やはり、私はアリアちゃんではないのだ・・・
私はアリアちゃんの配信でかなり疲労感が残っており、布団に横たわっている。
疲労感ですぐに寝たいと気持ちは確かに強いが、それよりも自分が思った以上に歪んでいないことに安堵している。
気が弱くて理不尽なことを覆すことができない弱い自分から逃げるために、
ネット上だけでもわがままな皇女を演じたかった。
歪んだ理由のみでV活動をしていると思っていた。
しかし、あの時の水饅頭さんのコメントで私の中で人を楽しませたいと気持ちが湧きだしてきた。
アリアちゃんの魂は、歪んだコンプレックスと楽しませたいという深層心理が交ざって誕生してくれたと思われる。
自分の深層心理に触れているためか。知らない自分を見つめている気分になっている。
実際に、演じているというよりか自分に憑依されたような感覚に落ちていた。
いや、バーチャルな自分を眺めている気分に近い気がする。
それにしても・・・
皆を楽しませたい気持ちがあったことを気付かせてくれたアリアちゃんには感謝したい。
それと同時に妬ましい気持ちも若干だが、高貴的にかつ自信をもって発言するアリアちゃんに対して嫉妬心もある。
それでも、感謝の気持ちの方が強くある。
きっと、同時接続者数1000人超えられるだけのポテンシャルはあると思う。
アリアちゃんはわがままな皇女だから、視聴者数を稼いでいかないとね。
私のマネジメントを磨いていくしかないと決意を固めた。
その決意を固めている間に深い眠りに入っていた。
――――目覚まし時計が鳴り、朝になっていた。
今日も、疎ましいデイサービスの出勤日である。
昨晩のようにアリアちゃんのマネジメントをしていきたいと思うが。
それでは生きるための日銭を稼ぐことができずに共倒れになってしまう。
しょうがないと思う反面、YOUTUBEの収益化ができればいいと思ってしまう。
生きるためにデイサービスにしぶしぶ向かっている。
――――長い坂を下り、とある私立高校生たちの登校しているうるさい満員しているバスに押しつぶされながら乗っている。
やがて、少し大きめな洋風な家にたどり着いた。ここが私の疎ましくて憎たらしい職場である。
いつものように打刻機にタイムカード入れて更衣室に向かい、着替えようとしていた。
横からドスドスと大きな足音が聞こえている。
やはり、憎たらしい同期の茶髪で昔人をいじめていたと連想させるような目が鋭い山田が声かけられた。
正直、この油っぽい人間を見るとむかむかしてきて、気分が悪くなってきた。
「おはよう。田中。今日の体操変わってくれない?私さ、書類たまっているからさ。」
山田は、いつものように脅しかけてきた。
医療・福祉系の仕事は患者と付き切りになる場面が多くなり、書類業務のみ行う時間の確保は難しい。
書類業務の消化方法としては、
① 残業
② 利用者を遠位監視しつつ書類業務を2重に行うこと(認知症の利用者の場合は、勝手に動き回ることがあるため常に神経を研ぎ澄まさないといけないが、)、
③ 1人のスタッフが利用者全員とレクレーションをやっている隙に、書類業務を行うことである。
③が一番楽な方法で、残業時間を減らしたいためこの方法を取りたがる。
だから、山田は朝行う利用者全員との自分が行うべき体操という仕事を私に押し付けようとしている。
ふと、山田の様子を見ていると・・・
朝の時間がないため爪のネイルもあんまり塗れていない上に、目が充血していることから徹夜していることが想像される。
言葉の語尾がいつもより荒いことから、どうやら徹夜してソシャゲのガチャを外したと予想している。
こういう山田は、オークのように荒れ狂っているのだ。
そういう人間観察を行っていき、危機回避を行ってきた。
だから人間観察や分析などは人より得意と言われ続けており、尊敬されることが多い。
機嫌取りの気の弱い人間が生きる方法としての生存法であり、人に誇れるものではないのだ。
こんな気が荒いオークに対して、私は言い返すことができない。
気が弱い私は言い返すことができずに理不尽だとわかりつつ、受け止めてしまった。
「いいよ。」
気が弱い私はボソッと答えてしまった。
いつものことだが、少し泣きそうになっていた。
「ありがとう」
全く感謝の気持ちが籠っていない感謝をされてしまった。
山田は、ドスドスと音を立てて、更衣室を出ていった。
この弱弱しい姿をアリアちゃんに見られてしまった気がした。
《font:149》「あんなオークみたいな女に負けるんじゃないわよ。《/font》
《font:149》それでも私の創造主なの。情けなくて涙すら出ないわ。《/font》
《font:149》もっと堂々としなさいよ。」《/font》
アリアは気が弱い私に説教してくれた気がする。
アリアちゃんは私なら変われるとどこかで思ってくれているが、私の長年付いた弱腰は取れないよとがっかりしながら答えた。
――――時間は流れて、疎ましくて憎たらしい労働は終わった。
山田とのやり取りで自分は強くないと自覚してしまい、弱い自分から逃げるために
だんぼっちの中に入り、配信の準備を行った。
やはり、私はアリアちゃんではないのだ・・・
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