小学校編
第7話 ガキ大将
2度目の小学校入学式。その式典は終わり、各クラスごとに教室に集まっていた。私は3組。祐作は1組だった。これも1周目と同じだ。
本来は初めまして同士ばかりなのだが、私からすれば懐かしい顔がたくさんである。その多くは成人式以来。中には小学校の卒業式以来のやつもいる。というか、この中で高校以降も付き合いのあったやつはいない。
「ねえねえ、君どこの保育園?」
「俺は若春幼稚園だよ。」
「名前は?」
「木下正也。君は?」
「僕は
こいつは小学校のうちはかなり仲の良かったやつだ。あだ名はヨッシー。だが、中学に上がると段々と疎遠になってしまっていた。
「義春君なら『ヨッシー』だね。」
もはやこいつを「義春」と呼ぶのは変な感じがしてしまうので、早めにあだ名を決めさせてもらう。
「僕は
1周目の時点ではこの名前を聞いても特に何も思わなかったが、「澤井」というのは少し治安の悪い地区だと、成長してから知った。なにも、そこに住む者たちが、みなならず者とまでは思わないが、ヨッシーの横に座るコイツみたいなやつはやはり多い気がする……。
「俺も澤井保育園なんだぜ。」
「うん……。
こいつは、いわゆる「ヤなやつ」だ。なんというか、ずる賢いというか、かつては結構嫌がらせを受けたものだ。
「お前澤井じゃないんなら仲間外れだな。」
いくら入学したての小学生といえど、すごい理屈だな。こいつは「小悪党」って感じで、めちゃめちゃに痛めつけたいわけではないが、ムカつくから反論する。
「今はヨッシーと話してるんだからお前が入ってくんじゃねーよ。」
「は?澤井じゃねーくせに。」
「澤井じゃないから仲間外れって馬鹿じゃねーの。お前もう黙ってろよ。」
「もういいわ、好きにしろよ。」
きっとこいつは、今みたいに屁理屈で勝手に上下関係をつくって威張ってるんだろうな。子供相手にはそれで通じるのだろうが、私がそれでお前より下だと思い込むはずはない。でも、小学生相手にムキになったのは大人げなかったかもしれないな。いや、今は子供だからいいのか?
ところで、ひとつ気になることがある。サッカークラブにはどうやって入るのだろうか?やつらは休日に学校の前を通ると、同じユニフォームを着てサッカーをしているが、いったいどうやって入団すればよいのだろうか。
「なあヨッシー、サッカークラブってどこで入ればいいか知ってる?」
「えぇ~、わからないなあ。正也くんはサッカーやるの?」
「うん。ヨッシーもやらない?」
ヨッシーは、小4くらいでバスケを始め、中学校でもバスケ部に入る。段々疎遠になっていく原因の一つはそれだ。だから今のうちにサッカーを始めさせておけば、ずっと仲良くいられるかもしれないと思った。
「うーん、僕はやらないかな。」
「そ、そっかー。まあ気が向いたらいつでも相談してよ。」
無理に誘うものでもないと思い、潔くあきらめた。一緒のクラブに入ることだけが仲を保つ方法ではない。
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