良になるのだ……。なるべく仲良くするのはやめておこう。
その日は初日ということもあり、ミニゴールを用いて、すごく簡単な練習をした。しかし、その時点で私、祐作、浩の三人は、他と比べて明らかに上手いのが分かった。他の子たちはボールを真っすぐに蹴ることができない中、三人はしっかりとコントロールをしていた。
「祐作!打て!」
そう言って出したパスは、浩にカットされた。
「いえ~い、ゲットー。」
「……くそ!」
思い出してみれば、なぜか不良連中の奴らは運動神経はよかった記憶がある。なぜなのだろうか。もしかすると、「不良が運動できる」のではなく、「運動できるやつが不良になる」のだろうか。
「くっ、えいっ!」
「あっ。」
なんとか追いついた私はボールを奪うことに成功し、ボールをクリアした。
「へへっ、取り返してやったぜ。」
「ははっ、正也と祐作は上手いんだな。」
「浩だって上手いじゃん。」
「俺はプロサッカー選手目指してるからな。」
プロ選手……。子供ならではの夢であるが、それを口にできるのはすごいことである。浩の将来を知っているからだろうか、その夢を実現してほしいと強く思った。
「きっとなれるよ、浩なら。」
「『ヒロ』でいいよ。俺らもう友達だろ?」
「ああ、わかったよ。ヒロ。」
「幼稚園ではそう呼ばれてたんだ。祐作にも、この少年団の全員にもそう呼ばせるつもりだぜ。」
1周目の時点では東郷浩と友達になるなんて思いもしなかった。俺と浩は、美術部の根暗とサッカー部の不良で、対照的な存在だったのだから。
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