怪獣でいず

高井カエル

ぼのぼの怪獣でいず

国民的嫌われ者

1話

〈怪獣愛護法〉――。


 太平洋上に突如として現れた巨大怪獣が、日本国土を脅かす――。

 そんなものはもう、過去の話。

 今や、怪獣も他の動物と同じ、保護されるべき存在。そもそも、最近の怪獣には戦意すらないのだから、そうなるのも仕方ない。

怪獣たちは、現代における役割を自覚しているかの如く、その愛おしさを前面にアピールし、若者たちから絶大な人気を博している。

 巨大怪獣を駆逐する、国民的正義のヒーロー。巨大ロボットを操縦し、怪獣を倒す国民的スター――。

 もはや、そんな存在は必要ない。誰からも必要とされていない。危険度0の怪獣をやたらめったらボコボコにするような奴は、外道なのだ。

 そして、ここに若者が一人。国民的嫌われ者、本人である。

ロボットを操縦する唯一の素質の持ち主でありながら、怪獣に特殊な薬を注射してミニチュア化するだけ――。という、誰でもできるような仕事をやらされ、

腐り、

ひねくれ、

荒れ狂い、

日々のストレスをまた怪獣で発散しては嫌われ、

今も英雄として称えられる亡き父と比べられ、

週刊誌のネタにされ、

ワイドショーで笑われ、

Twitterで叩かれ、

アンチとは、自らの才能を盾に無駄な戦いを繰り広げ、

好きなアイドルからはブロックされ、

 あらゆる設備が整った施設でぬくぬくと育ち、

 その施設すら「税金の無駄だ」と罵られた挙句、この日本に爆誕した、現代という闇が生み落とした怪獣。

 そう。彼こそが、神宮寺マサト、17歳。対怪獣専用ロボのメイン操縦士であり、もう一度言おう、国民的嫌われ者だ。

 そして、彼は、今日もハンティングライフに興じている。

 怪獣の話じゃない。モンハンの話だ。

 野良で参加し、他のハンターたちを妨害するという外道の極み。しかし、そんなときこそ、彼が最も生き生きとする瞬間なのだ。

 これは、そんな彼と、ミニチュア化した怪獣とのほのぼのデイズ。

 とりあえず、今日も日本は平和だ。


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