1章1節 破壊者

 握手をした後、俺は、自分の部屋から出た。とりあえず、これからリンの世話をどうすればいいか考えた。二階の自分の部屋から、一階の居間に降りて、今親がいるのかを確認した。居間をのぞいてみると、そこには親はいなく、机に何か書かれている紙が置いてあった。机まで行って、その紙に書いてあることを声に出して読んでみた。

 「一花へ、お母さんとお父さんは当分家に帰ることができないので、自分で洗濯や掃除、ご飯などを作ってください」


 読み終えて紙をもとの場所に置いた後、もう一度自分の部屋に戻った、ドアを開けた途端、急にリンが飛び出してきて、俺は尻もちをついた。なんだなんだと思って自分の目の前にいるリンの様子を見ると、目がとてもキラキラ輝いていた。

「いったいどうしたんだ。いきなり来るなんて危ないぞ」


「イチカ、この世界って、魔法を使わないの!?」

 

 何を言っているんだこいつはと思いながら、俺はその場に起き上った。

「この世界に魔法を使うという考えはないぞ。光だってこれを押せば大丈夫だし」

 そういいながら壁にあるスイッチを押して、電気をつけて見せた。

「うわぁ!?」

 リンは電気がまぶしいと感じたのか、目をつぶってしまった。俺が少し電気のパワーを下げると、リンは目をしっかり開けて、「すごいね!」などと言って部屋を見ていた。

「この世界は、本当に私たちの住んでいた世界とはとても違うわね。こんな環境であいつはどうやって生きていたんだろう?」

 確かに、魔法を使って生活している奴が、こんな環境で生きていけるとは考えにくい。


「もしかしたら、この世界にもともと住んでいた誰かが、そいつに協力していたのかもしれないなぁ」

 そんなことをつぶやくと、リンも頷きながら言った。

「イチカの言う通り、この世界の協力者がどこかに潜んでいるかもしれないね。それも魔法について詳しい人物が」 

 リンのその言葉を聞くと更に疑問が出てくる。その協力者はなぜ、リンのような世界にしたやつに協力しようと思ったのか、なぜそいつと出会ったのか、そして、そいつは俺の周りの人物なのか、それとも日本人ではないか。いろいろな疑問が出てくるたびに、頭が痛くなったので、ひとまずその話題については後回しにして、とりあえず朝食を作ることにした。


「今からご飯にするから、そのことについては後で話そう」

「うん、わかった。」

 そんな会話をすると、俺はキッチンに向かった。まず最初に冷蔵庫の中身をチェックすると、そこから野菜を出して、サラダを作って、そこに冷凍食品のシーチキンを付け加えた。机を拭いてサラダを置くと、俺はリンのいる部屋に向かった。ドアを開けて、部屋を見回しているリンに、「ご飯できたぞー」と言って、下に降りた。リ

ンは俺の部屋から出て、階段を降りた後、俺のいる今まで来た。


 「おぉ、これはうまそうだね。もういただいていいかな?」

 と聞いてきたので、

「好きに召し上がって」

 と言って、二人で一緒にご飯を食べた。

 今日は土曜日なので、学校がないということにありがたみを感じながら、ご飯をゆっくり食べ、食器の片付けをした後、今の椅子に座って、リンに今の家の状況についてと、これからどう過ごしていくかについて話をした。

 

 リンによると、リンの世界を砂漠化した者に見つからないようにするために、今から俺の家以外の場所では、魔法を使って透明化になって生活するらしい。2個しかない魔法をそんな使い方して大丈夫かと聞くと、

 「透明化は魔法を使える回数は減るけど、効果は途中でやめてもいつでも使えるから大丈夫よ」と言った。

 

 「イチカのお父さんとお母さんがそんなに帰ってこないなら、ここに長く滞在することは可能ね。後は、結界を張ったほうがいいわね」

「結界って、そんなもの張ったら、位置がばれるんじゃないか。それに魔法の回数が…」

「大丈夫。結界を張っただけで位置はばれないよ。後、これは、君の中にある微弱な魔力でも強く張ることができるから」

 そんなことを言いながら、俺は、リンの世界を砂漠化した者をとりあえず、呼び名を付けておこうと思った。

 「俺たちが倒そうとしている奴の名前、一応わかりやすいよう呼び名を付けておきたいんだけど」

 「そうね。じゃぁ、とりあえず破壊者と言うようにしましょう」

そう、リンが提案してくれた呼び名を聞いて頷いた後、破壊者を倒すための計画を立てていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る