2話


 対怪獣特別迎撃施設東京本部〈New Tokyo System〉(略して、NTS)。

 操縦士専用棟、最上階。

 メイン操縦士用特別室兼自宅。


「死ね! 野良ネコがッ! ウラッ! 死ね!」


 神宮寺マサト(17)。現役高校生。対怪獣専用ロボメイン操縦士。モンハン狂。

 ただいま、絶賛不登校中。


「クラッチからの……壁ド~ン」


 巨大モニターの中で、ネルギガンテが悶えている。そこをすかさず、スラアクでぶった切る。薄暗い部屋で、モニターの明かりに照らされたマサトはまるで無表情。

 ハンターランク上限いっぱいの彼にとっては、モンスターを狩ることはもはや作業。いかに残虐に狩るかだけが、彼の唯一の楽しみなのだ。

 ネルギガンテが咆哮したところで、ポテチに手を伸ばす。

 伸ばす……。


「あれ?」


 ノールックで伸ばした手で、ポテチの袋をまさぐる。しかし、空。そんなはずはない。さっき新しいものを開けたばかりなのだ。

 マサトはヘッドフォンを外し、散らかった部屋を見渡した。


 ガサッ――。


 小さな――マサトの膝たけほどの小さな物体が、部屋から逃げようとしていた。


「おい」

 

 マサトの声に気づき、その物体はギクッと立ち止まった。


「ポテチ返せ。殺すぞ」


 物体はおそるおそる振り返る。丸っこいフォルムのそれは、ウナギに似た顔をして、口いっぱいにポテチを含んでいた。


 両生怪獣プーチャカだ。

 体長10m(今はミニチュア化)。水陸両用。体色は水色。口に含んだ水をビームのように発射させることができる。

 前述のフォルムから、若者に大人気、NTS公式インスタ(フォロワー数500万)における「いいね」の稼ぎ頭だ。


「野郎! あ……」


 マサトが立ち上がると、モニターではハンターがいつのまにか力尽きていた。マサトが目を離したすきに必殺技を食らってしまったようだ。


 マサトは激怒した。


 殺気を感じ、逃げるプーチャカ。


 しかし、天性の反射神経でプーチャカを捕まえたマサト。


「てめえのせいで……」


「プアッ! プアッ!(プーチャカの鳴き声)」


 大きく振りかぶり、


「報酬減っちまたじゃねーかッ!」


 壁に投げつける。


 プーチャカは「ブバッ!」と断末魔をあげて、壁にめり込んだ。


「ゴミ怪獣が。絶滅しろ」


 ブーッ。っと、ブザーが鳴る。


 来訪者だ。


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